新学習指導要領 〜教育新動向〜

教科を越え、苦手意識を越え、 情報教育を解放せよ!
〜情報教育の技術科依存からの脱却を目指して〜
愛知県大府市立大府西中学校

インターネットは
増幅装置!?

身近な例をあげながら、先生たちの共感を得て進められていく長谷川先生の研修

身近な例をあげながら、先生たちの共感を得て進められていく長谷川先生の研修では、一人ひとりの参加者が、それを学級や授業でいかに生かしていくかが各々自問されていく。

授業時間が終わった放課後、長谷川先生による研修がスタートした。

「今日は先生方と一緒に、改めて情報モラルや安全なネット生活について考えたいのですが、まずお尋ねしたいのは、皆さんが日ごろ、そういった指導を自信を持って行えているかということです」

目を見合わせる先生たち。年配の先生方を中心に

「コンピュータは正直苦手だから……」といったつぶやきがもれる。

「情報というと、どうしてもコンピュータの得手不得手が気に掛かって、指導も消極的になりがちですよね。ですが、ここで教えたいモラルであるとか安全といったものは、別にパソコンだから、ネットだからといった特別なものではないと思うんですよ」と長谷川先生。

ここで長谷川先生から、情報モラルやネット上の危険について思い当たる事例をあげてほしいという問いが出された。

「ネット詐欺、チェーンメール、掲示板でのいじめ……なるほど、どれも今問題になっている出来事ですね」と長谷川先生。

「しかし考えてみてください。詐欺にせよいじめにせよ、ネット時代以前からある問題ではないでしょうか。チェーンメールは『不幸の手紙』などと言われていたものと同じですよね。コンピュータウイルス等は別として、ほとんどの問題は以前から存在するもので、それをコンピュータなりネットなりが増幅・拡大させたというのが本当のところなのです」

卑近な例をあげながらの話に、研修を受ける先生たちも引き込まれ、うなずきながらメモを取る姿が見られた。

臆さずに
現実を見て

「ジャストジャンプ2@フレンド」の情報モラル実践教材の一部

「ジャストジャンプ2@フレンド」の情報モラル実践教材の一部。1010年ごろの「紫式部日記」の一節(下)を、現代のウェブサイト風に意訳したもの(上)。情報を発信する上で、望ましい態度について考えることがねらいだ。

長谷川先生はさらに続けた。

「ここまでご理解いただければ、あとは現在実際に起きている事件事故をよく知り、その上で何をしたらいいか、何を知っておけばいいかを考えればよいのですね。その判断基準は、先生方がこれまでの経験の中で培ってきたものを生かせばよいのですから、自信をもって指導をしていただきたいと思います」

この後、実際の指導に役立つ素材として、若者のメール文を思わせる文体で他人を揶揄する内容の文を示された。

「これを書いたのはどんな人だと思いますか」と問いかけると、「女子高校生」「他人を妬んでいる女性」などという声が上がる。実はそれが古典文学の『紫式部日記』で、作者が清少納言について書いた一節の現代若者語訳なのだと明かされると、一様に驚く先生たち。他人について書いた悪口は相手を傷付けるだけでなく、文字としていつまでも残ったり、他人の目に触れたりして自分自身を辱めるのだということを示すユニークな素材といえるだろう。

このように興味を引き、思わずひざを打つような話題を提供しながら、生徒たちと一緒にモラルや安全について考えて欲しいというのが長谷川先生からのメッセージだ。

苦手意識を捨て、身近な例や自然な気持ちを土台にして考える情報モラル、そして安全。避けずに取り組むことの大切さが先生方にも共有されたこの日の研修であった。

二宮先生が進める「いつでも、どこでも情報教育」に向けた取り組みは、今後も着実に進められていくことだろう。