ペルソナマーケティングとは?
定義から作り方・活用事例まで徹底解説

商品やサービスを提供する際には、「誰に向けて、何を伝えるのか」がマーケティングの中心的なポイントとなります。この判断をサポートする方法の一つに、「ペルソナマーケティング」があります。これは、ターゲットとなる人をより具体的にイメージした架空の人物像「ペルソナ」を作り、その人の立場で施策を考える手法です。
ペルソナをはっきりさせることで、広告やコンテンツ、商品開発の方向性がぶれにくくなります。また、社内で共通のイメージを持ちやすくなるため、プロジェクトの一貫性や進行のスピードも高まるでしょう。
この記事では、ペルソナマーケティングの意味や作り方、実際の活用事例までをわかりやすくまとめて紹介します。さらに、セルフ型リサーチツールを使った最新の実践例も取り上げ、現場ですぐに役立つノウハウをお伝えします。
ペルソナマーケティングとは何か?
ペルソナマーケティングとは、製品やサービスを届けたい「理想的な顧客像(ペルソナ)」を具体的に設計し、その人物に最適化されたマーケティング施策を構築する手法です。広範なターゲット属性に向けて施策を打つのではなく、よりリアルな一人の人物像を想定し、その人の視点に立ったコミュニケーションを図る方法です。
この手法では、年齢や性別、職業といった属性情報に加え、価値観や悩み、購買動機や情報接触チャネルなどの心理的・行動的要素までを設計対象とします。これらの詳細情報から、広告コピーやコンテンツ制作、チャネル選定に至るまで、一貫性と精度をより高めることができるでしょう。
このようにペルソナマーケティングは、「誰に・何を・どのように届けるか」を明確にするマーケティング戦略の基盤として、BtoB・BtoCを問わず広く活用されています。
①ペルソナマーケティングと
ターゲットとの違い
「ペルソナ」と「ターゲット」は混同されやすい用語ですが、マーケティングにおける役割や精度は明確に異なります。ターゲットは「30代女性・年収600万円・関東在住」といったように、主に属性ベースで顧客層を大まかに定義するものです。
一方、ペルソナはそのターゲット層の中から、典型的な1人の人物を詳細に描く手法です。名前や職業、ライフスタイル、悩み、情報収集の手段などを盛り込むことで、よりリアルで具体的な「顧客像」を設計します。
ペルソナは、広告やコンテンツ制作、プロダクト設計などの判断軸として機能し、施策にブレが生じにくくなります。ターゲットが「市場全体を捉えるレンズ」だとすれば、ペルソナは「具体的な意思決定のナビゲーター」といえるでしょう。
②ペルソナを設定するメリット
ペルソナを設定する最大のメリットは、マーケティング施策全体における「共通認識」と「判断基準」を組織内に浸透させられる点にあります。たとえば広告制作や商品企画の場面で、「この施策は誰に向けて届けるべきか」が明確になっていると、関係者間のイメージのズレが生じにくくなるでしょう。
また、具体的なペルソナを共有することで、コピーやクリエイティブが感覚頼りにならず、一貫性のあるアウトプットが実現しやすくなります。さらに、顧客の課題や購買動機を明文化しておくことで、プロダクト開発やカスタマージャーニー設計にも反映しやすくなるでしょう。このように、ペルソナは単なる資料ではなく、マーケティング施策のPDCAを回すための実践的な起点となります。
ペルソナ作成のステップと
設計項目の例
効果的なペルソナを作るためには、ただ想像で顧客像を描くだけでは不十分です。ペルソナ設計のプロセスに従って、データに基づいた情報整理が求められます。
①調査による仮説立案と情報収集
ペルソナを作るための最初のステップは、仮説の立案と情報収集です。仮説とは、「このような顧客が存在するのではないか」という仮の人物像を想定し、その考えが実際にあてはまるかどうかを検証することです。
まず、インタビューなどの定性調査を通じて、顧客がどのように考え、なぜそのような行動を取るのかを深掘りしていきます。次に、アンケートなどの定量調査を実施し、得られた情報により仮説が広く通用するかどうかを確認します。このように手順を重ねていくことで、現実的で再現性のあるペルソナ像が明らかになり、実際に役立つマーケティング戦略の基礎を作ることが可能になるでしょう。
前述の通り、ペルソナ設計を考える際には、定性調査(インタビューや行動観察)と定量調査(アンケート)を組み合わせることが重要です。データによって顧客像の裏付けを取りながら、行動や心理的な背景まで明らかにすることで、より現実的な顧客理解につながります。このように、仮説検証の精度が高まるほど、ペルソナマーケティング全体の成果も大きく向上します。
②ペルソナ設計に必要な主な項目
ペルソナを設計する際には、どのような項目を設定すべきかが重要な検討事項となります。とくにペルソナ作成用のテンプレートを用いる場合には、基本情報を体系的に整理しておくことが、マーケティング施策の精度向上につながる重要なポイントとなるでしょう。
ペルソナの項目は、これといった明確なルールはありません。ただし、一般的にはデモグラフィック属性(人口統計学的な特徴)やサイコグラフィック属性(心理的な特徴)をもとにして、自社製品やサービスに応じた項目を設定していきます。一般的に、ペルソナ設計に含めるべき主な項目は次のとおりです。また、具体的なペルソナテンプレート例もあわせて参考にしてください。
項目 | 詳細内容 |
---|---|
プロフィール | 氏名、性別、年齢、居住地域、未婚・既婚、家族構成、学歴など |
職種 | 役職、勤続年数、仕事内容、年収など |
仕事内容・収入 | 職種、役職、勤続年数、仕事内容、年収など |
性格・価値観 | 性格傾向、人生観、信条・モットー、関心事、チャレンジしたいこと、目標・なりたい姿など |
趣味嗜好・ ライフスタイル |
趣味、休日の過ごし方、習慣、よく行くエリア・ショップ、好きなブランド、消費傾向、1日のスケジュールなど |
情報収集の手段 | 主な情報収集の手段(Web、テレビ、新聞、雑誌、家族や友人の口コミなど)、使用しているPC・モバイル端末、よく使用するSNS、好きなWebサイト・アプリなど |
主な情報収集の手段 | 使用しているPC・モバイル端末、よく使用するSNS、好きなWebサイト・アプリなど |
調査対象の商品・ カテゴリーに関する項目 |
関心度、利用状況、困っていること、ニーズなど |

BtoCの場合は、ライフスタイルや感情面の情報が重視される傾向があります。その一方で、BtoBでは、職種や役職、導入予算、意思決定への関与度など、業務に関する具体的な情報が重要とされるでしょう。これらの項目を過不足なく定義することで、ペルソナに現実味が生まれ、広告やコンテンツの方向性も明確になりやすくなります。
③業界別テンプレートの活用
ペルソナ設計では、業界ごとに重視すべき項目が異なります。たとえば、化粧品や食品などのBtoC業界では、「ライフスタイル」や「肌質」「味の好み」といった感覚的な要素が重要なポイントです。一方、BtoB業界では、「意思決定権の有無」や「予算枠」「導入までのプロセス」などが重視されることが多くなります。
このような違いを反映させるためには、業種ごとのペルソナテンプレートを用意し、それぞれにあわせて項目を最適化することが必要です。以下に、代表的な業界ごとの主な項目例を紹介します。
業界別 | ペルソナ設計項目 |
---|---|
BtoC(化粧品) | 年齢/肌質/悩み(シミ・乾燥など)/SNS利用状況/購入チャネル |
BtoC(食品) | 性別/好みの味/生活スタイル(自炊派・外食派)/家族構成/頻度 |
BtoB(IT導入) | 職種/役職/導入予算/意思決定プロセス/影響を受ける業務課題 |
BtoB(人材) | 採用方針/業界動向への感度/求める人材像/媒体利用状況/採用時期 |
このようにテンプレートを柔軟に活用することで、ターゲットの解像度を高め、戦略的なコンテンツ設計が可能になります。
ペルソナマーケティングが「古い」ともいわれる理由
ペルソナマーケティングはメリットもありますが、古い手法ではないかと懸念される意見もあります。この章では、ペルソナ設計をめぐるこうした課題にどう向き合えばよいのかを解説します。
①提供している製品やサービスとのタッチポイントの多様化
近年、企業が提供する製品やサービスに対するタッチポイントは急速に多様化しています。広告や検索エンジン、SNS、比較サイト、口コミ、動画レビューなど、消費者が情報を得る経路はかつてないほど広がっています。その結果、ユーザーはそれぞれ異なるタイミングと文脈でブランドに接触しており、すべての接点で共通するような「典型的なペルソナ」を一つに定めることが困難になってきているのです。
こうした状況では、従来のように一人のペルソナ像に基づいてすべてのマーケティング施策を展開することには限界があります。より細分化されたセグメントに応じて、複数のペルソナを設計し、特定のタッチポイントごとにペルソナの関心や行動傾向を再定義することが求められるようになるでしょう。ユーザー接点の多様化は、ペルソナ設計において柔軟性と更新性が不可欠であることを示しています
②ペルソナは「作って終わり」ではない
— 継続的なアップデートの重要性
ペルソナを設計した後、そのまま手を加えずに放置してしまうこともあるかもしれません。前述の通り、顧客の価値観や行動は日々変化しており、数年前に作ったペルソナを使い続けることは、かえって施策の精度を下げる原因になります。
近年では、SNSや生成AIの普及、購買チャネルの多様化により、顧客の情報接触や意思決定のプロセスが急速に変わっています。こうした変化を捉え、ペルソナを継続的にアップデートする体制が必要です。
その実践方法として注目されているのが、セルフ型リサーチツールの活用です。セルフ型リサーチツール「Fastask」を使えば、数日で仮説検証を行い、必要な見直しを迅速に進めることができます。過去の調査票をモジュール化して蓄積することで、繰り返し活用もしやすくなります。
ペルソナマーケティングを「使える」状態に保つには、情報の鮮度と社内共有の仕組みが重要です。作って終わりではなく、意思決定の基準として生き続けるペルソナこそが、本来あるべき姿です。
ペルソナの活用ポイントと注意点

この章では、ペルソナのマーケティング施策への反映方法から社内浸透のコツやよくある誤用までを具体的に紹介し、ペルソナを「生きた情報」として活かすための視点をお伝えします。
①マーケティング施策への反映方法
効果的なペルソナマーケティングを実現するには、設計したペルソナを各施策の制作物などに反映することが不可欠です。たとえば、ターゲティング広告では、ペルソナが抱える悩みや価値観を反映したクリエイティブを作ることで、クリック率やCVR(コンバージョン率)の向上につなげます。
また、ランディングページの構成や導線設計、使う言葉の選び方もペルソナにあわせて調整することで、ユーザーとの心理的な距離を縮めることができます。単に年齢や性別にあわせるだけでなく、「何に共感し、何を避けたいと感じるか」といった深い心理に寄り添う表現が大切です。こうした反映を施策全体で一貫して行うことで、顧客体験の統一感が高まり、ブランドへの信頼も強まります。
②社内理解と運用ルールの整備
ペルソナを本当に機能させるには、マーケティング部門だけでなく、営業や商品開発、カスタマーサポート、経営層まで含めた全社的な理解と共有が必要になるでしょう。特定の部署だけがペルソナを使っていても、他部門との整合性が取れず、顧客接点でズレが生じる恐れがあるからです。
そのため、「ペルソナシート」や「ペルソナボード」などの共有フォーマットを導入し、社内の誰もが同じ顧客像を参照できるようにすることが効果的です。また、定期的にアップデートする運用ルールを設けることで、情報の鮮度を保ち、リアルタイムで施策判断に活かせます。組織内で共通言語としてペルソナを浸透させることが、施策の精度とスピードを両立させるカギとなります。
③ペルソナの理想化と
BtoBでよくある混同に要注意
ペルソナは強力なマーケティングツールですが、使い方を間違えると逆効果になることもあります。よくある失敗例として、「理想の顧客像」を美化しすぎて、実際の顧客とずれた人物像を作ってしまうケースなどです。このようなペルソナに基づく施策は、ターゲットに響かず、効果が出にくくなります。
また、BtoBでは企業に意思決定者や関与者が複数いるケースがあります。具体的には決裁権を持つ上位者、情報収集担当者、現場担当者などです。BtoBでは複数の関与者が購買に影響を与えるため混同しがちです。そのため、それぞれに対応した複数のペルソナを設計する視点が欠かせません。このように現実に即したデータをもとに設計・運用することが、信頼性の高いペルソナマーケティングの土台となります。
セルフ型リサーチツールによる
実践事例
ペルソナマーケティングを実際の施策に落とし込む際には、仮説をスピーディーに検証し、確かな顧客像を描くことが求められます。その手法として注目されているのがアンケート調査やインタビューを自社で行える「セルフ型リサーチツール」の活用です。従来の調査会社への依頼と比べて、圧倒的なスピードとコスト効率を実現できる点が大きな特徴です。
①【Fastask × ディップ株式会社】
新規事業の仮説検証を迅速化
-「仮説検証フェーズ」での新規ユーザー関心の把握
「バイトル」や「はたらこねっと」などの人材サービスを手がけるディップ株式会社では、非人材領域※の新規事業「まごラブ」(高齢者と家族をつなぐ写真SNS)などにおいて、セルフ型リサーチサービス「Fastask」を用いたユーザー調査を実施しました。目的は、新たなアイデアに対する関心の有無や、課題感を仮説として検証することです。
コンテンツリリース前のタイトルを逆検証するという形で利用した結果、平均95本のメディア記事化という成果を達成。さまざまなSNSでの拡散は合算すると200から2,000以上もシェアされ、認知拡大にも寄与しました。
コストとスピードを両立できるFastaskの利点が、仮説検証フェーズでの社内合意形成や意思決定の迅速化につながった好事例です。
※被人材領域:企業が活動する上で必要な人材以外の経営資源を管理・活用する領域(財務、マーケティング、生産、技術、法務、広報など)。
②【Sprint × 株式会社オプト】
カスタマージャーニーの精度が向上
-課題の解像度が上がり提案クオリティがアップ
インターネット広告・デジタルマーケティングを展開する株式会社オプトでは、セルフ型インタビューサービス「Sprint」を導入し、クライアントへのマーケティング戦略立案に活用しています。特に、ファッションブランド案件において、ユーザーが商品に抱える悩みの「背景にある要因」まで深掘りできた点が評価されています。
Sprintのマルチインタビュー機能により、1人ひとりの意見をテキストベースで集め、感情や行動の背景を定性的に分析。化粧品の使用シーンなど、業界特有の利用状況も可視化でき、提案精度の向上につながりました。
BtoB領域においても、意思決定プロセスの見える化に役立っており、顧客理解の解像度を高めたい企業にとって、Sprintは強力なツールとなっています。
③【Fastask ×株式会社マネーフォワード】
頻度と社内共有でマーケ力強化
—「社内で共通理解を形成し、ペルソナを施策の判断軸へと昇華する活用プロセス構築」
家計簿アプリやクラウド会計ソフトを提供する株式会社マネーフォワードでは、マーケティング施策の判断基準として「ペルソナ」を活用し、Fastaskを使った定点調査を日常的に実施しています。2〜3日で調査を完了できるスピード感に加え、社内にモジュール化された調査票が蓄積されており、誰でもすぐに調査を設計できる体制が構築されています。
この調査習慣によって、部門間の情報共有が促進され、顧客理解に対する視野が統一されるようになりました。さらに、非ユーザー層に向けた調査も採り入れており、潜在顧客の声をマーケターの「武器」として活用する姿勢が評価されています。セルフ型リサーチツール「Fastask」が、組織全体のマーケティング力を底上げするツールとして機能している事例です。
まとめ — 顧客理解の起点としてのペルソナを見直す
ペルソナマーケティングは、単なる顧客像の可視化にとどまらず、マーケティングのすべての施策を方向づける起点となる考え方です。誰に向けて、何を伝えるべきかを明確にし、ブレのない戦略立案を可能にします。
大切なのは、ペルソナを作って終わりにしないことです。顧客行動や市場環境は常に変化しているため、定期的な仮説検証や情報のアップデートが必要です。セルフ型リサーチツールを活用すれば、そのサイクルを効率的かつスピーディーに回すことができます。
今一度、自社のマーケティングにおいてペルソナが「飾り」になっていないかを見直し、「意思決定の基準」として機能しているかを確認することが、顧客中心の戦略を実現する第一歩となるでしょう。
セルフリサーチツールを検討している方は、セルフ型ネットリサーチツール「Fastask」やセルフ型インタビューサービス「Sprint」にお気軽にご相談ください。また参考資料もご用意していますのでぜひリンクからご覧ください。
マーケティングリサーチ実践ガイド
マーケティングリサーチを成功させるために必要な統計知識をはじめ、サンプルサイズの決め方や調査実施・集計分析の方法などをわかりやすく解説します。
Fastask(ファストアスク)とは?
ジャストシステムが提供するセルフ型ネットリサーチサービス。調査する企業が自分で質問を作成するスタイルで、ローコスト&スピーディーな調査が可能です。従来調査の半額~10分の1の費用で、即日~数日で調査が完了します。
Sprint(スプリント)とは?
ジャストシステムが2017年8月にリリースした、「わずか5分でターゲットとなる消費者に出会えるチャットインタビューサービス」で、インターネット上で定性調査のインタビューができます。従来のリアル・インタビューよりもはるかにスピーディーで低コスト、リアルタイム性があるのが大きな特徴です。話を聞いてみたい人を選んで手軽にインタビューできます。