新学習指導要領 〜教育新動向〜

歩いて 学んで 教材化!
〜フィールドワーク×ワークショップで広がる視点〜
熊本県・大津町立室小学校

熊本県大津町立室小学校

学校の周辺、子どもたちの周辺にはどんな歴史が埋もれ、息づいているかご存じだろうか。
地域を歩いて足で学び、ワークショップを通じて情報を整理し教材化する。そんな校内研修の試みを取材した。

地域密着型の
研修

図書室に集い、村下先生からフィールドワークについての説明を受ける。

図書室に集い、村下先生からフィールドワークについての説明を受ける。

九州が梅雨明けした、まさにその日の朝。室小図書室には20名を超える先生方が集まっていた。行われるのは、地域の 歴史を題材にした校内研修会だ。

午前中は地域を巡ってのフィールドワーク。その中で得た知識・体験を午後のワークショップ型研修で収束させ、教材 化するのがこの研修のねらいとなる。

フィールドワークを率いるのは、室小のお隣、大津小の村下先生。社会科が専門で、地域の歴史に詳しく、大津町を中心とした地域教材なども手掛けている。
「資料としての地域史は、その地元にもなかなか残っていないもの。しかしながら、町の中の、普段気付かないような場所に、たくさんの痕跡を見つけることができます。今日は、そんな痕跡を実際に見て回り、足で稼いだ情報を教材化への ヒントにしていただければと思います」

実際に外に出る前に、村下先生は見学のコンセプトと主な場所について解説。地名や名字、古道など、歴史をひもとく にはさまざまな切り口があることを写真を交えて講義した。

歩くたびに
発見がある

大津町の江戸時代の地図を参考に歩く

大津町の江戸時代の地図を参考に歩く。「川がこう流れているから、今いるのはこの辺り?」

日差しが照り付ける中、いよいよフィールドワークがスタート。村下先生を先頭に、何台かの車に分乗して目的地へ。大津町付近の古地図を手掛かりに、上井戸川(うわいでがわ)を軸として、関所跡や軽便鉄道駅跡、人馬所跡、神社や寺、石橋などを見て回る。
「こんなところに石橋が残っているなんて、教えてもらわないと絶対に気付かないですね」
「『室』という地名が、氷室に由来することも知らなかったなぁ。町村合併による大津町への編入で、なくなっても不思議じゃなかった『室』という名を、室小も受け継いでいると思うと感慨深いよ」
「上井手川を中心として、その水流を活用してさまざまな産業が栄えていったんですね。これは教材に生かせそう」


地元の人を訪ね話を聞く

地元の人を訪ね話を聞く。足手荒神のいわれや建立に至る話など、確実に息づく確かに息づく歴史を感じる。

熱心にメモを取りながら、村下先生の話に耳を傾け、さらにデジタルカメラでその場その場の光景を写し取る先生方。

午前9時半から11時半まで、2時間ほどのフィールドワーク。足で得た情報を基に、どんなワークショップが展開されていくのだろうか。お昼休みを挟んで、午後1過ぎ、先生方は再び図書館に集った。

3人の
ファシリテーター

「それでは午後の部を始めます。1時間で終わりたいと思いますので、ご協力お願いします」

そう告げるのは、今回初めてファシリテーターを務めるという平川先生。

今回の研修は3名のファシリテーターで進められる。主な進行役は平川先生。 全体の補佐をするのは、ファシリテーター役を務め慣れている西先生。アイスブレイキング担当は、これまた初めてファシリテーターに挑戦する三村先生だ。
「3人で組むことで、初めてファシリテーターを務める先生の肩の荷を軽くしようというねらいです。単なる司会進行役ではなく、意見の表出を促進し支援するファシリテーターという役割を知るためには、実際にやってみることが一番の近道なんですね」

そう語る西先生。この研修自体が、臆せずファシリテーターに挑戦してもらうためのステップにもなっているのだ。

村下洋一先生

大津町立大津小学校
村下洋一(むらした・よういち)先生

自身の足と地道な調査に基づく大津町の歴史素材を、地域学習の教材として再構築し、貴重な資料を各方面に提供し続けている。