新学習指導要領 〜教育新動向〜
歩いて 学んで 教材化!
〜フィールドワーク×ワークショップで広がる視点〜
熊本県・大津町立室小学校
まずは
準備体操から

アイスブレイキングはワークショップを始める上での大切な準備体操。緊張が一気にほぐれていく。
集った先生方は、低・中・高学年の3つのグループに分かれて座るよう指示されている。今回の研修の目的が”教材作り”にあるためだ。西先生がその点を詳しく説明する。
「午前中のフィールドワークを参考に、『人・もの・こと』を中心として生活・総合の新しい単元を作っていくにはどうすればよいか、また、既存の単元を深めるにはどうすればよいか、その糸口を探っていきたいと思います」
今回使用する技法は”ウェビング”。
1つのキーワードから蜘蛛の巣のように言葉をつなぎ、アイデアを膨らませていく手法だ。
「役割分担をした後、個人でのウェビング、さらにグループでのウェビング、そして発表でまとめたいと思います。では、まずは役割分担から」
西先生の言葉を受けて、三村先生が前へ。参加者の緊張を解きほぐすべく、アイスブレイキングが行われる。「はい・はい」の掛け声とともに、手をグーにしたりパーにしたり、その手を前に出したり胸元に引いたり。
みな立ち上がって、最初はゆっくり、だんだん早く。間違えた人から座る。真剣になると同時にわき上がる笑い。
「それぞれのグループで最初に間違えた人が司会役です。そこから時計回りに記録係、道具係、発表係をお願いします」
と三村先生。
普段見知った間柄でも、こうしたゲームひとつでその場の空気が一気に和らぎ、受容的なムードが生まれる。アイスブレイキングは、ワークショップ開始時の大切な準備体操なのだ。
時間厳守で
能率アップ

ウェビングの例を説明する平川先生。ある程度巨視的で発展性のある事柄を中心に据えると、蜘蛛の巣が広がりやすくなる。
研修の目的説明とアイスブレイキングで約5分。続いては個人でのウェビングだ。A4の紙が1人1枚ずつ配られる。
「午前中に見て回った中で、印象的だった『人・もの・こと』を中央に据えて、そこから連想する事柄を枝葉のようにどんどん伸ばしていってください」
ウェビングの具体例を見せながら解説する平川先生。作業時間は10分。デジタイマーが時間を表示する。短時間で区切ることで、集中力を切らさず、効率的な思考が可能となる。
フィールドワークでのメモを参考に、中央に据える言葉を決める先生方。白い用紙を前にしばらく悩んでいた先生も、中央の言葉を決めてしまえばあとは早い。

個人でのウェビング。「上井手川」を中心に、次々と枝葉が伸びている。
大津町・上井手川・鉄道・地名・神社・寺など、さまざま言葉が中心に据えられ、それぞれに関連する事柄が紙面を埋めていく。
「最初は付せん紙に記入する方式を考えていたのですが、研修でウェビングを使用するのは初めてだったので、ウェビングに慣れてもらうためにも、ウェビングの手法を使い、個人で情報を整理する過程を導入しました」
そう話す西先生。ワークショップと言えば付せん紙と考えがちだが、付せん紙を1枚も使わない取り組みもまたワークショップになりうるのだ。
思考の広がりと
収束

グループでのウェビング。高学年になれば当然取り上げられる話題も高度になり、視点も増える。模造紙1枚では足りなくなる場面も。
個人でのウェビングを基に、グループでのウェビングに取り組む。時間は30分。
まずはグループ内で多く表れた言葉を模造紙の中心に据え、そこから1人ずつ、どんな事柄をつなげていったか書き込んでいく。同じ言葉が出たときにはどんどん割り込んで書き加える。その場で思い浮かんだ事柄もつぎ足され、蜘蛛の巣は模造紙いっぱいに広がっていく。
全体の構造が見えてきたところで、教材化を意識しつつ情報を整理する作業に移る。低・中・高学年のグループ分けが生きる場面だ。

フィールドワーク中の写真。ワークショップ前のわずかな時間に印刷したものだが、発表時の補足アイテムとしては大きさも画質も十分だ。
「『水車』を中心とした産業が見えてきますね」
「『川』から生活や環境を考えることもできる」
「地域と『工業』とのかかわりを学ぶのは5年生かな?」
「『昔話』を聞いたり、調べたりするのも単元になりそう」
さまざまなアイデアを出し合い、関連する事柄を線でつないで整理していく。 30分の間にかなり具体的な内容まで煮詰められ、いよいよ発表の時間だ。

大きく刷られた地図も積極的に活用。実際に子どもたちが地域に出て学ぶ際のルートなども想像しやすい。