小学校の実践事例

地場米と共に育つ子どもたち 地域を学び地域を愛する 
〜アンケートの結果をまとめ、お世話になった人たちへ提案〜
熊本県・久木野村立久木野小学校

雄大な阿蘇のふところに位置する久木野小学校では、県産木材の香りあふれる校舎から、今日も子どもたちの歓声が響く。
現在町村合併の準備が進む久木野村だが、子どもたちとその地域は、日々の学習を通じてその絆を深めているようだ。

それは米作りから始まった

今回の取材は、「新米まつり」という地域イベントの会場で小学校5年生たちが行ったアンケートを、子どもたち自身がレポートにまとめていくという実践だ。
一連の 取り組みが始まったのは、この春のこと。米の品種や栽培についての学習がそのスタートだった。稲作体験の実践は数多いが、稲の品種にまで踏み込んでいる点はとてもユニークだ。

先生の話に真剣に耳を傾ける

当然そこには意図がある。子どもたちの好奇心を刺激することはもちろん、地域で育てられている米、人気のある米といった視点を与えることができ、単なる植物栽培や観察の域を越えた実践とするための土台がここで作られていったのだ。

そして田の整備、田植えへと学習は進む。この過程では村の第三セクター企業「(有)くぎのむら」の協力を得て、地域の農業を力づけようという取り組みとの連携が図られた。
取り組みは栽培品種ごとに分けられた班で進められた。稲の生育の様子は継続的に観察され、デジカメ写真を添えた日誌作りが、子どもたちの力を日々確実に伸ばしていく。

1学期、夏休みと続いたこの取り組みを経て迎えた収 穫の秋。先の協力企業などの主催で行われる「新米まつり」で、子どもたちは次の取り組みへと歩を進めた。来場者へのアンケートの実施だ。

自分たちが勉強し、育ててきた米。それは世の中の人たちに、どう受け止められているのだろうか。もっと米を食べてもらうにはどうしたらいいのだろうか。そんな疑問を解決すべくアンケートを作成、その結果を、米作りでお世話になった人たちにお礼として報告したい。そんな動機づけの上に、子どもたちは、地域外の見知らぬ大人たちに、果敢にアンケートの協力を呼びかけたのだった。

活動を振り返り、目標を確認

今日の授業は、そうして得たアンケート結果をプレゼンテーションソフト「はっぴょう名人」を使って、レポートにまとめることが目標だ。

実践の流れ1〜5実践の流れ6〜9


作業の開始前に、田辺先生は子どもたちを教壇前に集めた。
「今日は、『はっぴょう名人』というソフトを使って、アンケートの結果をまとめていきます。先生が見本を作ってきたので、みんなで見てください」

先生の問いにすぐ反応する子どもたち

プロジェクターで投影されたのは、子どもたちの米への取り組みが、写真日記風にまとめられたもの。このお手本ファイルを投影しながら、田辺先生はこれまでの取り組みについて、子どもたちに振り返りを促していった。

「稲の品種や田植えについてお世話になったこの人は、誰だったかな?」 「新米まつりに参加することになって、久木野米をPR するための作戦を3つみんなで考えましたね。何だったかな?」>

そんな問いの一つひとつに、すぐさま反応する子どもたち。田辺先生は、子どもたちがこれから触れるソフトを使い、それでどんなことができるのかを示しながら、同時にこれまでの活動を生き生きと振り返ることで、子どもたちのモチベーションを引き出していく。

「これからまとめていくアンケート結果は、米作りでお世話になった人に喜んでもらえるような、役立ててもらえるようなものになるようにしていくことにしましょう」

子どもたちは、早速自分の席に戻り、パソコンと向き合った。

プレゼンソフトを使って考えをまとめる

「新米まつり」の会場で行ったアンケートは全部で5問。それらはすでに集計され、前回の授業で『かいけつ表グラフ』を使ってグラフ化されている。
「プレゼンテーションソフトを使うのは初めてなので、先生がひな形を作ってきました。マイフォルダを開いて、それをコピーしてください」

プレゼンテーションソフトでまとめる作業へ

子どもたちは、『ジャストスマイル2@フレンド』に、一人ひとりの名前でログイン。各人の「マイフォルダ」に先生が用意してくれたひな形ファイルをコピーして、作業を開始した。  

「このひな形は、真っ白な背景に、これからみんなに作ってほしい項目だけが書いてあります。ここに、前回作ったグラフを貼ったり、それを見て気づいたこと、考えたことなどをどんどん書いていってください」

ひな形が無愛想とも思える白バックなのは、先生の配慮から。最初は装飾的な作業に気を取られずに、大切な中身に集中してほしいからという。

「背景の変更や吹き出しなどの機能については、授業の初めの見本で見せるようにしました。子どもたちがレポートの中身を作っていく過程で、その方法を見つけ出したり、教えあったりすることはありますが、その方法を最初にこちらから教えたりはしていません」

大切なことを見失わせない。プラスアルファの要素は、子どもたちの「気づき」に委ねる。田辺先生の指導方針は明確だ。