分析事例:販売/在庫

【 分析サンプル付 】「販売」と「在庫」の現場では、BIツールはこう使われている!ストーリーで理解するデータ分析手法<後編>

「最近よく聞くBIツールは便利そうだけど、何にどう使えばいいのかわからない」という声をよく聞きます。確かにBIツールは高機能で様々なデータ分析に活用できるだけに、具体的にイメージしにくいかもしれません。そこで、業務での利用シーンに応じた具体的な分析事例を前編・後編に分け、分析サンプル付きのケーススタディとして紹介します。「データ分析事例:前編」では「生産」「仕入」に関する分析事例を取り上げました。後編では「販売」「在庫」に関する分析事例を紹介します。業務現場で実践されている分析手法をストーリーに沿って解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1. <販売データ分析事例>
あるメーカーの販売部門のケーススタディ

■課題■ 3ヶ月連続で予算未達の原因を探る

【予実分析】

中堅メーカーの販売部門へ配属されたばかりのA課長。会社からは販売部門の業績立て直しの期待をかけられています。A課長はさっそく、直近3ヶ月間続いている売上予算未達の原因を探るため、今年から導入したばかりのBIツールを活用し、原因を探ることにしました。まず、基本中の基本、「予実分析」からスタートです。

▼BIツールのトップ画面である「ダッシュボード」。様々なデータがリアルタイムで更新表示されます。表示内容はカスタマイズ可能です。



●予実分析とは?

予算(目標)と実績を比較して、その理由を深掘りし、今後の戦略を構築する「予実分析」。BIツールを使えば、予算(目標)、実績、予実差、達成率といった一般的な数字はもちろんですが、過去からの推移や部門別データも簡単な操作で出力でき、定型レポート化も容易です。気になる数字があれば、部門別、担当者別、顧客別などに、ドリルダウン、ダイシング、スライシングといった分析ができるので、多方面から予実差の理由を探ることが可能です。

■エリアごとの予算達成状況を確認し、焦点を絞る

先月も販売部門の売上実績は達成率91.9%と売上予算は未達でした。前年実績は上回っているものの、会社からの期待も高いため、3ヶ月連続で未達成というのは大きな問題です。

そこで、売上未達の原因を探るため、まずはエリア別の目標達成状況を比較しました。すると、東京本部は売上目標を達成していますが、残りの4支部はすべて未達となっています。

その中でも、名古屋支部は売上目標額が全支部中で最も高く、売上実績は支店のなかで最も大きいものの、目標に対する予実比が83%と乖離が大きくなっています。A課長は予算達成へのインパクトが最も大きい名古屋支部のてこ入りから着手することにしました。

A課長は名古屋支部の未達の原因がどこにあるか探るため、予算達成率が最も高い東京本部と名古屋支部を比較してみることにしました。こうした分析には、販売先の業種ごとの差異を確認できる「ABC分析」が最適です。

【ABC(業種別)分析】

●ABC分析とは?

重点分析」とも呼ばれ、顧客管理や販売管理で一般的に使われる手法です。商品を売上高利益率などでABCの3段階に重み付けし、売れ筋死に筋を把握するときなどに使われます。ABC(業種別)分析を行って、重要度の高い業種に営業人員を割り当てたり、重点的に販促費用を配分したりといった施策に活用できます。

■業種ごとの売上をABC分析してみると…

A課長は名古屋支部は製造業への販売実績の偏りが大きく、両支部の違いは、営業対象業種の差によって説明できると考えていました。しかし、予算達成率トップの東京と最下位の名古屋は、業種別でみた売上構成比ではそこまで大きな差はみつけられません。

▼東京



▼名古屋



名古屋支店のボトルネックはどこにあるのだろうか・・。A課長はすぐに次の分析に移りました。BIツールなら様々な分析手法がほぼワンタッチで進めていけます。A課長が次の分析手法に選んだのは「ポートフォリオ分析」です。東京本部と名古屋支部の販売商品を細分化し、両者の違いを分析することにしました。

【ポートフォリオ分析】

●ポートフォリオ分析とは?

重要な2つの指標を軸に、2次元グラフを作成することにより、グラフ内のエリアによって製品・サービスを分類する分析手法です。顧客満足度調査の結果から重点的改善項目を抽出する分析によく用いられます。市場成長率を縦軸、市場占有率を横軸に、エリアを上下左右に4分割し、自社商品を花形、金のなる木、負け犬、問題児の4グループに分類する経営分析手法も広く使われています。

▼ボストン・コンサルティング・グループが提唱した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」

■ポートフォリオ分析で商品構成比を分析

A課長は前年比の伸びを縦軸に、商品構成比を横軸に、東京と名古屋がそれぞれどんな分野の商品を販売しているのか、2次元グラフで表示してみました。

そこで分かったのは、東京本部のメイン販売商品が「安全機器」「タッチパネル」「3Dプリンター」の3商材で構成されているのに対して、名古屋支部は「安全機器」「タッチパネル」の2商材のみになっているということです。

これは大きなヒントになりそうです。A課長はさっそく商材ごとの予実分析画面を確認してみると、名古屋支部の3Dプリンターの予実比が54%と目標と大きく下回っていることが判明。対して東京本部は予実比が137%と、目標を大きく上回っています

▼3Dプリンターの地域別予実比

なぜ、ここまで3Dプリンターの販売実績に開きが出ているのか?
それは、東京と名古屋、両支部における商品販売データを「バスケット分析」してみたところ、その答えはすぐに分かりました。

【バスケット分析】

●バスケット分析とは?

データマイニングによる分析手法の一つ。販売記録から、ある商品と組み合わせて購入(クロスセル)されることの多い商品を分析するもの。小売店であれば、分析をもとにそれらの商品を並べて陳列したり、営業であればサポートサービスとのセット販売比率などを求めるためにも利用される。

▼東京、名古屋支部の3Dプリンターのクロスセル実績

東京支部では「タッチパネル・安全機器」を購入した顧客対してクロスセルで3Dプリンターも販売できている一方、名古屋支店はほとんどクロスセルでの販売が出来ていません。

早速、A課長は東京と名古屋の営業マネージャーにヒアリングしてみると、東京は3Dプリンターのクロスセルに向けたトークスクリプトを支部内で共有して以来、クロスセルによる販売が好調だということがわかりました。一方、名古屋では1人の営業担当者がクロスセルに特化した営業を行っているだけで、支部全体での営業トーク内容、スクリプトが標準化されていないことが分かりました。

A課長はすぐに東京本部から3Dプリンターのトークスクリプトを取り寄せ、名古屋支部をはじめ、各支部にも展開しました。すると、3Dプリンターの需要掘り起こしに成功して売上を伸ばし、結果として名古屋支部は売上目標を達成し、全社での売上目標も達成することができました。

2. <在庫データ分析事例>
ある商社の営業部門でのケーススタディ

■課題■ 会社の利益に直結する商品を

【ABC(在庫金額)分析】

ある商社の営業部に勤めるB課長には最近悩みの種がありました。事業部長から「もっと会社の利益に直結する商品販売に注力しろ!」というオーダーを受けたのです。

B課長はいつも粗利率が高い商品を注力して販売するよう意識しているつもりです。しかしその旨を伝えると、事業部長は「まぁ、考えてみてよ」と笑顔で去っていきました。

「会社の利益に直結する」とはどういう意味でしょうか?

B課長は同期で商品戦略部のマネージャーであるC課長に相談してみました。C課長は主に会社の販売する商品の仕入、在庫の管理を担当しています。BIツールを活用して在庫管理をシステム化したことで社内から高い評価を受けています。

▼BIツールの「在庫分析」用ダッシュボード。経営陣用、生産管理用など、様々な用途に最適化できます。

「会社の利益に直結する商品って何だろう?」と率直に聞いてみると、C課長は「事業部長が気にしている数字は僕らとは違うからね。B課長が言う商品の粗利益も重要だけど、会社経営という視点で見ると、販売前の在庫回転率も意識しておいた方がいいと思うよ」と言います。

「在庫回転率・・・?」

詳しい説明を頼むと、C課長はBIツールを利用した在庫分析を説明してくれました。

「まず在庫管理の定石とも言える『ABC分析』で分析してみようよ」

●ABC(在庫金額)分析とは?

ABC分析は「重点分析」とも呼ばれ、多数あるものを特定の指標を使って重要なものから順に並べ、割合などの基準でABCの3つのグループに分類し、それぞれのグループ単位で重み付けした管理を行う手法です。在庫管理の他にも、発注管理、生産計画、販売戦略など、業務のあらゆる面で活用されています。

■経営者目線で指標をみてみると・・・

C課長がBIツールの画面を見せてくれました。まず、全商品の当月末の在庫金額を確認してみると、全100商品のなかで上位18商品が在庫金額全体の30%を占めていることがわかります。

在庫金額で上位に位置する商品の多くは「一つあたりの単価が高い」もしくは「単価は低いが売れると見込んで大量に在庫を抱えている」商品だとC課長は言います。

仮にこれらの商品の販売が伸び悩んだ場合、値引きをして粗利率を引き下げて販売したり、それでも販売しきれない場合には在庫を負債として費用計上したりといった必要があります。「リスク管理意識が特に高いウチの経営層は、この指標を特に意識しているみたいだね」とC課長。

B課長は思い当たる節がありました。営業はどうしても目の間の顧客のことで頭が一杯になりがちなので、商品を起点に最適な顧客を探す動きは後回しになります。事業部長は「どの商品を売るかで会社の経営状況は変わってくるんだぞ」と言いたかったのではないだろうか。会社の舵取りを担う経営層は売上の数字だけでなく、費用として計上される数字や商品も常に意識しているため、営業部門のスタッフにも在庫状況をウォッチしていってほしいという思いを持っているのだろう」とB課長。

それに対して、C課長は「まぁ営業は突進するような部分がないとうまくいかないだろうけどな」と言います。「だから、営業部門とウチのような在庫管理を担当する部門が目標を共有する必要があるんだよ」と。

C課長は目標を共有する重要性について「在庫回転率/交差比率分析」での結果をもとに説明してくれました。

【在庫回転率/交差比率分析】

●在庫回転率分析とは?

在庫回転率とは、期・月など一定期間中に在庫が何回転したかを示す数字です。特に多店舗展開している小売業界では、在庫回転日数(何日で全在庫が売り切れるかという数字)とともに重要指標として多用されています。

在庫回転率 = 売上金額 ÷ 在庫金額

「率」とありますが、通常は%ではなく、○回というように、100%を1回転として表記します。

在庫回転率が高いほど出荷(売上)に対する在庫量が少なく、効率的に在庫が運用されていることを示します。たとえば期中の在庫回転率が6回ということは、在庫が1年間で6回入れ替わったということです。つまり、2カ月で売り上げになっている(在庫回転日数が約60日)ということになります。

在庫回転率が高いほど在庫の滞留期間が少なく効率的と言え、逆に在庫が何ヶ月も滞留していれば、その在庫にかかった費用は、売上に変わらず寝ていたことになります。

ただ、在庫回転率を上げるということは、欠品による販売機会を逃すことにつながりやすいので、嫌う企業もあります。たとえばファッション業界では、しまむらの期中在庫回転率は約12回、ユニクロは約6回と倍の開きがあります。



●交差比率分析とは?

交差比率とは、在庫している商品が儲かっているのかどうかを見る指標です。一般的に粗利益率が高い商品は数が売れないことが多いため、粗利率だけでは本当に儲かっているかどうかを判断するには不十分です。そこで、在庫回転率と掛け合わせた指標である交差比率を見ることで、効率的に儲けを生み出しているかを見ていきます。

交差比率 在庫回転率 × 粗利益率
売上金額 粗利益額 粗利益額
------- × ------- -------
在庫金額 売上金額 在庫金額

この計算式を見てもわかるように、交差比率が高いということは、利益が多く在庫が少ないという効率的な状態と言えます。

BIツールでは、下のような2次元グラフで表せます。右上に近いほど交差比率が高くなります。

■交差比率で本当に注力すべき商材は何かを分析

C課長は、先ほどABC(在庫金額)分析で調べた当月末での在庫金額の上位20商品をピックアップして、在庫回転率と粗利率の交差比率分析を行い、ポートフォリオの形で見せてくれました。

この図をみると、左上の商品番号「0323」は他の商品と比べて粗利率は高いものの、在庫回転率は一番低くなっています。あまり売りやすい商品ではないため、B課長はあまり注目していませんでした。

しかしC課長は、「0323より粗利率が高い商品は他にもあるだろうけど、当月末での在庫金額や売上実績を考えれば、同商品の回転率を高めると会社にとっては助かるだろうね」と言います。

▼ボストン・コンサルティング・グループが提唱した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」

営業部門にいると、日々の売上を上げることばかりに目がいってしまうが、会社には費用管理を行う管理部門もあって、経営者や経営層はこれら2つの数字を意識して会社の舵取りをしているんだなあ。とB課長は理解しました。

「じゃあ、事業部長から言われた『会社の利益に直結する商品』の答えは、『0323』ということだね」と得意げにB課長が言うと、C課長はすぐに否定します。確かに今はそうかもしれないけど、時間とともに変化するからね。事業部長は『在庫金額や在庫を管理するための費用も意識して注力すべき商品を選べ』と言いたかったじゃないかな。

なるほど、そういうことか。「会社の利益に直結する商品」とはそういった意味だったのか。今後はこうしたデータも事前に確認した上で営業計画を立てていけばよいのか、とB課長は納得しました。

「なぁ、俺のパソコンのBIツールの画面にも、そのグラフを設定しておいてよ」とC課長に頼むことも忘れませんでした。

3.現場部門での経営者視点での課題発見が可能に

いかがでしたでしょうか? 今回は、営業部門での活用が想定される「販売」「在庫」分析の進め方をご紹介してきました。

特に在庫データの分析については、現場部門でも経営者視点で販売に注力すべき商材把握に役立つのではないでしょうか。BIツールを利用すれば、日々の蓄積データが自動でグラフや表に反映されるため、だれでもすぐに課題となる箇所をわかりやすく可視化することできます。「データ分析事例:前編」の「生産」「仕入」分析事例と合わせて、参考にしてみてください。


このほかにもBIツールの成功例や事例を無料で提供していますので、そちらもぜひ参考にしてください。記事に共感いただけましたら、Facebookページへの「いいね」もよろしくお願いします。

WRITER : ナツミ
今年から新たに担当することになった超文系ライター。「誰でも簡単に」分析が出来る「Actionista !」と大型バイクをこよなく愛する。 ビジネス・インテリジェンスについては現在猛勉強中。最近は「ドリルダウン」にハマっていて、やたらと会議で使いたがる。

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