分析事例:販売/在庫

【 事例紹介 】業界別!BIツールで見るべきデータと活用方法とは<流通・小売、通信・ソフトウェア、総合商社 業界編>

BI導入前に知っておきたい「分析手法の種類」

「データドリブン」や「データベースマーケティング」といった言葉が普通に使われることでわかるように、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを用いた「データ分析に基づくマーケティング手法」が多くの企業で取り入れられるようになってきました。

ただ、データ分析と一言で言っても、具体的にチェックするデータや分析手法は様々です。予実分析、ABC分析、構成比分析など、どんな業界でもよく使われる分析手法以外に、業界や職種によっても重要視すべきデータは異なっています。

たとえば、業務改善に強みをもつ製造業では、「不良率」「一人あたりの生産数」などのデータを分析し、生産性の向上に役立てています。

飲食店や外食などのサービス業の場合には、「回転率」「滞在時間」などPOSデータから得られる顧客ごとのデータをBIで分析し、日々の売上を拡大するための施策を展開しています。

このように、業界ごとに意識して確認すべきデータは大きく異なります。そこで今回は、以下の3つの業界でのBIを活用したデータ分析手法をお伝えいたします。ぜひ参考にしてみてください。

1. 流通・小売業界でのデータ分析手法

最初にご紹介するのは、コンビニやアパレルショップなど「流通・小売業界」での分析手法です。近年では業界全体がECモールや自社ECサイト経由による販売数を伸ばしていますが、リアルな店舗販売もまだまだ重要な販売チャネルです。

今回は流通・小売業界での店舗の売上管理方法や顧客データを分析し、顧客LTV(※)を高めるための分析手法をご紹介いたします。

※LTV=Life Time Value=顧客生涯価値=1人(1社)の顧客が生涯を通じて自社にもたらす利益のこと。顧客LTV=平均購入単価×購入頻度×購入期間

まずは基本的な分析として店舗全体の数字と、店舗ごとの予実や前年比の数字を確認します。上記の画面で各店舗の販売予算の達成状況を確認し、好調な店舗と不調な店舗をチェックしておきます。全体を俯瞰して、さらに詳しく調べるべき課題を探るイメージです。

全体の状況を把握したあとには、ドリルアップ(階層を上げ、データを集約して表示)して、店舗の「エリア別」「タイプ別」のデータもみていきます。

事前に登録を行っておけば、エリアや店舗タイプといったカテゴリごとの数字も把握できるため、店舗ごとの数字だけではわからなかった好不調の理由や、市場の傾向など別の視点から推測できます。ドリルアップでカテゴリ別の傾向をみたあとには、再びドリルダウンして店舗ごとの数字をみることで、より数字の背景を掴みやすくなります。

たとえば都心店舗が不調で郊外店舗が好調の場合、原因は場所なのか、商品構成なのか、特定のスタッフなのか、といったことを調べるきっかけになります。店舗タイプで、ファッションビル内店舗や駅前店舗が好調で、ロードサイド店舗が不調の場合、原因は天気かもしれない、ガソリン代の高騰かもしれない、連休が影響している可能性もある、と原因を探っていきやすくなります。原因がわかれば、雨の日セールを行うなり、ロードサイド店の在庫を都心店に回すなり、具体的に改善に向けたアクションを行うことができます。

次は流通・小売業界で多く用いられる分析手法の一つである「クロスセル分析」をご紹介します。

【クロスセル分析】

●「クロスセル分析」とは?

データマイニングによる分析手法の一つです。販売記録から、ある商品と組み合わせて購入(クロスセル)されることの多い商品を分析するものになります。小売店であれば、分析をもとにそれらの商品を並べて陳列したり、営業であればサポートサービスとのセット販売比率などを求めるためにも利用されます。マクドナルドの「ご一緒にポテトはいかがですか?」というあのトークがまさにクロスセル営業トークの代表例と言えます。

実際にBIツールを用いて「クロスセル分析」を行っている"アパレルショップ"の例をみてみましょう。

上記の画面で、急に販売が伸びている商品の組み合わせがあるとすれば、それらのアパレルが含まれたコーディネートがインスタで紹介されたのかもしれません。その組み合わせを売るのが上手いスタッフが存在するのかもしれません。実際の販売データを確認することで、店舗スタッフの感覚ではなく、データに基づいた仮説を立てることができます。

もちろんBIツールだけに頼る必要ありません。BIツールで得たデータをもとに、エリアマネージャや店長、スタッフに問い合わせたり、クロスセルの組み合わせを提案してもいいでしょう。

そうして様々な情報をベースに、クロスセルの組み合わせや、クロスセルを推進しやすくするためのキャンペーンやセールの価格設定などの戦略を練ります。BIツールであれば、POSとの連携で各スタッフの販売状況を一覧で確認することができるため、クロスセルが得意なスタッフにノウハウを教えてもらったり、マニュアルを作ってもらったりという使い方もできます。

次にご紹介する「ポートフォリオ分析」も流通・小売業界では、よく活用されています。これは、自社の商品構成を考える際、それぞれの商品のポジショニングを把握するために欠かせない分析手法です。

【ポートフォリオ分析】

●ポートフォリオ分析とは?

重要な2つの指標を軸に、2次元グラフを作成することにより、グラフ内のエリアによって製品・サービスを分類する分析手法です。顧客満足度調査の結果から重点的改善項目を抽出する分析によく用いられます。市場成長率を縦軸、市場占有率を横軸に、エリアを上下左右に4分割し、自社商品を花形、金のなる木、負け犬、問題児の4グループに分類する経営分析手法も広く使われています。

ポートフォリオ分析は、流通・小売業界で店舗別の業績を比価する際にもよく使われます。
ここで再び、"アパレルショップ"を例に活用方法をみていきましょう。

上図では、全体の売上に対して一人の顧客が購入する価格帯と伸び率を確認することができます。顧客数が安定して伸びている場合には、一度の購入単価を引き上げることで店舗売上を伸ばすことができます。

購入単価を引き上げるために先ほどのクロスセル分析などの購入データを用いて、購入単価が高い顧客にはどういった組み合わせで商品を販売しているのか?などの分析を行い、店舗での展示レイアウトや販売員の接客トークなどに反映していくなどの施策を展開していきます。

最後にご紹介するのは、前述の顧客LTVを測るための分析指標「RFM(顧客)分析」です。

【RFM(顧客)分析】

●RFM(顧客)分析とは?

Recency(最新購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の頭文字を取った分析手法です。企業は一般的にRFMの3つの要素を独自の設定でウェイト付けします。どの要素を重視するかが企業によって違うからです。

RFM分析は流通や小売業界では特に重視されます。ポイントカードやアプリなどは再来店を促すためだけでなく、RFM分析を行うための顧客情報を得るために実施している企業も多くいます。

上記の表は、売上金額や平均単価、最高購入金額など、金額にかかるデータが多く表示されています。どんなデータを表示するかは、その企業が「どのデータを重視しているか」によって異なります。

たとえばコンビニやスーパーのように低単価の商品を高頻度で購入する顧客が多い業態では、購入頻度を高く評価する企業が多くなります。これは自店への顧客ロイヤリティが高いことを意味するからです。

一方、ブランド店やセレクトショップやブティックショップのような高単価の商品を販売する業態では、来店頻度よりも購入単価を重視するのが一般的です。このように、RFMのウェイト付けをし、その合計点(RFM評価点)によって顧客にランク付けし、RFMを高めるべく販促施策が行われます。

たとえば、購入単価が高い顧客に対しては、買上間隔月を短くする(購入頻度を高める)目的で、メルマガやDM送付、特別キャンペーンオファーなどの来店促進を図ります。反対に、買上間隔月が短い顧客に対しては、購入単価を上げるために、平均単価が高い商品の提案や複数商品のセット提案を行うなど、顧客の購買行動に応じてアプローチを変更します。

BIツールでは、重要な情報がどれかということが決まれば、それをダッシュボードやチェック画面に反映させることができます。たとえば、購入頻度を高めるためには、来店頻度を高める必要があるという方針が決まれば、来店頻度のデータをシートへ加えるといったことが簡単に行えます。

BIツールを自在に活用することで、そんなOne to Oneマーケティングが実現できるのです。

次にご紹介するのは、通信・ソフトウェア業界での分析手法です。同業界では月額課金モデルの企業も多いことから、顧客ごと、または販売代理店ごとの解約率、クロスセルデータの分析を行っている企業が多くいます。

2. 通信・ソフトウェア業界でのデータ分析手法

通信業界では、インターネット接続、データ接続など、月額課金(サブスクリプションモデル)が一般的です。一方、ソフトウェア業界はもともとパッケージ販売で売り切り型の販売が主流でしたが、WEBサービスのスタートアップ企業が、無料(お試し)会員→気に入ったら→有料月額課金会員へ、という収益モデルを業界に持ち込み、今やマイクロソフトの業務用ソフトウェアセット「Office」でさえパッケージ販売から、月額課金へと大きく課金モデルが変更してきています。

今回は通信キャリアを例に現場でデータがどう活用されているのかをみていきます。

【解約率分析】

月額定額課金のサブスクリプションモデルで重視されるのは、「新規加入数(純増数)」「解約率」「継続率」です。前述の顧客LTVの公式で考えると、購入単価は月額固定料金、購入頻度は月1回でほぼ固定のため、変化するのは購入期間のみです。そのため、解約せずに継続し続けてもらうことが重要な指標になっています。そのために重視されているのが、「解約率分析」です。

●解約率分析とは?

顧客のうち解約者の率をデータ化してみていく分析手法が「解約率分析」です。顧客ごと、または販売代理店ごとの解約率を対象に、競合を含めて経年で推移をみていく場合が多いです。

上の表は、担当エリアの販売代理店が契約した回線に対する解約率の推移を確認するための画面です。契約者の純増数(増加数ー解約者数)の推移と併せてチェックされることが多いデータです。

このデータをもとに、戦略立案のための思考を深めていきます。たとえば、販売代理店C社とG社でなぜこれだけ解約率が違うのか、純増数と解約率は連動しているのか、解約率の数字の上下は他の何と関連性が高いのか、それは販促費か新規契約者数か競合の純増数かなどの仮説を立てることができます。各種データが集積されたBIツールは、それらの疑問に数字で答えを出すことができます。

そして、一定期間の解約率が平均よりも極端に高い場合には販売代理店に対しては契約の見直しや販売時の説明事項の改善などの対策を行うなど、データをもとに解決策を提示することができます。

前述の流通・小売業界でご紹介した「クロスセル分析」は、通信・ソフトウェア業界でも重要な分析手法として用いられています。

通信キャリアでは、通信回線契約(いわゆる基本料金)だけでなく、オプションサービスやサポートサービス、自社アプリなどの付加サービスの収入が大きな収益源となっているため、クロスセル分析は重要な分析手法に位置づけられています。

オプションサービスを付加する目的としては、契約者の顧客単価を上げることによる収益向上に加え、複数のオプションサービスに加入している場合には解約率を引き下げる効果も期待されます。

たとえば、通信回線を契約したお客さまに対してタブレットとサポートサービス、自社の動画アプリを付加し、継続利用しやすい環境を作ることですぐに解約しづらい状況をつくりあげます。

一時期、通信キャリアは通信以外の他業種企業を買収し、多角化を進めようとしていました。たとえば、NTTドコモは2012年に「らでぃしゅぼーや」(有機・低農薬野菜、無添加食品の販売会社)を、2013年には「ABCクッキングスタジオ」(料理教室チェーン)買収して話題となりました。しかし、現状ではこうした事業が収益の柱になっているとは言えず、これからもクロスセルによる付加サービス契約は収益の柱であることは変わりないでしょう。

3.総合商社業界でのデータ分析手法

最後にご紹介するのは、総合商社業界でのデータ分析手法です。

今回は海外から石油を輸入し、サービスステーション(ガソリンスタンド)に卸売を行う、総合商社エネルギー部門を例にBIツールの活用事例をご紹介します。

販売状況をもとに輸入量の需要予測や、購入金額を決定するため、「販売分析」「エリア分析」などを正確に把握しておくことが重要です。それでは早速、販売分析からみていきましょう。

【販売分析】

●販売分析とは?

商品やサービスの販売実績データを分析することです。通常、商品別の販売数量・販売金額、支店や営業スタッフごとの販売数量・金額、顧客ごとの販売数量・金額など、様々なデータを駆使して分析を進めていきます。

上図の画面では、石油の卸先であるサービスステーションごとの販売数量や販売金額を確認しています。詳細画面では、各ステーションごとの売上利益率なども確認できるように設定されています。消費者に販売するガソリンの末端価格の趨勢を知ることができるデータです。個店ごとの違いや規模での違い、タイプの違いなどを確認できます。

サービスステーションは実は様々なタイプの店舗があります。セルフサービスとフルサービスというサービス形態での違い、コンビニ併設・整備や車検併設・レンタカー併設などの周辺サービスでの違いなど、収益構造が違います。タイプによってガソリン価格もまた変わって来ます。どんなタイプの店舗が好調なのかを継続的に把握しておくことが重要になります。

【エリア分析】

サービスステーションに限りませんが、販売対象店舗が数多くあり、地域も散らばっている場合、「エリア分析」も重要な分析手法です。

●エリア分析とは?

地図上に点を表示して分析を進めていく「エリア分析」は、「商圏分析」とも呼ばれ、特に流通や小売、サービス業界で重視される分析手法です。それぞれの店舗の状況をみることで、エリアごとの現在の景気状況を判断できます。商品を配送するための物流手配の判断材料にもなります。

石油卸商社では、エリアごとの販売金額を重視しているようです。実際に使われているBIツールの画面をみていきましょう。

上図では、販売分析で利用した販売金額のデータをエリアマップに反映してチェックしています。BIツールであれば、販売金額が大きいほど地図上の点を大きく表示するなどのデータ加工が可能です。

この地図から、販売量が少ないエリアでは新たな卸先を開拓したり、販売数量を増やすための取り組みを行うなど、エリア特性に合わせた改善策を実行することが可能となります。

それぞれのエリアがもつ販売ポテンシャルを測るために、エリアごとの人口や世帯数などがわかる商圏データを併せて確認することもよく行われています。

まとめ/業界によって重視するデータ、集めるべきデータも異なる

今回は「流通・小売業界」「通信・ソフトウェア業界」「総合商社業界」という3つの業界のデータ分析手法をご紹介しました。

上記からもわかるように、業界によって販売する商品だけでなく、ビジネスモデルが異なるため、データ分析するポイントも異なります。それは当然、集めるべきデータが異なることを意味します。たとえばセレクト・ブティックで顧客ごとの来店頻度のデータを集めていなければ、どういう顧客のLTVが高いのかを精度高く分析することはできません。

このように、BIツールを活用してデータ分析を行う前に、どういった分析方法を選択し、どんなデータを集めておく必要があるのかも検討しておきましょう。そのひと手間で、導入してからの活用がスムーズに行えます。


なお、このサイトでは記事の他にもBIツールの成功例や導入事例を無料で提供しています。マンガでわかりやすく解説した「マンガでわかるBI」もあります。そちらもぜひ参考にしてください。記事に共感いただけましたら、Facebookページへの「いいね」もよろしくお願いします。皆様のデータ活用が進みますよう、これからも役立つ記事を作っていきます。

WRITER : ナツミ
今年から新たに担当することになった超文系ライター。「誰でも簡単に」分析が出来る「Actionista !」と大型バイクをこよなく愛する。 ビジネス・インテリジェンスについては現在猛勉強中。最近は「ドリルダウン」にハマっていて、やたらと会議で使いたがる。

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