メディアとのつきあい方講座

メディアとのつきあい方学習への招待

第4回 メディつき学習を「広める」ために
原香織先生(東京都文京区立青柳小学校主幹)
×吉野和美先生(静岡県富士市立田子浦小学校教諭)

メディアの操作方法や仕組みを教えるのではなく、メディアとのつきあい方を教えようという「メディアとのつきあい方学習(=メディつき)」を、「はじめる」「深める」ためにはどうすべきかと探ってきたこの連載。メディつきへの招待・最終回は、メディつきをいかにして広めるかについて、原先生、吉野先生に語っていただいた。

どうすれば
広められるか

原香織先生

──ずばり、メディつきを広めるためのポイントを教えてください。

「広めるための第一歩として、まずはメディつきの実践授業をほかの先生に見ていただくことですね」

──公開授業ということですか?

「もちろん、そうした機会を設けることもあります。でも、そうするとちょっと大げさになってしまいますよね。ですから私は、例えば朝の職員会で『今日、こんな実践をやるんです。よかったら見に来てくださいね』と声をかけるなどして、気軽に授業を見ていただけるように心がけています」

吉野 「原先生のお話の『逆もまた真なり』で、ほかの先生の授業に関心を持つことも、メディつきを広めるための第一歩になります。学級や学年を問わず、メディつきに挑戦しようとする先生に支援の手を差しのべること。子どもたちの実態を把握し、どんなメディつき学習が求められているのか助言することも、広めることにつながります」

『広める』と『はじめる』は
隣り合わせ

吉野和美先生

──メディつきの素晴らしさは理解できたけれど、やはり実践の段階でつまずく先生も多いと思いますが、いかがでしょう。

吉野「パソコンを使っておしまい、という授業では、メディつきには到達しません。それに、これは陥りやすいワナなんですが、パソコンだけがメディアじゃないですよね」

「テレビも新聞も雑誌も電話も、みんなメディアです。メディつきの提唱者である堀田先生がいつもおっしゃっていることですが、私たちは今、さまざまなメディアに囲まれて暮らしていますよね。そして、それはすでに排除できないものです」

吉野「私たちはメディアの仕組みなど知らなくても、それをうまく使いこなしています。例えば、携帯電話でどうして通話ができるのか、その仕組みは知らなくても、私たちは携帯電話を便利に使っていますよね。もちろん、通話ができる仕組みを知ることはムダではありません。でも大切なのは、携帯電話をいかに使うかです。『連絡を取りたい相手は外出しているはずだから自宅の電話じゃなくて携帯電話に電話してみよう』とか、『携帯電話に電話したけれど出られないみたいだからメールで送っておこう』とか、『電車の中ではマナーモードにしておこう』とか」

「それこそが『つきあい方』なんですよね。メディアの特性を理解して、そのメディアが及ぼす影響を考え、メディアが取り巻く社会でどうすれば安全に行動できるか判断する。そこがメディつきのキモです。ほんの少し視点を変えて見てみれば、至る所にメディつき実践のタネは転がっています。ですからメディつき実践って、ちっとも難しくないんですよ。とても取っつきやすい」

吉野 「それでいて奥が深いのがメディつきの面白さですね」

「先生方はいろいろな引き出しをお持ちです。その中に、エッセンス的にメディアという存在を入れ込んでいく。具体的に言うと『授業のこの場面ではこんな機材を使うと効果的ですよ』などと提案してみると受け入れられやすいですね」

吉野「練り上げられた授業が、その一滴のエッセンスでメディつきになるんです。実は、メディつきを『広める』のと『はじめる』のは隣り合わせなんですね」

──そうやって提案していくことで、学校の情報機器サポート屋さんになってしまうことはありませんか?

「そういう一面は確かにあります。が、それは逆に『広める』チャンスでもありますよね。ほかの学級の様子をじかに知ることができたり、子どもの実態を把握しやすくもなります。授業のサポートをするきっかけになったりもして、かえってメリットも多いんですよ」

吉野「私の場合は情報機器に詳しいわけでも何でもないので、サポートを頼まれたら『一緒に勉強しましょう』と巻き込んでしまいます(笑)。私も勉強できますし、何よりサポートできる人がもう1人増えます」

「それはいい案ですね(笑)」