中学・高校の実践事例

肉眼ではとらえられないその一瞬を見つめる
〜エディウスJで動画活用〜 群馬県桐生市立南中学校

群馬県桐生市立南中学校

1秒間に100回以上の点滅を繰り返す蛍光灯。その事実を知識として得ていたとしても、肉眼で「暗」の瞬間を認知することは難しく、寿命の近づいた蛍光灯でわずかにチラツキとして感じる程度でしかない。どうすれば「暗」を見ることができるのか。動画を生かした実践を取り入れている桐生市立南中学校を取材した。

意欲的に動く生徒と
アドバイスに回る先生

スーパーボールが水面の表情を変える瞬間をデジタルビデオカメラで撮影する

スーパーボールが水面の表情を変える瞬間をデジタルビデオカメラで撮影する。

授業開始のベルの音を待たずに、実験装置を組み上げていく生徒たち。その様子を見て回り、必要となりそうな機材を用意したり、一言二言のヒントを授けたりする丹羽先生。ここ南中3年生の選択理科は、生徒たちの自主性と先生の絶妙な支援とで成り立っている。

生徒は3〜4人ずつのグループに分かれて準備をしている。1つのグループは、スーパーボールを手に、水の入った箱を用意。もう1つのグループは、机上で直管の蛍光灯をともしている。そして残る1つのグループは、なんと理科室でポップコーンを作ろうとしている。

各グループに共通する機材は、デジタルビデオカメラ。スーパーボールが水面をたたく瞬間を、蛍光灯が明滅する瞬間を、熱せられたトウモロコシがはじける瞬間を、それぞれ撮ろうとしているのだ。

素材も実験方法も
生徒自らが選び編み出す

トウモロコシがはじける瞬間を狙うグループ

トウモロコシがはじける瞬間を狙うグループ。最初はフライパンに1粒だけ載せて熱していた(上写真)が、はじけずに終わる。しかし、アルミホイルの容器に変える(下写真)と、瞬く間に数粒がはじけた。

スーパーボールのグループは、注いだ水に色を付けている。青い絵の具を溶かし込み、濃度を調整。その理由を問うと「無色透明な水よりも、色の付いた水の方が鮮明に見えると思うので」と返ってきた。完全に不透明ではかえって見にくくなるので、微妙な透明度に押さえておくのだという。

一方でポップコーンのグループは、フライパンに爆裂種のトウモロコシを1粒だけ載せて熱し始めた。その傍らでは、アルミホイルをビーカーの底にかぶせて型を取り、径が小さくて深めの器を作っている。「フライパンでポップコーンを作った後に、この器でも試してみようと思います」とのこと。果たして、熱する器によってトウモロコシのはじけ方は違うのだろうか。

そして蛍光灯のグループは、暗くなった瞬間が分かりやすいように、暗い部屋で撮影を行うことに。シャッタースピードの設定など試行錯誤している。

こうした実験の工夫は、生徒たちが自ら考え、編み出したものだという。この創意工夫と意欲はどこから生まれてくるのだろうか。

コンクールへの応募で
意欲を引き出す

意欲の源は「コンクールへの応募」だと丹羽先生。「本校の選択理科の授業では、授業ごとの成果を求めません。1学期の間、生徒たちの自由な発想においてテーマを決め、実験を行うよう指示しています。その成果はレポートとしてまとめ、提出してもらいますが、レポートはすべて理科系のコンクールに応募することが前提です」

テーマも自由、素材も自由、実験方法も自由。すべて生徒に一任されている。そしてその成果は直接「コンクール」という形で第三者に評価される。「選択理科自体の評価も至って単純。コンクールに応募できればB、できなければC、コンクールで入賞すればA、です。Aのハードルはちょっと高いですけどね(笑)」

明解な評価は当然生徒たちにも提示されている。それゆえに意欲も高まり、探求心もはぐくまれていくのだと丹羽先生は語る。


丹羽孝良先生
丹羽孝良(にわ・たかよし)先生

理科の教科担任。文化資料のデジタル化について知識と技能を併せ持つ、デジタル・アーキビストの資格を取得しているほか、文部科学省所管の、財団法人学習ソフトウェア情報研究センターの群馬地区事務局長も務める。