外来語の使い方・外来語に対する意識
──外来語の使い方──
(1)年齢層・言語関心度別に解説

ここでは、質問項目を年齢層、言語関心度別に集計しながら見ていきます。

・年齢層別に集計するのは
言語の使い方の変化があったときに、それがそのあとの一時代の中で年齢差となって現れることがあります。
年齢層別の集計を見ることで言語変化がわかるというわけです。

・言語知識得点別に集計するのは
言語への関心が高い人がどのような言い方を使い、また、関心が低い人はどんな言い方を使うかがわかります。
一般に、言語関心度の高い人の回答は、規範的な(伝統的な、従来正しいと考えられてきた)回答が多くなることが予想されます。言語関心度が低い人の回答は、その反対で、現在の使用実態ないしこれから多くなる言い方に傾くことが多いです。
[1]カムチャツカ
[1] ロシア東部の半島の名前は何といいますか。
  1. カムチャッカ
  2. カムチャツカ
  3. その他

全体として、年齢差なくカムチャッカが多い結果になりました。
しかし、若干年齢差が見られ、70歳以上に(他の年齢層よりも)ややカムチャツカが多く、10代では(他の年齢層よりも)ややカムチャツカが少ない傾向があります。

カムチャツカ集計グラフ

言語関心度別に見ると、言語関心度の高い人は低い人よりもややカムチャツカが多いです。
ロシア語を学んだかどうかによる差もあり、学んだ人はカムチャツカの回答率が46%で、学んだことのない人の32%よりも多くなりました。 しかし、両者の差は14ポイントしかなく、言語関心度による差は、カムチャツカの回答率の最大43%と最小27%で16ポイントあるので、ロシア語の知識よりも言語への関心が高いほうが説明力が高いことになります。

このような分布からも明らかなように、カムチャツカが正しい形でありますが、戦前は(小さいャが使われずに)カムチヤツカと書かれ、広くカムチャッカと発音されるようになりました。誤読が一般化した例です。
言語関心度が高い人(言語知識が多い人)は、このような誤読の歴史も知っていてカムチャツカを選択した可能性があります。
「言語への関心」集計グラフ



[2] ウオツカ
[2] ロシア産が有名な強い酒は何といいますか。
  1. ウォッカ 
  2. ウオッカ 
  3. ウォツカ 
  4. ウオツカ 
  5. ウォトカ 
  6. ウオトカ 
  7. その他

ウォッカが全年齢で一番多く使われています。特に、若い人ではウォッカが8割以上を占め、高齢層ではウオッカという言い方も多いですが、年齢が下がるにつれて使われなくなる傾向があります。
つまり、ウオッカとウォッカが多かったのが、だんだんウォッカにまとまってきたということです。

ウォトカは70歳以上で1割程度の回答率で、60代でも9%ほどありますが、元々のロシア語の発音からは、これが一番近い言い方である。高齢層が正しい形を残しているというよりも、高齢層には言語への関心が高い人が多いことの反映でしょう。
ウオツカ集計グラフ

言語への関心度別に見ると、どのグループでもウォッカが70%以上、ウオッカが20%程度で、ほとんど差がありませんが、ウォトカは言語への関心の高い人でやや高い回答率になっています。
ロシア語を学んだ人では12%の人がウォトカを選んでおり、学んだことのない人の3%とはずいぶん違っています。
この語は、英語でも vodka と書かれるように、ウォツカがロシア語の発音に近いです。しかし、これまた戦前の仮名遣いの影響で、ウオツカと書かれ、ウオッカあるいはウォッカの誤読が一般化してしまったものです。

「言語への関心」集計グラフ

●ミニ知識●
今は、ウォツカよりもウォトカのほうが多くなっていますが、もともと子音だけのところの発音なので、日本語としては直前の母音を引きずってトで表すことも不自然ではありません。
類例としては「トロッコ」の「コ」や「インキ」の「キ」などがあります。
現代の外来語では、直前の母音の影響を考えずに、「ク」で表すので、それぞれ「トラック」や「インク」となりますが、昔の外来語では取り入れるときのルールが違っていました。ウォトカは、そういう古い時代の外来語取り入れルールを反映した形といえます。

言語への関心が高い人(言語知識が多い人)は、ウオツカの各語形をめぐるこのような事情を知った上でウォトカを回答したようです。




[3] アタッシュケース
[3] 書類などを入れる角型の手提げかばんのことを何といいますか。
  1. アタッシュケース
  2. アタッシェケース
  3. アタシュケース
  4. アタシェケース
  5. その他 
どの年代でもアタッシュケースが約85%を占めて多くなっています。次がアタッシェケースで十数%です。
この項目では年齢差があるかもしれないと予想していましたが、そうではありませんでした。
アタッシュケース集計グラフ

言語関心度別では、若干の差が見られ、言語への関心が高い人では、ややアタッシェケースが増えます。
もともとはフランス語ですが、フランス語を学んだかどうかで区分して集計しても、差ははっきりしません。

「言語への関心」集計グラフ
●ミニ知識●
この語が日本語に入ってきたときに、フランス語から直接入ったとは断定しにくく、英語経由であると考えたほうがよさそうです。
フランス語では attache【eの上にアクサンが付く】で、アタシェと発音しますが、アタッシェケースがアメリカのビジネスマンに愛用されるようになって、英語に入り、英語文脈では(アクサンを無視した発音で)アタッシュケースという発音もなされるようになり、それが日本語に入ってきたと考えられます。今の日本でアタッシュケースというのが多数であるということから、フランス語から日本語に入ったというよりも英語から日本語に入ったと考える方が妥当だろうと思われます。

言語への関心が高い人(言語知識が多い人)は、フランス語語源意識があってアタッシェケースがやや多いのではないでしょうか。



[4] コンシェルジュ
[4] ホテルなどの案内係のことを何といいますか。
  1. コンシエルジュ
  2. コンシエルジェ
  3. コンシェルジュ
  4. コンシェルジェ
  5. コンセルジュ
  6. コンセルジェ
  7. その他 
どの年代でも、コンシェルジュが一番多く、コンシェルジェがそれに次ぐというのは変わりません。
コンシェルジュ集計グラフ
言語関心度別でも差が見られないので、この項目では、規範的な言い方というものはなく、それぞれの言い方が併存している(つまり、たんなる「ゆれ」である)ということになります。

「言語への関心」集計グラフ
もともとはフランス語ですが、フランス語を学んだかどうかでも差が出ません。
原語のスペルは、concierge ですが、その発音はコンシェルジュが近いです。なぜ日本語にコンシェルジェという言い方があるのかわかりません。フランス語の誤読かもしれません。



[5] シャンパン
[5]フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワインのことを何と言いますか。
  1. シャンパン
  2. シャンペン
  3. シャンペイン
  4. その他
シャンパンが80%、シャンペンが20%弱であり、年代差も言語関心度の差もありませんでした。

シャンパン集計グラフ
もともとはフランス語ですが、フランス語を学んだかどうかでも差が出ません。

「言語への関心」集計グラフ

●ミニ知識●
言語のスペルは champagne であり、フランス語としてはシャンパンが近いです。これが英語に入り、発音はシャンペインとなります。外来語のシャンペンは英語から来た形、シャンパンはフランス語から来た形です。
シャンパンは、フランスの製品なので、フランス語式の発音のほうが受け入れられやすいのでしょうか。



[6] カフェオレ
[6] ミルク入りのコーヒーを何といいますか。
  1. カフェオレ
  2. カフェラテ
  3. ミルクコーヒー
  4. コーヒーミルク
  5. その他

どの年代でも、カフェオレが7割を占め、一番多くなっています。
よく見ると年齢差があり、ミルクコーヒーは20代から40代に少なく、10代と50代以上に多くなっています。
50代、60代、70以上は、この順にミルクコーヒーの比率が高くなっているので、ミルクコーヒーが古い言い方であることがわかります。10代にミルクコーヒーが多い理由はわかりませんが、10代の若者がフランス語のカフェオレもイタリア語のカフェラテも知らないとすれば、意味がわかるものとして消極的にミルクコーヒーを選んだ可能性があるでしょう。

カフェラテは40代から30代、20代と若くなるにつれてだんだん多くなっている言い方です。ということは新しい言い方だということです。カフェオレ全盛の中で、次の新しい言い方が着実に増え始めたといえます。

カフェオレ集計グラフ

この項目では、ミルクコーヒー→カフェオレ→カフェラテという3段階の変化が起こっています。
第1段階のミルクコーヒーは高齢層に残っているだけで、現在は第2段階のカフェオレの全盛時代であり、第3段階のカフェラテが芽を出し始めたところというわけです。

この項目は言語得点による差がなく、また(カフェオレの使用と)フランス語を学んだかどうかも関係がありませんでした。
「言語への関心」集計グラフ



[7] キューピッド
[7] 背中に小さな翼の生えた愛の神のことを何といいますか。
  1. キューピッド
  2. キューピット
  3. クピド
  4. その他
キューピットが一番多く、各年代とも6割程度を占め、キューピッドがそれに次ぎ、3〜4割を占めています。年代差は見られません。

キューピッド集計グラフ

言語への関心度による差はかなりはっきり見られ、言語への関心の低い人はキューピットが多数ですが、言語への関心が高い人はキューピットとキューピッドが半々ずつ使われています。

「言語への関心」集計グラフ

●ミニ知識●
英語の原語のスペルは cupid であるから、キューピッドが正しい(本来の)言い方です。
しかし、日本語では、促音(小さい「ッ」)の後ろに有声音が来ることはないので、日本語の話し手は「ッド」の発音がしにくく、発音を変えてしまう(有声音を無声音にする)例が知られています。
ベッドがベットに、バッグがバックになっているのはこの例です。

キューピッドの場合も、同じ理由でキューピットという言い方が一般化したものでしょう。



[8] テトラポッド
[8] 四本足のコンクリート製の防波用ブロックを何といいますか。
  1. テトラポッド
  2. テトラポット
  3. その他
キューピッド/キューピットと結果が似ています。
テトラポットが一番多く、各年代とも6〜7割程度を占め、テトラポッドが3割程度を占めています。年代差ははっきりしておらず、高齢者になるほどテトラポットの比率がやや高くなるように見えますが、確実ではありません。
テトラポッド集計グラフ

言語への関心による差はかなりはっきり見られ、関心が少ない人はテトラポットが多数ですが、関心が高い人はテトラポッドとテトラポットの比率が近づいています。

「言語への関心」集計グラフ
テトラポッドとキューピッドのクロス表を作ってみると、テトラポッドを回答した人はキューピッドが多く、テトラポットと回答した人はキューピットが多いことがわかります。
キューピッドと同様の事情でテトラポットという言い方が広まっているものといえます。
●ミニ知識●
テトラポッドは商標名であり、ギリシア語でテトラは「4」、ポッドは「足」の意味です。したがって「テトラポッド」が正しい言い方です。

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update:2005.8.23