小学校の実践事例

他地域・同学年との交流でコミュニケーション能力を育む
〜学校現場と市教委との連携による高度なICT活用授業〜
北海道・登別市立登別温泉小学校

少人数ならではの
メリットを生かす

児童一人ひとりを丁寧にフォローする黒坂先生

児童一人ひとりを丁寧にフォローする黒坂先生。「本当は30人ぐらいいた方が、子どもたちにとってはラクなんじゃないかと思うんですよ。7人じゃ授業中も気が抜けないですからね(笑)」

作業を進められる子どもは、どんどん先へと進める。問い合わせを終えた子どもから順に、プレゼンテーションシート作り開始。「はっぴょう名人」を立ち上げ、フォームを選び、見出しの文字や色を自分好みにカスタマイズしていく作業は手慣れたものだ。

その一方で、インターネットでの調べ学習で足踏みしている子どももいる。

そんなときこそ少人数学級のメリット発揮だ。黒坂先生は一人ひとりの進み具合を見て回り、手助けを必要としている子や、つまずいている子に手を差しのべる。検索のコツや質問項目の整理の仕方など、具体的なアドバイスを授ける。

先頭を走る子どもも、最後尾を追走する子どもも、誰もがやる気をそがないよう丁寧にフォローする黒坂先生の姿が、随所で見て取れた。

学校現場と市教委との
連携が生み出す活力

取り組みの流れ

それぞれがまとめの作業を進めたところで、この日の授業は終了。実際の交流学習は1カ月ほど後。NTT東日本社のWEB会議システム「グローバルドア」を用いて行うこととなる。

児童数が少なく、複式校である温泉小。その温泉小において、なにゆえこのように先進的な情報機器活用が行われているのだろうか。
「登別市は、ICT活用が進んでいる土地柄なんです」とは西校長先生の弁。

実際、登別市は道内でも指折りの情報化先進都市だという。校長室の壁にも、 「ITのマチづくり進む登別市」「イントラネット整備の効果着々」といった見出しの新聞記事が掲示されている。

放課後、黒坂先生とともに、市教委の北尾先生にもお話を伺う機会を得た。
「当校でこうした先進的な試みができるのは、市教委の先生の力によるところが大きいんです」と黒坂先生。
「こちらに赴任したのは6年前ですが、当時から、北尾先生にはいろいろと教えていただいていました。『こういう授業がやりたい』と言えば、その方法について一緒に考えてくださいますし、セキュリティ的に難しい要求にも、別方向からのアプローチで解決してくださるんです」

対する北尾先生はこう語る。
「私も教員でしたから、ソフトウェアやネットワークの、どこがどんな風に使いづらいかよく分かっていました。ですから、それを使いやすいように変えていくことで、現場の先生方にも『もっと活用したい』『こんな授業に使えないだろうか』と思っていただけるようになったのではないかと思います。現場の声を吸い上げて、さらにいいものにしていく。我々市教委と現場の先生方との連携がうまくいっているからこそできることです」

 

黒坂先生 北尾先生 西校長先生

黒坂俊介
(くろさか・しゅんすけ)先生


温泉小6年生担任。「1学年で班1つ程度の人数ですし、幼稚園からずっと一緒で、授業中もどうしてもなれ合いになりがち。発表などでも、多少失敗しても許されるという空気があります。交流学習ではいい意味での緊張感が生まれますね」

北尾 稔
(きたお・みのる)先生


登別市教育委員会教育部教育指導室学校教育グループ、教育情報センター・主事。「パソコンなど情報機器を校務で使う分には先生方のスキルもだいぶ上がってきていますが、それをいかに授業に反映させるかが課題ですね」

西 正志
(にし・まさし)校長先生


「大規模校のデメリットすべてが小規模校のメリットです。少人数であることが子どもたちの負担にならないよう、一人ひとりの声に耳を傾けて、小さな声でも聞き逃さないよう、先生方にはきめ細やかな配慮をお願いしています」

 

◆北海道登別市立登別温泉小学校

アイヌ語の「ヌプルペッ(=白く濁った川)」が語源とされる登別。その由来通り、川の色が変わるほどの湯で有名な登別温泉は、1日1万トンの自然湧出量と、11種類もの泉質を誇る。湯の香漂よい白く煙る温泉街を抜け、急坂を上った先に立つ温泉小の校庭には、登別のシンボルでもある鬼の像が鎮座している。2・3年生と4・5年生は複式。西 正志(にし・まさし)校長。

取材/西尾真澄 撮影/西尾琢郎
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。