小学校の実践事例

臆せず話す子どもたち 学び合いこそ授業の意義 
〜「メディアとのつきあい方学習」の生きた実践を見る〜
岩手県・水沢市立水沢小学校

多彩な発問 途切れぬ発言

授業中の子どもたち佐藤先生

ワークシートに書く(=考える)、起立して発言する(=人の意見に触れる)、それに先生がさらなる発問を返す。その中で子どもたちはごく自然に、学びの成果に向かって歩んでいくのだ。

「さて、それじゃあワークシートに沿って写真を見ていきましょう。まず、この写真に写っているのは誰かな。ワークシートに書いてみてください。想像じゃなくて、写真に写っていることに沿って考えてみようね」と佐藤先生。

続けて「はい、書いた人は立とう。書いてる途中の人も立とう」先生はテンポ良く子どもたちの頭と身体を動かしていく。

立ち上がった子どもたちを見回しながら、それぞれの子どもの目をのぞき込んでいく佐藤先生。子どもたちの「答えたい気持ち」やその発言がどんなものかまでを見極めながら次々と名前を呼び、発言を促していくのだ。
「僕は警察だと思います」
「何を見てそう思いましたか」と先生。
「制服のようなものを着ているからです」
「あ、今の発言は素晴らしいね。どこが素晴らしいか分かるかな」

子どもたちは先生の次の言葉に聞き入る。
「しっかりと理由が言えていますね。それも、写真の中から探した理由が入っているのがいいんだね」

このように一人ひとりの発言を受け止めることで、発言した子どもがさらに伸びていく。さらに、その良さを先生が「どこが、なぜよいのか」をハッキリさせてほめ、クラス全員で共有することで、より多くの子どもたちが学びを深め、発言の力をつけていくことができるのに違いない。
「検査をしている人です」
「写真のどこでそう思ったのかな」
「何かを手に持って調べているように見えるからです」
「空港で働いている人です」
「そういう人に会ったことがあるのかな?」
「テレビで見ました。『アテンションプリーズ』とか言っている人にそっくりです」などなど、発言は次々と続く。

ここで先生は、板書をしながらそれらを大きく3つにまとめた。
「ここまでのみんなの意見は、空港の人、検査の人、警察の人、の大体3つに分けられるみたいですね。実はこの中に正解があるんだけど、それはもう少し写真を読み取っていくと分かるから、一緒に進めていきましょう」

自分たちの発言の中に答えがある!

そんな思いが、子どもたちをさらに写真の読み取りへと集中させていった。

発言すること 学び合うこと

この取り組みのワークシート

@誰がAどこでB何をしているのか。そしてCこの写真は何を伝えたいのか。写真を見、それぞれの項目について手がかりを引き出すことで写真に込められたメッセージへと迫っていくステップが、簡潔にまとめられている。
授業の締めくくりは、感想を書くこと。といっても書くのは先生の教え方や嬉しい楽しいではなく「授業で勉強したこと」についてと指導される。子どもたちは自分が学んだことを振り返ることで、それを自分の中で整理することができる。

この授業では2枚の写真について、それぞれ@誰がAどこでB何をしているのか、そしてCこの写真を通じて何を伝えたいのか、の4点が問われている。冒頭の「誰が」にはじまって、佐藤先生の巧みな発問と、子どもたちの発言とが活発に行き交い、写真から次々と情報を引き出させていくプロセスは、見ている私たちもドキドキさせられるものだった。

1枚目の写真は「検査官が」「空港で」「輸入野菜の検査をする」ようすを写した『輸入された野菜の検査』。

続いて読み取りに取り組んだ2枚目の写真はさらにその難易度が上がっている。「漁師さんたちが」「山で」「木を植えている」という『大漁旗の下で作業をする人たち』。

これらは社会科の教科書などに使われていた写真であり、タイトルはその写真に添えられていたものだが、子どもたちの活発な発言の連なりは、それぞれ見事に写真に込められた情報へとたどり着き、私たちを驚かせてくれた。

授業はじめの「ナイショ話」もそうだが、佐藤先生は子どもたちの「答えたい」気持ちを最大限に生かしながら、一人ひとりの子どもの思考や答えのレベルをその都度予測し、適切な発言を引き出すことで授業の流れを作り出していることが随所にうかがえる。先生の著書には、授業中の指名法についても、いくつもの引き出しを持っていることが書かれているが、これはその真骨頂だろう。

「子どもたちが教室で一緒に学ぶということには、自分とは違う考え方があるということを知り、それに触れるという意味があるんです」」と先生は言う。瞬間、廊下の子どもたちの写真が思い浮かんだ。つまりそういうことだったのだ。

だからこそ、佐藤先生は子どもたちの発言を引き出し、それを子どもたち同士で受け止めさせることに重きを置いているのだ。
授業の締めくくりに、佐藤先生は子どもたちへこう語りかけた。

「今日は写真について、ただ見るだけでは分からなかったことが、みんなで話し合うことでいろいろ読み取れるようになりましたね。このように写真には『伝えたいこと』が込められています。これをメッセージとも言います。これから写真を見るときには、そんなことを頭に浮かべてみてください」

そうした言葉を受けて、子どもたちがワークシートの末尾に書き込んでいく授業の感想を見ると、
「最初は分からなかったことが、写真を読み取っていく内にだんだん分かってきてよかったです」
「写真にはメッセージがあって、それが見ている人に伝わるように工夫されているということが分かった」
など、子どもたちの「知ること」への喜びや、自分が「変わった」ことの自覚がダイレクトに伝わってきた。

本当に子どもたち自身が「取り組んだ」学びならではの確かな手応えを感じさせるこの日の授業であった。

取り組みの流れ

 

◆水沢市立水沢小学校

岩手県内陸部の中央に位置する水沢市。平成18年2月には周辺の1市2町1村と合併して新市「奥州市」が誕生することが決まっている。水沢小学校の学区は水沢市の中心部を占め、かつて高野長英や後藤新平らを輩出した文化の香り高い土地柄だ。児童数864名。吉田政校長。


☆佐藤先生の個人ブログ 『地域のよさ・日本のよさを伝える授業』
http://satomasa5.cocolog-nifty.com/

取材/西尾琢郎 撮影/齊藤浩
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。