メディアとのつきあい方講座

「情報モラル」についての特別座談会

特別座談会 「教育現場の情報モラル」
〜急激な情報化のなかで 子どもたちに求められる能力とは?〜

情報の背景を分析する ロジカルな思考能力を

●赤堀

これまでの議論で、ネットワーク環境のなかでは、相手の存在を意識できる想像力と、コミュニケーション手段を選べる能力が重要だということがわかりました。また、インターネットの世界は素晴らしい情報もあれば、悪いものもある。それらを判断し、強力な道具として使いこなせる能力も必要だと思います。

最後に私の意見を言いますと、論理的に思考する能力を養うべきだと考えています。カナダに、子どもたちにテレビCMを見せて、それがどうやって作られているかを分析させる教育法があります。どんな人たちが、いかなる意図で作ったかという、見えない部分を想像させるわけですね。このように、ある情報を判断する際に、背景となるロジックを追える能力を身につけることも大切ではないでしょうか。

●久保田

私は情報モラルを森に例えて話をします。情報モラルという森は、「知的所有権・著作権」「プライバシー」「セキュリティ」「情報の信憑性」「ルール&マナー」という5種類ほどの木によって構成されていると考えられます。

ただし、分けて考えるとわかりやすいのですが、根の部分ではもっと複雑にからみあっています。その点を認識しつつ、ちゃんと光を当ててロジックを立てられる能力があれば、どんな情報が入ってきても大丈夫です。

これは安心したり、疑ってみたりといった、いくつかのステップを踏んで育てていく。その能力さえあれば、情報があふれる現代の状況も、あまり恐れる必要はないと思います。

●野間

先ほどメディアを選ぶ重要性が議論されましたが、私はそれにプラスして「誰に伝えたいのか」という点に注目しています。以前から、学習の成果を発表するとき、その方法については選ばせてきました。しかし、昨年あたりから「もしホームページにするのなら、誰に見せたいの?」ということを問うようにしています。もし対象が高齢者であれば、文字の大きくするというような工夫が生まれます。そうした細部にまで気を配る気持ちを養ってあげたいと思っています。

●原田

情報モラルについての議論は、ヴァーチャルの世界かどうかは別にして、社会に対するロイヤルティ、もっと平たく言えば、他人を傷つけないことやボランティアスピリットという土壌があってのことだと思います。

また、赤堀さんのCMを使った教育の話から、教育の方向性として1足す1は2というものに加えて、ある現象を見せて、そのバックグラウンドを予測できる能力を身につけさせることが重要だと感じました。ある現象が起きたときに、その先に"人"を想定しながら、「なにが起こりうるのか」を考えさせることが大切。後は具体的なハウトゥーを教えれば、自分で判断できるようになると思います。

●村岡

みなさんがおっしゃった論理的な力、信憑性が判断できる力、そして予測できる力というのは、まとめると「考える力」だと思いました。つまり、自分の考えをもつ事が、より大事になってきている。 私も含めて若い世代は「考える力」が弱くなっているのではないか、と思います。そして、その能力を育てるには公式がないんだろうと。つまり、場数を踏むしかない。

「新聞やテレビで言っていたから正しい」というように、考えを人に依拠してしまうのは危険だと思います。今日の企画の発端である「Q&Aをやめよう」と言うのも、久保田さんから「現象面だけを人に聞いて、その答を知ってしたり顔をするのでは、永遠に情報モラルを教育していく土壌が育たない。だからもっと根っこで理解してもらわなければならない」というご意見からでした。

我々も含めて先生方も子どもたちも「考える力」を身につけることが必要だと思います。

●赤堀

まさに、その通りですね。本日はありがとうございました。