小学校の実践事例

学習の目的を自ら考えることで作品に対する責任感を育てる 
『はっぴょう名人』で制作したポスターで、運動会を盛り上げる〜
鹿児島大学教育学部附属小学校

プリントアウトしたら次は見直し 意見を出し合って レベルアップを目指す

体より大きなポスターができた!

いよいよ完成。今回制作したポスターは、大きくプリントして校内の掲示板に貼り出される。エプソンの大判プリンタ、マックスアート『PM-7000C』の前では、子どもたちが、自分の作品がプリントアウトされるのをじっと見つめている。少しずつ姿を現すA1サイズのポスターを前に、次第に笑顔になってきた。

「すごいね。きれいだね」「見せて!見せて!」「私も早く完成させて、大きくプリントしたい」と、みんな興奮気味だ。

何人かの作品がプリントされたところで、ホワイトボードに掲示した橋元先生は、「今日は最初に“今日のめあて”をあげてポスターを作りました。でも、これで終わりじゃないよね。大事なのは見直しをすることです」と、授業のまとめに入った。

女の子が手をあげて、「人から意見をもらったら、もっといいものができると思います」と発言した。
自分では気づかないことも、ほかの人の意見を取り入れることで、さらにいい作品ができるということを、子どもたちは理解しているのだ。これは、作品を互いに見せ合って、意見を交換し合う場を設けるようにしているという、日々の授業の成果だろう。

「さあ、プリントしたものを見直して、周りの人と意見を交換してください」橋元先生が声をかけると、「このスペースにイラストを入れたらいいね」「時間が間違ってた」「タイトルはもっと大きくした方が見やすいよ」と、子どもたちはお互いにポスターを見せ合い、意見を出し合っていた。まもなく完成するポスターは、校舎を彩り、運動会を盛り上げてくれることだろう。

パソコンを活用した授業 人とのふれあいが大きなテーマ

橋元先生が授業を通じて教えたいのは“人とのふれあい”だという。その一環として、今日の授業ではより良い情報を分かりやすく伝えるというテーマを設けた。これは、ポスターを見る人の立場で考えるということだ。

「いいかい、ここはね…」

また、鹿児島大学教育学部附属小学校では、6年次にホームページを制作する。そこで、子どもたちは6年間の情報教育のまとめとして、“世界に向けて発信する自分の表現に対して責任を持つ”ことを学ぶ。

橋元先生は、「見る人が嫌な思いをするような言葉を使っていないか、著作権に触れていないか、プライバシーを侵害していないか、ということを考えるためには、ホームページの向こうに相手がいるということを認識させる必要があります。相手意識を持ったときに初めて、自分の発信するものに対して責任感が生まれるのではないでしょうか」と語る。

ネットワークの普及に伴い発生するさまざまな問題を解決するためにも、小学校段階からの意識付けが重要なのだ。

さらに、「今の時代に欠けているといわれる、人の迷惑になる行いをしない、人を傷つける言葉は使わないなどの他者意識。これを持つことで、子どもたちが生きていく力を身に付けることができるよう、私たち教師が導いてあげるべきだと思います」と、意欲的だ。

こうした熱意がベースとなっていたポスター制作。子どもたちは情報化社会を生き抜くための力を、確実に身に付けているようだ。

先生たちを対象とした 校内パソコン研修の取り組み

運動会がんばるぞ! オー!

鹿児島大学教育学部附属小学校では、橋元先生が中心となって、先生たちのパソコン研修を実施している。

“子どもたちが授業で使用するソフトを使いこなせるか”“ネットワークの活用が十分にできるか”を中心に、表計算やプレゼンソフトの使い方など、実技がメイン。夏休みなどを利用して先生たちがパソコンに向かい、橋元先生が作成した資料をもとに研修を行っている。

また、ホームページ作成が必修科目になっている。各教科の研修室ごとに、研究内容や先生たちの自己紹介などを掲載。レイアウトやデザインも各先生たちが担当し、学校のホームページで公開している。

「パソコンを授業で活用するには、子どもたちがどんなソフトを使用しているのかを、より深く理解することが大切です。そうすることで、初めてアイデアが生まれると思います。また、情報や調べ学習以外の国語や算数などの教科において、どのようにパソコンを活かしていくかが大きな課題」

と橋元先生。今後は、授業に有効なデジタルコンテンツの研究にも力を入れるとのことだ。

◆鹿児島大学教育学部附属小学校

中庭にはソテツやフェニックスが茂り、鹿児島らしい南国ムードが漂う。教育を研究する立場から、複式学級も設置している。コンピュータ室のほか、各教室にもパソコンを設置。児童数996名。

取材・文/マロニー 撮影/片桐圭
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。