【 分析画面イメージ付 】
金融サービス・外食・フィットネス業界のBIツール活用方法とは

05 February.2019 / BI

金融サービス・外食・フィットネス業界のBIツール活用方法とは

BI導入前に知っておきたい「分析手法の種類」

ビッグデータを活用した「データドリブン」な経営判断、顧客の購買行動を分析した「データベースマーケティング」など、データをエビデンス(根拠)とした意志決定が当たり前になってきました。

膨大なデータを効率良く扱うことが可能で、視認性の高いグラフが表示できる「BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール」を採用し、データ分析に活用する企業も増えています。

ただ、データ分析と一言で言っても、具体的に必要なデータやデータを分析する手法は様々です。予実分析、ABC分析、構成比分析など、多くの業界で共通してよく使われる分析手法以外にも、業界や職種によって重視すべきデータは異なっています。

前回の記事では「流通・小売、通信・ソフトウェア、総合商社」の3つの業界でよく用いられている分析手法をご紹介しました。

今回は「金融」「外食」「フィットネス」の3業界での分析手法を取り上げます。これらの業界ではBIツールをどう活用しているのでしょうか? 前回同様に実際の画面イメージ付で解説をしていますので、ぜひ参考にしてみてください。

金融サービス業界でのデータ分析手法

最初にご紹介するのは、銀行や証券会社などの金融サービス業界での分析手法です。法律改正後、従来まで仕切られていた預金、融資、株式、投資信託、生命保険、損害保険といった金融商品間の垣根無くなり、幅広い金融商品を取り扱う企業が増えています。まず、ほぼすべての企業が行う予実分析をご紹介します。

予実分析

予実分析とは?

予算(目標)と実績を比較して、その理由を深掘りし、今後の戦略を構築する「予実分析」。BIツールを使えば、予算(目標)、実績、予実差、達成率といった一般的な数字はもちろん、過去からの推移や部門別データも簡単な操作で出力でき、定型レポートも容易に作成が可能です。

実際にBIツールを使って「予実分析」を行っている銀行での活用事例を見てみましょう。今回は法人への融資を行っている法人営業部門を例にご紹介します。

低金利による金余りを指摘される銀行ですが、不動産価格による担保価値の不安定化、ジャスダックなど新興証券市場の一般化による上場ハードルの低下、クラウドファンディング等資金獲得ルートの多様化など、営業部門にとっては厳しい環境が続いています。

下のグラフでは直近6ヶ月での部門全体の予実を確認することができます。

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売上の予実とありますが、この「売上」は特に金融のようなフィー(手数料、利息)ビジネスの場合、融資額で見るのか、利息額で見るのかといった部分に企業の戦略が現れます。この部門の場合は主に融資総額で予実分析していますが、新規融資額を重視する会社も多く存在します。

そして、部門全体の予実を見て大枠での傾向を把握したあとは、支店別の予実比を確認していきます。

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全体の傾向から外れている支店については、担当者別、顧客別など、さらに項目をドリルダウンして分析を深めていきます。そして全体傾向より成績の良い支店の理由がわかれば、それを他の支店に適用できないかといった考察を進めていきます。

金融商品のメニューが増えてきた金融業界では、「ポートフォリオ分析」も重視されています。

ポートフォリオ分析

ポートフォリオ分析とは?

重要な2つの指標を軸に2次元グラフ(散布図)を作成し、グラフ内のエリアによって製品・サービスを分類する分析手法です。顧客満足度調査の結果から重点的改善項目を抽出する分析によく用いられます。競合も含めたブランドイメージを分析する際などにも行われることが多い分析手法です。

今度は銀行の個人営業部門でのBI活用事例を見ていきましょう。様々な金融商品の、契約件数と前年同月比の2軸でグラフ化しています。

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販売を推進している金融商品が全体と比較してしっかり契約数が伸びているかといった点を分析していきます。一目で状況がわかるため、企画書や会議の説明用にも役立ちます。

ポートフォリオ分析は、店舗やWebサイトに様々な商品を並べて販売する「小売業界」でもっともよく使われる分析手法です。実は銀行も小売業界にビジネスのしくみが似ています。お金を日銀から仕入れて(しかも今ならほぼ無料)、住宅ローン、教育ローンといった商品として販売します。債権も投資信託も保険も仕組みは同じです。

そのため、ポートフォリオ分析は相性が良い分析手法と言えます。

たとえば「定期、住宅ローンの商品が伸びている」や、「保険関連の商品が手堅い」といったジャンルごとの状況分析も行えます。これにより、ローン商品の対象を広げることはできないか、保険商品に付加価値を付けた商品を開発できないか、といった次の展開を考えられます。

次に紹介するのは、外食産業です。味やサービスといった感性的な側面と、店舗というスペースをどれだけ有効活用できるかというビジネス的な側面を両立させた企業が他社に勝るといった業界です。

外食業界でのデータ分析手法

外食業界では、大量仕入れ、多店舗展開をする企業が多いため、BIツールを活用する場合には、エリア、季節、曜日など外的要因による売上の影響を分析することが多いです。

一方で、内的要因である顧客単価スペースをどれだけ効率的に活用できたかという回転率のデータを分析し、売上拡大に繋がる施策を検討している企業も増えてきています。それでは早速見ていきましょう。

回転率分析

●回転率分析とは?

営業中、座席やテーブルひとつあたり何回の顧客に商品を提供したかを分析するのが「回転率分析」です。回転数は外食業界の場合、座席という限られた資産を1日何人に提供したかで表します。たとえば「1日3回転」のように使います。

曜日別、時間帯別などに回転率を比較分析することで、回転数を上げる施策を考えます。

月では、ある飲食店チェーンでの回転率分析事例をご紹介しましょう。この企業では、首都圏を中心に20店舗を保有しており、店舗ごとの予実と回転数の数値を重視して分析しています。

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基本的にビジネスでは、売上=顧客単価×購買回数という計算式で表すことができます。

外食産業の場合は、他の業界に比べて、回転率が重視されるため、
売上=顧客単価×座席数×回転数
という式もよく使われます。

店舗ごとに設置できる座席数には限界があるため、売上を伸ばすためには、料理やドリンクなどの単価を引き上げるか、座席ごとの回転数を上げて購買価数を増やすしかありません。そのため、外食業界では回転率分析が重視されるのです。

回転数だけでは店舗の大きさや規模によって単純に比較することができないため、回転数を総座席数で割った回転率を比較することで、各店舗が効率的に顧客を回転させることができているかチェックする必要があるでしょう。

こうした背景もあって、外食産業は回転率を巡って極端な戦略を取るチャレンジャー企業が時折現れます。当初の「俺の」シリーズ店舗や「いきなりステーキ」のように、椅子を置かずに席数を増やし、立ち食いによって回転数を上げるという戦略をとっています。一方、1日1組限定という回転数を極限まで落としたスタイルの店舗も一定の人気があります。

回転率と満足度は負の相関が生じやすいものです。回転率が上がれば顧客は落ち着かず、満足度は下がりやすいということです。その部分を「俺の」では料理人のレベルを上げながら値段を下げることでカバーしています。そういった戦略の下地には緻密な回転数分析があるはずです。

最後に、フィットネス業界の事例をご紹介します。ライザップの大ブレイクもあって注目が集まる業界では、どんな分析が行われているのでしょうか?

フィットネス業界でのデータ分析手法

シニア向けのカーブスが人気を集めたり、最近ではファミリーマートがコンビニ併設型の24時間ジムを2018年2月14日にオープンさせる(※1)など、異業種からの新規参入も増えているフィットネス業界。業態は違えど、ビジネスモデルは月額制の会費モデルが主流です。そこで重要になるのが退会率や利用率などのデータをもとにした顧客LTV(※2)の最大化です。

※1 FamilyMart|Fit&GO
※2 LTV=Life Time Value=顧客生涯価値=1人(1社)の顧客が生涯を通じて自社にもたらす利益のこと。 顧客LTV=平均購入単価×購入頻度×購入期間

退会率分析

退会率分析とは?

顧客のうち解約者の割合をデータ化して解析する分析手法が「退会率分析」です。解約は卒業シーズンなどある程度時期に左右されるので、時期別に見るのが一般的です。

では、あるフィットネスクラブでのBIツールを使った退会率分析の実例をお見せします。この企業では、店舗別での退会率を四半期(クオーター)ごとに経年でチェックしています。

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当然ですが、退会率が低いフィットネスクラブには毎月継続的に一定額の安定した収入が入ってきます。反対に退会率が高い店舗は、本来得られるはずであった継続収入が徐々に減っていきます。

月額制のビジネスモデルを展開する企業の多くが、新規顧客獲得の費用平均顧客LTVと同水準程度までかけるケースも多く、平均継続年数にも満たないうちに解約されてしまっては新規獲得の費用回収もままならないため、退会率を下げるための施策に力を入れているのです。

一般的に、継続率を高めるのは「新商品」「人との繋がり」とされています。フィットネス業界では、新しいトレーニングマシン、新しいフィットネスメニュー、休憩室等のリニューアルといった「新商品」を定期的に登場させるのは継続率を高めるためです。

また、ライザップがこれだけブレイクした理由のひとつには、パーソナルトレーナーがトレーニング中だけでなく、スマホで届いた食事の写真にアドバイスをくれるなど「繋がり」のポイントと時間を増やしたことだとされています。

一方で、顧客一人ひとりの利用状況を分析する利用率分析も多くのクラブで行われている分析手法のひとつです。

利用率分析

利用率分析とは?

それぞれの顧客がどれぐらいの頻度で、何回利用したかという割合を計測し、解析していく分析手法です。月額定額制の場合、多く利用したから収入が増えるというわけではありませんが、顧客の分類を行うためには重要な分析手法です。

同じくBIツールを使ったフィットネスクラブの利用率分析事例を見ていきましょう。下表では会員別の利用回数、当月来店回数、最終来館からの経過日数をチェックしています。

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会員がフィットネスクラブを解約する場合には、それ以前と比較して月間での来館回数が減少したり、来館間隔が極端に長くなったりという事前の予兆があります。そのため、上記のように顧客別の利用率を細かく分析することで、事前にその予兆を把握することができ、それに対してアクションを行うことができます。

BIツールの場合、最終来館日経過日数が○日以上の顧客が発生したらアラートメールを送付するといった機能を持つものもあります。それによって来館を促すDMメールを送るなどの対応ができます。

以前は「フィットネスクラブは施設に来館せずに会費だけ払い続けてくれる休眠会員を歓迎している」といったような話をよく聞きましたが、現在では「頻繁に施設を使ってもらい、ブランドロイヤリティを獲得し、関連商品の購入や関連サービスの利用を促進する」というクロスセルの考え方が主流になってきています。

実際にライザップはオリジナルのサプリを充実させており、ファミリーマートは間違いなくフィットネス終了後の顧客向けに新メニューや専用ドリンクを開発するでしょう。

そうなると、利用率を高めることが企業側にとっても重要になり、顧客も企業側も双方にとってWin-Winの関係が築けるはずです。

まとめ:業界によって重視すべきデータはそれぞれ

いかがでしたでしょうか? 今回は「金融サービス」「外食」「フィットネス」の3業界のデータ分析手法をお伝えしました。

上記からもわかるように、業界やサービスによって集まるべきデータ、分析すべきポイントは異なってきます。

BIツールを活用しデータ分析を行う前に、どういった分析方法を活用し、どんなデータを集めておく必要があるのかを検討しておきましょう。

BIツール利用ガイド_全社展開事例に学ぶBIツール活用法

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全社展開事例に学ぶBIツール活用法

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BIツールは導入しただけでは意味がありません。導入したBIツールが効果的に活用されるための方法を実際の導入事例と共にご紹介します。

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