新学習指導要領 〜教育新動向〜
全員が積極的に参加することで職員相互の学び合いを生む
〜ジャストスマイル3で教材づくり 〜和歌山大学教育学部附属小学校
そのまま使えそうな
質の高い教材も

2年生担任グループの発表。のめり込むような演出で、参加の先生方も思わず笑顔。
次は2年生担任の発表。英語活動におけるジャストスマイルの活用だ。マルチメディアボードには、タイトルでもある「What's it?」と言う文字と、モザイクで隠された写真らしきものが表示される。スマイルペイントで作られた教材だ。
「これは動物の写真です。何の動物か分かったところで手を挙げてください」
モザイクは徐々に細かくなり、だんだんと動物の姿が現れてくる。見ている先生方も本気だ。目を細めて見たり、首をかしげたり。
最初に手を挙げたのは山中先生。解答は「lion」。正解!
サルやキリン、ゾウやウサギなど、次々とモザイクで現れる動物の写真。クイズ形式ゆえに、子どもたちも熱中しそうな教材だ
。

3年生担任グループの教材。シンプルな中に深いねらいが潜んでいる。
さらに発表は続き、5年生担任のグループ。まずはグループの数だけ作った冊子が配られる。教材タイトルは「発表名人で沖縄名人」。その名が示す通り、はっぴょう名人を使った教材だ。教科は総合的な学習の時間。
「なるほどねっとを利用して沖縄について調べ、はっぴょう名人を使ってその成果をプレゼンする、という授業です。はっぴょう名人のデータを最終的に冊子にまとめることで、子どもたちの満足感も満たそうというねらいです」
インターネットから写真や文章を引用する際の注意など、著作権についても並行して学べそうな教材になっている。

6年生担任グループの発表。手にしているのはパラパラアニメの最初と最後のコマを印刷したもの。
最後に6年生担任のグループ。こちらはスマイルペイントを活用した教材で、タイトルは「パラパラアニメを作ろう♪」。教科は図工だ。
「場面の展開を思い浮かべながらアニメーションを作る授業です。まずは、あらかじめ作っておいた作品を見てください」
プロジェクターで映し出されたのは、種を植えるところから開花するまでを描いたパラパラアニメ。普段何気なく見ているアニメーションも、もともとはこうした簡単な仕組みから生み出されているということを、子どもたちは体験から知ることができる。また、紙に絵を描くのと違い、パソコンで描く場合は試行錯誤しやすく、作り直しが容易な点もポイントだ。




ねらいや活動の流れなどをまとめた模造紙。
付せん紙で
相互評価

付せん紙に感想・意見を記入し、模造紙に貼りつける。
それぞれが発表を終えたところで、付せん紙の出番。意見や感想、改善点などを付せん紙に書き込んで、次々と模造紙に貼り付けていく先生方。そうして貼られた付せん紙は、圧倒的に青い色のものが多い。
「自分の係との関連を考えながらイラストなどを選ぶことで、逆に係としての活動の幅を広げることにもつながる(1年生の教材に対して)」
「モザイクの他、ゆがみなどのバリエーションも使えそう!(2年生の教材に対して)」
「プリントアウトしてグループで共有できるところがよい(5年生の教材に対して)」
など、さまざまな声が記入されている。
全員が一通り書き終えて貼りつけ、お互いにその内容を確認したところで、今回の研修は幕となった。
「どれもきちんとねらいに則したものに仕上がっていたので、青い付せん紙が多かったのだと思います」と山中先生。
「すぐに使えそうな教材が多く、私自身も勉強になりました。もう少し時間があれば、相互評価を受けて振り返り、作り直すところまでやりたかったですね」と中井先生。
「今日の教材づくりを踏まえて、先生方からは早急に意見が上がってきそうです。『もっとこんな研修をやってみたい』とか『作った教材で授業をしてみたけれど、ここが失敗した』『ここはうまくいった』とか。子どもたちの知的好奇心をくすぐる教材を作ることがこの研修の目的です。が、参加された先生方の知的好奇心をも刺激することにつながっていたとしたら、研修主催者としてこれほどうれしいことはないですね」

中井章博(なかい・あきひろ)先生
6年C組担任、専門は理科。和歌山IT授業研究会、和歌山メディアリテラシ研究会などで情報教育を研究。共著書に『やればできるよIT活用ー子ども達の目が輝くIT授業をー』(高陵社書店)がある。

山中昭岳(やまなか・あきたか)先生
6年B組担任、専門は算数科。デジタル表現研究会「D-project」に参加。ICT機器を活かした実践に定評がある。著書に『インターネットのむこうに世界がある』(ポプラ社)。
かの藤堂高虎が築いたことで知られる和歌山城。そのそびえる虎伏山(とらふすやま)から続く丘の上に位置する附属小学校は、創立130年を超える歴史ある学校だ。校舎は緑に包まれ、子どもたちは豊かな環境でのびのびと学習に取り組んでいる。複式学級の設置により、異学年との共同学習も盛んだ。児童数730名。松浦善満(まつうら・よしみつ)校長。
取材/西尾真澄 撮影/西尾琢郎