学校 DE デジカメ

第3回 「ズーム活用法」と「三脚撮影」
カメラマン&ライター/西尾琢郎

情報と
その背景

望遠−遠い

▲ズームレンズの望遠側と人力ズームの遠く側の組合せでは、写り込む背景がわずかになり、中心被写体のみが際立った表現になります。

広角−近い

▲ズームレンズの広角側と人力ズームの近く側を組み合わせて撮影すると、中心被写体の大きさを保ったまま、より広い背景を写し込むことができました。

カメラのズームと人力ズームを併用した場合の被写体と背景の写り方

▲カメラのズームと人力ズームを併用した場合の被写体と背景の写り方。主にカメラのズームで被写体と背景の大きさのバランスを取り、その上で人力ズームを使って中心被写体の大きさを調節すると、表現の意図に沿った写真が撮りやすくなります。

下の写真は、カメラのズームと人力ズームを組み合わせて、中心となる被写体の大きさを一定にしながら撮った写真です。カメラのズームを望遠にしたときには遠くから、広角にしたときには近くから撮ったわけです。

これらの写真を比べると、中心になる被写体の大きさがほぼ一定なのに対して、その背景の写り方が大きく違うことが分かるでしょう。(望遠.遠い)の組合せでは背景が大きく、狭い範囲のみ写っているのに対し、(広角.近い)の組合せでは、背景が小さく、より広い範囲が写っています。つまり、2種類のズームを組み合わせて使えば、中心の被写体とその背景の取り込み方を別々に調節できるのです(仕組みは右の図を参照)。

前回同様、これを情報の切り取り方として考えると、被写体(情報の主題)とその背景(周辺情報)の強弱や範囲を意識し、コントロールすることにつながります。その写真を通じ、ある事物について、それだけを詳しく伝えればよいのか、それとも、その事物がどういった状態・環境に置かれているかを一緒に伝える必要があるのか。デジカメのズーム機能ひとつが、そんな問題意識を持たせる授業につながっていきます。

▼活用のヒント

カメラのズームと人力ズームの組合せを理解するには、たとえばアイドルの写真集と、新聞などの人物写真を比べてみるとよいでしょう。写真集では、主役の人物のみを浮き立たせて表現するため、(望遠ー遠い)の組合せをよく使います。そのため、背景はシンプルに整理され、人物のみが強調されるのです。一方の報道写真では、現場の状況を伝えることに主眼があるため、(広角ー近い)の組合せで、背景の状況を広く写し込む写真が多く見られます。子どもたちと一緒に、こうした実例を見ながら情報の取り扱いについて考え、その上でデジカメの活用を行うと、学びが一層深まります。

デジカメ撮影のツボ
【三脚撮影】

デジカメの普及に比べて、写真撮影用の三脚がある学校はまだまだ少ないと思います。また、手軽に持ち歩いて撮影できるのが特長のデジカメを、わざわざ三脚に取り付けて撮影する意味があるのかという疑問もあるでしょう。

三脚を使う理由はいくつかあります。1つには、フラッシュの弱点が補えること。暗所撮影では、十分な光を取り入れるためにシャッタースピードが遅くなり、その間の手の動きが写真に記録されてしまいます。これが手ブレです。フラッシュは光を補ってシャッタースピードを速くし、手ブレを防ぐ効果がありますが、前回見たとおり弱点や弊害もあります。ところが三脚を使い、カメラをしっかり固定して撮影すれば、簡単に手ブレなしの写真が撮れるのです。動く被写体を撮る場合は、手ブレならぬ被写体ブレ(シャッターが開いている間に被写体が動いてしまうことによるブレ)が生じるため、ブレが完全になくなるわけではありませんが、暗所で静物や風景を撮るには三脚が非常に役立ちます。
  たとえば理科で、日の当たらないところに置いた植物の観察記録をデジカメで撮る場合など、カメラ位置を固定できる定点観測の効果と、ブレを気にせず撮影できる効果は大です。
  もう1点、デジカメを使った授業では写真を撮ること(=情報を切り取ること)がカメラを構えた子どもだけの作業になってしまいがちです。しかし三脚にカメラを据えると、グループなど数名の子どもたちが相談しながら構図やズーミング(情報の切り取り方)を決めていくことができます。学びを共有し、深めていくという視点からも、三脚撮影を活用してみてはいかがでしょうか。

※本文中の情報は、すべて取材時のものです。