メディアとのつきあい方講座

メディアとのつきあい方学習実践事例レポート

情報モラル学習 保護者に伝える情報モラルの重要性
〜モラル教育に不可欠な家庭の理解と協力を育む〜
東京都・北区立赤羽台西小学校

保護者に向けた情報教育セミナー

5校時の授業が終わり、続いては保護者・教育関係者らを体育館に集めての研究発表だ。250人に上るこの日の来校者の内、館内に集ったのはおよそ180人。校長先生や来賓のお話の後、主幹の野間俊彦先生から保護者に向けて、同校の情報教育についての説明が行われた。

同校の情報教育について説明する野間先生 教育へのITの活用のために、「教師の活用」「児童の活用」と並んで、保護者や地域の方々と連携した「情報モラルの育成」が重要であることをアピール。また、昨今、世間でもささやかれることの多い学力低下の問題に関しても、情報教育が他教科の時間数を圧迫しているという見方は的を射ていないと説明。「学力」はテストの結果だけでなく、もっと幅広い「学ぶ力」のことであり、情報教育は、そうした力を育てる上で大変有効な手段であることが力説されていた。

保護者の目から見た情報教育 そしてこれからの取り組み

説明会の後、出席されていた保護者の方にお話を伺ったところ、この学校の情報教育については「現在の状況に合った教育をしてもらっている」「自分に分からないことを子どもたちがよくここまでと驚かされた」など、大変好感を持って受け止められていることが分かった。

赤羽台西小学校における情報教育のテーマ一方、不安や不満点として、
「親戚や友人と話していても、赤羽台西小の環境は恵まれていると感じるが、それが中学校に進んでも維持されるのか心配」「パソコンやネットについては分からないことが多いので、保護者に対する説明の機会をもっと増やしてほしい」
といった、現状に対するさらなる期待とも取れるお話が。

他にも、保護者を対象とした学校メーリングリストについて、不審者情報や学校行事に関する連絡といった安全情報や利便性に期待しているなど、学校の情報化についても期待のこもったコメントがいただけた。

さらに、当日の参加者から回収されたアンケートには、賛否が入り交じった回答が寄せられている。

●子どもたちが当たり前のようにITを活用していることに感心した

●学年ごとに段階を踏んだ学習をしていると感じた

●PCのある家、ない家の格差への配慮は?

●全家庭へのPC貸与を行ってほしい

●情報教育よりあいさつ教育をせよ

●情報教育の時間が足りていないのではないか

●子どもたちが自分で作ったプレゼン資料の漢字を読めないことに驚きと疑問を感じた

などなど、良くも悪くも、情報教育の持つ影響力を肌で感じての意見であると感じられるものだった。

野間俊彦先生

このアンケートの回収率は約25%。学校公開日に訪れた保護者という、比較的学校に関心の高い人たちの数字である。「学校や情報教育への関心をもっと高めていくことが一番の課題」と野間先生は語ってくれた。

保護者の心配するところだった、中学進学以降の情報教育環境については、現在、北区で進められている「学校ファミリー構想」がその回答になるかもしれないとのこと。近隣の小中学校をグループ化し、相互に教育内容の連携を図ると同時に、地域社会との連携をも強化していくというこの構想は、平成15年に発表され、まだ端緒についたばかりだが、その展開が注目される。

赤羽台西小学校の[学年別情報教育カリキュラム]

3年生のカリキュラム4年生のカリキュラム5年生のカリキュラム6年生のカリキュラム

◆北区立赤羽台西小学校

赤羽台西小学校

「くふうする子・協力し合う子・やりぬく子」を教育目標に掲げ、学力の育成と心の教育の両立を目指した指導が行われている。昭和62年に北区のパソコン教育実験校となったのを端緒に、情報教育についても数多くの取り組みが重ねられてきた。地域ボランティアの支援を生かした子ども水族館の運営や、親子での田植え、清掃活動など、地域に根ざした取り組みも積極的に進められている。村上今雄校長。児童数201人。

取材・文/西尾琢郎 撮影/齊藤浩

※本文中の情報は、すべて取材時のものです。