中学・高校の実践事例

体験と知識の両輪で学ぶ情報モラル
〜仕組みを知り、「なぜ」が分かるモラル理解へ〜
茨城大学教育学部附属中学校

立ち位置は子どもたちの「今」

『つたわるねっと』のアンケート機能なら、手軽な操作で設問が作成でき、回答や集計もパソコン上で瞬時に可能。

『つたわるねっと』のアンケート機能なら、手軽な操作で設問が作成でき、回答や集計もパソコン上で瞬時に可能。途中経過の表示によって回答状況も一目で把握できる。

こうして生徒たちの目の前には「自分の」デスクトップが広がった。ここで最初に行われる作業は、なんとアンケートだった。

デスクトップに配置された、つたわるねっとTeen's@フレンド(以下『つたわるねっと』)のアイコンをクリックするように指示した萩谷先生は、続いてアンケートに回答するよう生徒たちを促す。

アンケートの内容は、生徒たちとコンピュータ、携帯電話やインターネットの関わりについて。先生が生徒の実態を把握できることに加えて、生徒たち自身、自らが今、情報や情報機器とどのように付き合っているのかという状況を客観的に知ることができるように配慮されている。『つたわるねっと』のアンケート機能では、簡単な操作で、短時間でアンケートが作成でき、回答から集計までをパソコン上で行うことができるのだ。

「知りたいと思ったことを、すぐ実際に調べてみようと思える手軽さがいいですね」と萩谷先生。

この学級でのアンケートでは、同学年の他学級に比べ、ネットや携帯電話への接触度が低めという結果に。たとえわずかであっても、学級ごと生徒ごとの違いを見据えた上で、その現状に即した授業を組み立てようという萩谷先生の熱意がここにも感じられた。

かみ合う両の輪

『つたわるねっと』の疑似体験コンテンツで迷惑メール&不審サイトを体験。

『つたわるねっと』の疑似体験コンテンツで迷惑メール&不審サイトを体験。実際の事例を参考に制作されたコンテンツはリアリティ満点だ。


疑似体験コンテンツでは、その体験の締めくくりに、生徒の行動に応じたアドバイスが表示される。

疑似体験コンテンツでは、その体験の締めくくりに、生徒の行動に応じたアドバイスが表示される。自分の行動が招く可能性のある結果を、生徒が心に刻む瞬間だ。


疑似体験を終えた生徒たちに、それぞれどう行動したかを問う萩谷先生と、それに答える生徒たち。

疑似体験を終えた生徒たちに、それぞれどう行動したかを問う萩谷先生と、それに答える生徒たち。体験が「熱い」うちに、知識のまとめを行うべく『つたわるねっと』所収の解説スライドが活用されていた。

2コマ連続のこの日の授業は、生徒たちの盛り上がりの中で進んでいく。続いては『つたわるねっと』の疑似体験コンテンツの出番だ。

まずは迷惑メール体験から。ログイン情報が整えられ「自分のもの」として使えるようになったパソコンで『つたわるねっと』を起動し、メールソフトを立ち上げる生徒たち。そこにはすでに先生から、疑似体験用の迷惑メールが着信していた。

「何か来てます!」

「これ、開いて見てもいいんですか?」

口々に尋ねる生徒たち。

「ではメールを開いてみてください。内容についての判断は、自分自身ですること!」と先生。

開かれたメールには、「面白いサイト」を紹介するURLがリンクとして表示されている。それを前にして考え込む生徒、迷わずクリックしてサイトに進んでいく生徒……と反応はさまざまだ。

誘導されたサイトには、占いなど、中学生の関心を引かずにはいないコンテンツが並ぶ。昨今流行の、氏名や生年月日を入力させて面白い占い結果を表示するといったコンテンツもあり、友だちと顔を見合わせながら興じる生徒が見る間に増えていった。

「はい、そこまで!」先生の制止で我に返る生徒たち。「今のメールを開いてみて、実際にサイトへ行かなかった人、手を挙げてください」萩谷先生の問いに、数名の生徒が手を挙げた。
「どうしてサイトに行かなかったのかな」
「怪しいと思ったからです」
「メールで伝えられてくるリンクには危ないものがあると聞いたことがあったからです」
「なるほど。危険を感じたから、自分で判断してサイトに行かなかったんだね。いい判断です。それではサイトに行った人は、そこにあった占いをやってみたかな」
「はい。だって面白かったから」
「そこで自分の名前や生年月日を入力しましたよね。でもそれは、今日皆さんがユーザーIDやパスワードで守ろうとしたものじゃないのかな」

ハッとした表情の生徒たち。中には仮名や架空の生年月日を使ったという子どもたちもいたが、萩谷先生は、個人情報の流出だけでなく、アクセスするだけでウイルスに感染するサイトなど、新しい脅威が生まれていることを説明。見知らぬサイトに気軽にアクセスする危険性を訴えた。

サイトで占いやゲームを楽しんだ気分との落差が大きい分、迷惑メールと不審サイトの危険性は生徒たちに強く刻まれたハズだ。

『つたわるねっと』には、疑似体験コンテンツだけでなく、その体験を知識として整理、定着させるための解説スライドも用意されており、萩谷先生はこれらを利用しながら授業を進めていた。

この後、同様の流れでチェーンメールの体験と解説とが行われたが「なぜチェーンメールはいけないのか」を問う段で、萩谷先生は電子メールの仕組みに踏み込んで解説。チェーンメールが増え続けるゴミとしてネットワークに過大な負荷をかける可能性や、社会に与える実害に話が及ぶと、生徒たちは思いもしなかったその深刻さに、表情を引き締まらせていた。これもまた仕組み"に根ざしたモラル学習の面目躍如たるシーンだろう。