定量、定性の違いとは?
調査手法、意味やメリット・デメリット、使い分け


マーケティングや商品開発、サービス改善において欠かせないのが「調査」を通じたユーザー理解です。特に「定量調査」と「定性調査」は、目的に応じて使い分けるべき代表的な方法です。定量調査は「どのくらい」「どれだけ」といった数値で全体の傾向を把握するのに適しており、定性調査は「なぜ」「どう感じたか」といった深い心理や理由を明らかにするのに向いています。

本記事では、両者の違いから、それぞれのメリット・デメリット、適した手法や組み合わせ方まで詳しく解説します。また、近年注目されているセルフ型リサーチツールについても紹介し、現場で役立つ実践的な情報をご紹介します。調査設計に悩むマーケティング担当者や商品企画の方にとって、判断の参考となる内容です。

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定量と定性とは?

調査やマーケティングの現場では、「定量」と「定性」という2つの異なるアプローチを使い分けることが重要です。定量調査は「どれくらいの人がその意見を持っているのか」などを明確にする手法で、統計的な根拠に基づいた意思決定をサポートします。

一方、定性調査は「なぜそう思ったのか」「どんな感情や動機があるのか」といった深い部分を探ることが目的です。どちらが優れているというものではなく、それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることで調査の精度と実効性が高まります。

①定量とは

定量調査とは、データを「数値」として捉え、客観的な傾向や比較を行うための調査手法です。主にアンケートやオンライン調査などを使い、多くの回答を集めて集計・分析し、全体の傾向を明らかにします。

たとえば「商品に満足している人は全体の75%」や「20代男性の利用率が30%」といった具体的なデータが得られるでしょう。こうした結果はグラフや表で視覚的に示せるため、説得力のあるレポートや施策の根拠として活用できます。また、数値化された情報は複数回の調査で比較できるため、時間の経過による変化や改善効果の追跡にも役立つでしょう。

②定性とは

定性調査は、数値データでは捉えきれない人々の感情や価値観、行動の理由といった、質的情報※1を深く理解することを目的とした調査手法です。インタビューや自由記述式のアンケート、行動観察などが代表例で、調査対象者の発言や反応をもとに、その背景にある考えや動機を深掘りします。たとえば、「この製品のデザインが好き」「使っていて安心感がある」といった声を通じて、ユーザーの思考パターンや期待値を把握できるでしょう。

対象者の数は少なくても、一人ひとりの声にじっくり向き合うことで、数値には現れない新しい視点やインサイト(深い気づき)を得ることも可能です。特に新商品やサービスのコンセプト検証、広告クリエイティブの評価など、感性に訴える分野で大きな力を発揮します。

※1質的情報:数値で表すことが難しい、または数値化しても意味を持たない情報のこと。アンケートなどの自由記入欄などがこれにあたる。

③定性と定量の違い

定量調査と定性調査は、どちらも調査の基本的なアプローチですが、得られる情報の種類や目的、活用方法に大きな違いがあります。定量調査は、対象者の回答を数値で捉え、傾向や相関関係、割合を明らかにするのに適しています。

一方、定性調査は「なぜそう思うのか」「どんな背景があるのか」といった内面的な要素や価値観を深く探るための手法です。たとえば、ある商品に対して「90%が満足」といった結果が出ても、その理由までは数値からはわかりません。その背景や感情を理解するために、定性調査が活用されます。

つまり、定量は「面」を広くカバーし、定性は「深さ」に注目するアプローチです。両者は独立した手法として扱われがちですが、実務では段階的に併用することで、より信頼性の高い分析や施策立案が可能となります。目的や状況に応じた使い分けが、マーケティングなどの成果に直結するポイントになるでしょう。

定量と定性の違い
項目 定量的(Quantitative) 定性的(Qualitative)
目的 数値による傾向・割合の把握 背景・動機・理由の理解
得られる情報 数字・スコア・比率などの構造的情報 意見・感情・行動の背景などの非構造的情報
主な手法 アンケート(ネット調査・会場調査)、ユーステスト、電話・郵送調査 デプスインタビュー、グループインタビュー、行動観察
調査対象人数 多人数(100人〜数千人) 少人数(5〜20人程度)
分析方法 統計分析(平均、クロス集計、回帰分析など) テキスト分析、内容分析、グラウンデッド・セオリーなど
代表的な活用例 満足度調査、市場規模推定、ブランド認知度調査 新商品開発前のインサイト探索、ペルソナ設計
メリット 客観的・再現性の高いデータで説明可能/大規模な傾向が見える 深い理解と新しい発見が得られる/言語化しづらい情報を補足できる
デメリット 表面的な傾向把握にとどまり、理由や背景が不明な場合がある 分析に主観が入る/結果の一般化が難しい

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定性と定量のメリット・デメリットとは

調査を正しく活用するには、それぞれの手法の特性を理解することが欠かせません。定量調査と定性調査には、それぞれ明確なメリットとデメリットがあります。

①定量的に表すメリットとデメリット

定量調査は、多数のサンプルから得られる数値データをもとに分析を行うため、客観性や再現性に優れています。たとえば「商品の満足度が80%」というデータは、マーケティング施策や経営判断にとって明確な指標となります。また、時間軸での比較や他社とのベンチマークにも適しており、社内外へのレポート作成にも有効です。

一方で、定量調査には限界もあります。たとえば、「なぜそのように回答したのか」といった背景情報は得られません。選択肢にない回答は収集できず、設問設計の精度が結果を大きく左右します。また、数値に現れない潜在的な不満や違和感を見逃す可能性もあるでしょう。

②定性的に表すメリットとデメリット

定性調査の大きな魅力は、調査対象者の感情や思考のプロセスを深く理解できる点にあります。自由記述の回答やインタビューの内容から、ユーザーの潜在的なニーズや価値観、新たな視点を発見することが可能です。特に、想定外の発言や気づきが得られる点は、マーケティングや商品開発において大きなインサイトにつながります。市場にはない新しい発想を導き出したい場合には、定性調査が力を発揮するでしょう。

一方で、定性調査にはデメリットもあります。まず、調査人数が限られるため、結果を一般化しにくいという特徴があります。また、分析には経験やスキルが求められ、調査者の主観が入りやすくなる傾向も見逃せません。標準化が難しく、結果の再現性が低くなる可能性もあります。そのため、成果を正しく導くには、分析者の力量と適切な設計が必要不可欠です。定性調査は「深さ」の追求に強い手法ですが、限界を理解した上で活用することが大切です。

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定量調査・定性調査の手法と使い分け

調査で成果を上げるには、目的に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。たとえば、短期間で多くの回答を集めたい場合はWebアンケートが有効で、個人の深い心理を理解したいときはインタビューや行動観察が適しています。

①定量調査の手法

定量調査の手法について具体的に見ていきましょう。

ネットリサーチ

インターネット上のパネルモニターを活用して行う調査で、短期間で大量の回答データが得られます。セルフ型ツールとの相性が良く、設問設計から集計まで一貫して実施できるのが特徴です。スピードとコストパフォーマンスに優れ、現在では最も一般的な定量手法のひとつです。

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会場調査

参加者を一か所に集め、試食や製品体験、映像視聴などを通じて意見を得る調査手法です。リアルな反応をその場で取得できるのが強みで、新商品開発時の最終チェックやコンセプトの印象評価によく使われます。ただし、実施には時間とコストがかかる点に注意が必要です。

ユーステスト(ホームユーステスト)

商品やサービスを実際の生活環境で使ってもらい、その使用感や利便性、満足度などを調査します。UI/UXの検証や家電製品、食品、日用品などの実使用シーンでのリアルなフィードバックを得るのに向いています。定性的な要素を含むこともありますが、定量的評価と組み合わせると効果的です。

郵送・電話調査

デジタル機器に不慣れな高齢者層や特定地域を対象にしたい場合に適した手法です。郵送調査は回答の自由度が高く、電話調査は直接対話による回収率の向上が期待できます。ただし、回収には時間がかかることも多く、設問設計や対象者リストの整備も重要です。

②定性調査の手法

定性調査の代表的な手法3つを紹介します。

グループインタビュー

複数人を一度に集めて意見交換を行う手法で、座談会やフォーカスグループとも呼ばれます。参加者同士のやりとりから思わぬ意見やアイデアが生まれることもあり、ブレインストーミングに近い効果が期待できます。自然な会話からインサイトを抽出するのがポイントです。

デプスインタビュー

調査対象者と1対1で行う面談形式の調査です。パーソナルな空間で深く話を掘り下げることも可能で、感情や潜在ニーズの把握に向いています。時間をかけて丁寧に聞き出すため、事前のシナリオ設計と質問力が調査の質を左右するでしょう。高価格帯商品の購入理由などの分析に適しています。

行動観察・訪問調査

調査対象者の行動を実際の生活環境や店舗などで観察する手法です。たとえば、買い物の流れや製品使用時の手の動き、表情など、言葉では表現しにくい非言語情報を把握できます。観察結果を動画や画像で記録することで、社内での共有や仮説検証にも活用できます。

③定量・定性を使い分けるポイント

調査を成功させるには、目的やタイミングに応じた使い分けが欠かせません。たとえば、市場全体の傾向を把握したい場合や、社内への報告資料を作成する際には、数値で裏付けの取れる定量調査が適しています。一方、ユーザーの購買動機や違和感の要因など、感情や背景に焦点を当てたい場合には定性調査が有効です。

また、調査の段階によっても使い分けの考え方が異なります。初期段階では定性で仮説を立て、その後、定量で検証するという流れが効果的です。

インタビュー調査のコツ

インタビュー調査の基本的なテクニックや注意すべきポイントを具体的な例を交えながらご紹介します。

マーケティングで定量調査・定性調査の精度を上げるには

調査の成果を求めるには、調査の目的を明確にし、仮説を立て、対象者を正確に選び、質問内容を丁寧に設計することが大切です。

また、定量と定性の併用や調査の段階的な運用といった戦略的な組み合わせも、精度向上の重要なポイントです。

①調査目的と仮説を明確化する

調査を行う上でまず大切なのは、「なぜ調査を行うのか」という目的をはっきりさせることです。目的があいまいなまま進めてしまうと、得られたデータが判断材料として役立ちません。

たとえば「商品の改善点を見つけたい」「サービス満足度の要因を探りたい」といった具体的な意図を明文化することが出発点です。次に、目的に基づいた仮説を立てることが必要です。仮説とは「この層では◯◯という理由で満足度が高いのではないか」といった予想で、これが明確になることで調査項目や質問設計が具体的になります。

②適切な調査対象者の選定

調査の正確性は、誰に聞くかによって大きく変わります。対象者の選定が不適切だと、どれだけ質問設計や分析手法が整っていても、得られる結果は偏ったものになってしまいます。

調査対象は年齢・性別といった基本属性だけでなく、購買行動やライフスタイル、価値観なども考慮して設計することが理想的です。同じ年代でも商品の使い方や重視するポイントが異なることも多いため、より実態に近い結果を得るには多面的な視点で対象を設定する必要があります。

③質問設計の工夫・データの正確性

調査票の内容は、回答の質を左右する最も重要なポイントです。質問の表現や順序、文脈によって、回答者の受け取り方や回答の傾向が変わることは少なくありません。たとえば、誘導的な言い回しやあいまいな選択肢があると、誤解を招いたり、意図と異なる回答が集まったりします。

そのため、設問はできるだけ中立的かつ具体的に設計することが求められます。また、選択肢の数や構成、自由記述の質問の有無なども検討ポイントです。定量調査でも、回答者の「その他」欄の記述から新しい気づきが得られる場合もあります。

④定量調査と定性調査を組み合わせる

定量と定性は、単体で使うだけでなく、段階的に組み合わせることで精度を高められます。たとえば、まず定性調査で仮説を探索的に導き出し、その後、定量調査でその仮説を検証する流れが効果的です。このような「仮説生成→検証」という往復型アプローチを使うことで、表面的なデータだけでなく、深い理解と客観的な裏付けを両立できるでしょう。

調査の初期に定性を活用し、途中から定量に切り替えることで、予算や期間の効率化にもつながります。さらに、両者の結果を照合することで、矛盾や見落としにも気づくことができるため、より多角的で説得力のある分析が可能となります。

定量調査と定性調査の組み合わせ例
フェーズ 主な目的 活用する調査の
組み合わせ例
①ニーズ探索 潜在ニーズや課題の発見 定性
(インタビュー) 定量
(傾向確認)
②仮説構築 ターゲット層や価値軸の定義 定性
(観察・声) 定量
(属性データ)
③施策設計・
評価軸決定
何を測るかの指標設計 定性
(深掘り) 定量
(指標化)
④効果検証 市場への反応を検証 定量
(アンケート) 定性
(意見回収)

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セルフ型ツールによる定量調査・定性調査とは

近年、マーケティング現場では「セルフ型リサーチツール」の活用が広がっています。従来は外部の調査会社に委託するのが一般的でしたが、セルフ型ツールを使えば、企画から実査・回収・分析までを社内でスピーディーに進めることが可能です。

特に、予算や人員が限られた中小企業やベンチャー企業にとっては、コスト効率と即応性を両立できる強力な選択肢になるでしょう。また、ツールによっては、複雑なロジック設計や回答ログの分析支援、レポート自動生成など高度な機能も備わっています。そのため、専門知識がなくても本格的な調査が可能です。本章では、定量・定性の両方で使えるセルフ型リサーチツールと、それぞれの特徴を紹介します。

①セルフ型ネットリサーチツール

セルフ型ネットリサーチツールは、Web上でアンケートを作成・配信し、集計結果をリアルタイムで確認できるサービスです。セルフ型リサーチツールの「Fastask」であれば、直感的なUI設計により、調査設計やデータ集計が初めての担当者でも操作しやすいという特徴があります。

調査会社を通さず、事前に用意されたパネル(対象者)へ直接配信できる仕組みがあり、コストや時間を大幅に削減できます。また、分岐ロジックや条件設問にも対応しており、従来型の定量調査と同等レベルの調査設計が可能です。社内の意思決定スピードを重視する企業にとって、セルフ型の導入は調査業務全体の効率化につながります。

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②セルフ型ネットインタビューツール

定性調査でも、オンラインで完結できるセルフ型ツールが増えています。セルフ型ネットインタビューツールの「Sprint」は、セルフ型のネット専用インタビュー管理プラットフォームです。「Sprint」には、インタビュー対象者のリクルーティングからスケジュール調整、インタビューの実施・テキスト化まで一括で管理する機能が備わっています。

特に、地方や離島在住の対象者や多忙なビジネスパーソンなど、これまで調査が難しかった層にもアプローチしやすくなりました。対面で行うインタビューに比べ、準備や移動の手間がなく、迅速かつ柔軟に定性調査を実施できるのが大きなメリットです。

Sprintご紹介資料

チャットインタビューサービス「Sprint」のサービス概要、ご利用イメージ、料金プラン等をご紹介します。

まとめ―マーケティングに欠かせない定量調査・定性調査

定量調査と定性調査は、どちらもマーケティング活動や商品・サービス開発、経営戦略の意思決定に欠かせないアプローチです。定量は「数の力」で傾向や全体像を把握し、定性は「深い洞察」でユーザー心理や行動の背景を明らかにします。どちらか一方に偏るのではなく、目的や調査フェーズに応じて組み合わせることで、より精度の高い課題発見と仮説検証が可能になるでしょう。

さらに、近年はセルフ型リサーチツールやインタビューツールの普及により、調査業務の効率化とスピードアップが進んでいます。従来は調査会社に委託しなければ難しかった専門的な調査も、社内で企画・実施・分析まで完結できるようになりました。これにより、より柔軟で即応性の高いマーケティングが実現しています。

セルフ型ネットリサーチツールを検討している方は「Fastask」に、お気軽にご相談ください。また、便利な資料もご用意しています。ご興味のある方は以下のリンクからご活用ください。

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マーケティングリサーチを成功させるために必要な統計知識をはじめ、サンプルサイズの決め方や調査実施・集計分析の方法などをわかりやすく解説します。

Fastask(ファストアスク)とは?

ジャストシステムが提供するセルフ型ネットリサーチサービス。調査する企業が自分で質問を作成するスタイルで、ローコスト&スピーディーな調査が可能です。従来調査の半額~10分の1の費用で、即日~数日で調査が完了します。

Sprint(スプリント)とは?

ジャストシステムが2017年8月にリリースした、「わずか5分でターゲットとなる消費者に出会えるチャットインタビューサービス」で、インターネット上で定性調査のインタビューができます。従来のリアル・インタビューよりもはるかにスピーディーで低コスト、リアルタイム性があるのが大きな特徴です。話を聞いてみたい人を選んで手軽にインタビューできます。

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