小学校の実践事例

他地域・同学年との交流でコミュニケーション能力を育む
〜学校現場と市教委との連携による高度なICT活用授業〜
北海道・登別市立登別温泉小学校

登別温泉小学校児童数30人。うち6年生は7人。30人学級であれば簡単に体験できるようなことも、この人数では難しい。しかし、この規模だからこそ気軽に取り組めることもある。少人数ならではのメリットを生かし、交流学習に取り組んでいる北海道登別市立登別温泉小学校に伺い、遠く離れた鹿児島の小学校と交流するべく準備にいそしむ子どもたちを取材した。

少人数でも
最大限の出会いを

中央に配された机が特徴的なパソコン室にて行われている授業

中央に配された机が特徴的なパソコン室。先生の話を聞くときや意見を述べ合うときにはこうして真ん中に集い、個々で作業するときには椅子ごと移動して周囲に配されたパソコンに向かう。

「少人数学級の子どもたちにも、コミュニケーション能力をつけさせたい。それが交流学習を始めたきっかけです」
6年生担任、黒坂先生はそう語る。授業は総合的な学習の時間。

この単元は、函館について調べることから始まった。函館の歴史や食べ物、観光などについて調べ、まとめ、発表し、そこからさらに函館(箱館)戦争について詳しく調べることへと発展。その中で、子どもたちは函館と鹿児島とのつながりに気づいていったという。
「鹿児島の小学校とは、昨年度、トマトの栽培を通じて交流を行いました。2学期の初めに種をまいて育てたのですが、こちらではあっと言う間に寒くなって実などならなかったのに、鹿児島ではちゃんと実がなって収穫できた。北と南の寒暖の差というものを、子どもたちは肌で感じることができたようです」

交流学習の相手は、先生方のメーリングリストで探し当てた。もともと交流学習を推進していた西校長先生からも、すぐにOKが出たという。

単元の最終的な目標は、北海道と鹿児島とをつなぐ人物について、北海道、鹿児島の子どもたちがそれぞれの地域・立場で調べ、まとめ、TV電話で発表し、交流するというもの。我々が取材に訪れた際には、子どもたちは調べ学習の真っ最中だった。

必要に応じた
情報モラル学習

児童から「メールを使いたい」という要望があって初めて、メールの特製や使う際に気をつけなければならないことを学ばせる

児童から「メールを使いたい」と言う要望があって初めて、メールの特性や使う際に気をつけなければならないことなどを学ばせる。まずは印刷物を使って子どもたちに考えさせ(下)、それからプロジェクタを用い、説明していく(上)。

授業はまず、メールについて、その特性をきちんと理解しようという情報モラル教育から入った。これは、調べ学習の中で、資料館や博物館などの人にメールで問い合わせたい、と子どもたちから声が上がったためだ。
「メールのよいところ」「例文のメールが言いたいことは?」など、ワークシートの質問に答えながら、メールをどうすれば楽しく有効に使えるかということを学ぶ子どもたち。黒坂先生はプロジェクタも併用して授業を進める。プロジェクタの使用は特別なことではなく、普段から自然に行っていることであり、子どもたちも構えることがない。

モラル教育の後は、問い合わせる内容についてのまとめ。パソコンの前へと移動し、事前に紙にメモしておいた内容をワープロソフトでまとめ、印刷する作業だ。子どもたちが向き合うパソコンには、黒田清隆や村橋久成といった、鹿児島出身でありながら、北海道へ渡って活躍した人物の名前が躍る。

まとめ終えた子どもから、新規に導入したばかりというリコーのジェルジェットプリンターで印刷。子どもの口からは思わず「うわ! 速い!」「すっごいね!」と漏れる。思考を邪魔しない速度で授業もスムーズに流れる。

印刷したものを先生に確認してもらい、どんな手段で問い合わせるかを選択。電話で問い合わせたいという女の子に同行し、我々も職員室へと移動した。

メディアの特性を
理解する

質問事項を印刷し、職員室に電話をかけにいく

質問事項を印刷し、先生に確認してもらって(上)から、職員室へ電話をかけにいく(下)。公共施設など、月曜定休のところは意外と多いので注意したい。

机の上にも図書館で借りた本がどっさり

調べ学習というと、子どもたちはすぐにインターネットで調べたがるという。しかし、インターネットだけでは子どもたちが同じ情報に行き着いてしまうこともしょっちゅう。また、簡単にコピーできてしまうため、本当の意味では身に付かないこともある。本を読んだり、地域の人に聞くなどして、体を使って調べ、得た情報を十分に消化して、自分の言葉でまとめることが大事と黒坂先生。机の上にも、図書館で借りた本がどっさり。

「ドキドキする〜!」
胸に手を当てて緊張気味の児童。印刷した質問項目を見返しながら、職員室の電話を借りて早速電話をかける。が、残念ながらこの日は、問い合わせ先の施設が休業。

しかし、黒坂先生は慌てることなく児童に問う。
「それじゃあ、メールにしようか。それともファクスで問い合わせる?」

メールで問い合わせることを選択した児童は、パソコン室へ戻り、早速メールソフトを立ち上げる。ワープロソフトから質問事項をコピー&ペーストし、体裁を整えるその横で、黒坂先生が再度問う。
「今日はメールで問い合わせることにするけれど、それだけでいいかな?」

メールを送っても、すぐに読んでもらえるとは限らない。こちらの一所懸命な気持ちが、必ずしも相手に伝わっているとは限らない。プロジェクタに映し出されたメールの特性を再確認する児童。
「明日、返信が来ていなかったら、改めて電話で問い合わせようと思います」

授業の初めに得た知識が、体験の中で生きた言葉となった。