新学習指導要領 〜教育新動向〜
歩いて 学んで 教材化!
〜フィールドワーク×ワークショップで広がる視点〜
熊本県・大津町立室小学校
30分で具体案へと昇華
発表にあたっては、プリンターの拡大連写機能で大判に仕上げられた地域の地図と、フィールドワーク中の写真をA4用紙にプリントしたものが用意されている。発表をより分かりやすくするための補足アイテムとして、活用を促す平川先生。
「発表の持ち時間は各グループ3分です。発表係の先生は時間厳守でお願いします」
1番手は低学年のグループ。このグループは「神社・寺」「川」という2つを軸に展開。「地蔵まつり」「いきものたんけん」「民話作り」など、低学年ならではの、身近な素材から地域を再発見するアイデアが出された。
2番手の中学年のグループは、「上井手川」を中心に据え、2つの具体的な単元を編み出すことに成功。1つ目は「私たちの生活と川」と題され、生物や生活排水などから環境問題を考える単元。暮らしと密接にかかわる「水」について、地域レベルから学ぶことができそうだ。
2つ目は「水車物語」。上井手川→水路→水車という連想から、水車を用いていた産業「精米・製粉・製油・製材」につながり、昔の大津町の産業を知る単元 へと発展。それぞれにかかわる人とのふれあいも視野に入れ、すぐにも教材として組み立てられそうな段階にまで練り上げられている。
3番手の高学年のグループは、「大津町」を中心に据え、広い視野を持って展開。6年生は大津街道を軸とした地域の歴史を。5年生は工業と交通を絡めて。4年生は上井手川から広がる産業を。3年生は町に貢献している人といった観点で。それぞれの学年での素材を提示し、アイデアを膨らませた。
![]() 地図や写真を効果的に用いる低学年グループの発表。デ ジタイマーが残り時間を表示する。 |
![]() 中学年グループの発表。水路や石橋にロマンを感じる 先生方の思いが詰め込まれた発表となった。 |
![]() 高学年グループの発表。工業から世界、そしてコミュ ニケーションスキルへとつながるのはさすが高学年。 |
ここで
終わらせない
「今日は素晴らしいアイデアがたくさん出ました。これを基に教材化を進めていただき、ぜひ、今年、そして来年の生活科や総合的な学習の時間で生かしていってほしいと思います」
このワークショップだけで終わらせないでほしいと西先生。続いて教頭の川上先生から一言。
「幼いころ、教室の窓から見た景色は強く目に焼き付いているものです。今日の研修の成果により、子どもたちが地域の多様性を知り、自分と地域とのかかわりを理解し、変わらないこと、変わっていくことに気付き、それを学びに変えていってくれたらと思います」
最後に平川先生から。
「フィールドワークで村下先生が仰っていた『なぜ、大津西小ではなく、室小という名になったのか』という言葉に深く考えさせられました。そうした地域の方々のこだわりや思いを、子どもたちにも伝えていけたらと思います。今日はありがとうございました」
午後の部スタートから1時間ちょうど。時間通りの進行と、フィールドワークを生かしたワークショップの成果を得て、研修は大きな拍手で幕を閉じた。

「研修の成果は、『研修デザイナー』などでコンパクトにまとめて、その都度ファイリングできたら理想的ですね。今年だけじゃなく、来年、再来年と皆で共有し、深めていけたらと思います」

「単元作りまでは無理かなと思っていたのですが、フィールドワークとワークショップを組み合わせたことで、すぐにでも実践できそうなアイデアがたくさん生まれ、驚きとともに嬉しく思いました」

「今回はアイスブレイキングのみの担当で、緊張しましたが楽しかったです。低・中・高それぞれの視点での発見があって、毎日見ている場所にも歴史があり、まさにロマンを感じました」
取材/西尾真澄 撮影/土井 渉(スタジオエイブル)