小学校の実践事例

「教科」にこだわったネットワーク活用による共同学習 
〜パンフレット作り・発表を通じた「相手」を意識した表現の実践〜
千葉県・小見川町立中央小学校/船橋市立行田東小学校

茨城県との県境に近い千葉県北東部に位置する、小見川町立中央小学校にお邪魔した。グループウェアを使ったグループ学習や、Webブラウザに対応したテレビ会議ソフトを利用した他校との遠隔共同授業など、先端的な実践を、あくまで国語という教科の枠組みにこだわって実践した取り組みをご紹介しよう。

教科の枠にこだわって

広大な霞ヶ浦を間近に控え、関東平野の雄大さを実感できる小見川町を訪ねたのは、12月はじめのこと。
2学期から取り組みはじめた、同じ千葉県の船橋市立行田東小学校との共同学習の締めくくりとなる「共同学習発表会」の当日だ。

5年3組の子どもたち

両校の5年生学級によるこの共同学習は、千葉県総合教育センターによる「情報機器を活用したわかる授業の実践」の研究として位置づけられており、指導主事の秋元大輔先生の仲立ちで、2校の共同学習の枠組み作りが進められた。

共同学習のテーマは「パンフレットで伝えよう」。2学級それぞれにいくつかのテーマを決め、それぞれをグループで担当。取材を経て「パンフレット」を制作し、担当のテーマについて、相手校の子どもたちに説明するというもの。

制作の過程では、グループウェア「つたわるねっと@フレンド」の学習掲示板を利用した学級内での相互評価を行い、作品を修正。さらに、千葉県総合教育センターが提供するインターネット上の掲示板に作品を掲示し、相手校の評価を受けてさらに修正を重ねてきた。取材当日はその締めくくりとして行われる発表会の日であった。

「パンフレットで伝えよう」は、5年生の国語の単元メニューでもあり、それを、コンピュータを使った表現と、ネットワークを活かした遠隔共同学習という要素によって、より《分かる》ものにしようという実践だ。

高橋進先生

情報機器を活用した実践というと、総合的な学習の時間があてられやすいという実状があるが、それをあえて国語という教科の枠内で行う理由を、高橋先生はこう話してくれた。

「確かに、裁量の余地が大きい総合的な学習の時間では、情報機器を活用しやすいのは確かです。しかし、道具としてのコンピュータは、もっと幅広い可能性を持っているはずです。それを総合的な学習の時間に閉じこめてしまうと、『コンピュータ=総合的な学習の時間のためのツール』といった意識が生まれてしまい、場合によっては利用の幅が逆に狭まってしまうように思うのです。ですから、総合的な学習の時間はもちろんのこと、各教科の中でも、しっかりそれを活用できることを示すことで、コンピュータを特別視せずに活かしていく意識が、教師の間にも広まっていくのではないかと考えています」

ネットワークを活かしたグループ活動

遠隔共同学習を実現する上で、この実践には、千葉県総合教育センターによるさまざまな支援が行われている。そのひとつが、交流掲示板の提供だ。

交流掲示板

この掲示板は、千葉県総合教育センターのサーバー上に置かれ、お互いの学級の作品についての相互評価に使われて共同学習の中心になっている。また、お互いの自己紹介や、趣味ごとに作ったグループの紹介なども投稿され、お互いの交流を深めるためにも大きな役割を果たしてきた。

2校間の交流にこの掲示板が活躍する一方、中央小の学級内でのグループ間相互学習に活かされているのが、「ジャストスマイル2@フレンド」に搭載されたグループウェアである「つたわるねっと@フレンド」だ。

制作途中のパンフレットは随時このグループウェア上で他のグループの評価を受ける。
「部活動の紹介で、○○部、○○部とつづいているのをなおしたほうがいい」
「1ページにつき、スペースが、あきすぎだよ」

指摘は具体的で、どんどんと改善に結びついていくものばかり。もちろん、他グループのパンフレットを見ることが、自分たちのパンフレットをよくしていくための「気づき」につながることも多い。

テレビ会議システムを介したこの日の発表会のような場は、頻繁に設けることができないだけに、こうしたグループウェアや掲示板での交流が、ネットワークを介した他者とのつきあい方を学ばせる上でも重要な役割を果たすことになるという。

つたわるねっと@フレンドで相互評価

「相手の立場に自分を置き換えて考えてみよう、と指導しています。批判ばかりされたら、誰でもイヤになってしまいます。相手の良いところをみつけ、しっかりと褒めた上で、ここをこうするともっといいよ、とか、褒めてもらったら『ありがとう』と言える習慣づけを大切にしているんです」と高橋先生。

一方、パンフレット作りにあたっては、国語という教科からそれないよう、写真や背景画像のみでなく、それらと組み合わされる見出しや文章に注目して、制作や評価をするようにという指導を行ったとのこと。道具に振り回されない、本当の表現力を育てるための配慮だ。