スマイルゼミ 開発の裏側 「紙」からタブレットへ 新しい通信教育のスタイル

2012年12月。タブレット端末で学ぶ、小学生向け通信教育「スマイルゼミ」のサービスはスタートした。その翌年には中学生コースもスタート。

開発当時、通信教育と言えば「紙」が主流であったが、現在タブレットはスタンダードになりつつある。企画開始からサービスの提供まで、開発の舞台裏にはどのような苦労があったのか。

開発の裏側 それぞれの視点

商品企画から見た「スマイルゼミ」

ILS事業部 マーケティング部
1987年入社

寺尾 房代

IT企業だからできること。

現在、小学校・中学校の授業に組み込まれているパソコン教室。ジャストシステムではパソコンで学習するためのソフトを学校に納入しており、もともと現場の教師たちとは交流があった。

そこで“教育効果を上げる家庭学習教材があれば良いのに”というニーズを知ったことから「IT企業だからできることを探したんです。」と、商品企画担当の寺尾は語る。

子供の生活の流れに
組み入れる。

当時、自宅学習における通信教育と言えば紙が主流で、ひと月分の教材がまとめて届くスタイルだったため、受講者は各自で学習スケジュールを立てなくてはならなかった。

「タブレットに全教科を納めた家庭学習向けの教材としては、スマイルゼミが先駆けです。“タブレットだけで学習を完結させる”と決めたので、電源を入れてから終えて閉じるところまで、教材の表現方法を模索しました。

学校から帰宅して、宿題を終わらせてからスマイルゼミの電源を入れる。その時、子供がどの画面から見て、どう教科を選び、勉強して終わるとどうなるのかという導線を絵に起こして、それぞれに必要な機能を落とし込みました。タブレットで触れるのだから、子供が自分で自由にシミュレーションしながら理解できるように。コンテンツだけでなく、子供の生活の流れにどう組み入れるかが重要でした。」

電源を入れてから勉強を終えるところまで、
フローを絵に起こしながら模索した。

生活リズムを崩さない、
無理矢理入れると続かない。

自宅学習においては、保護者がどのように学習結果を知れるかもポイントとなる。

「我が子は現在大学生ですが、私はずっとフルタイムで働いてきたので、子供が学校から帰ってきて家で何をしているかわからないですし、いかに勉強させるかという苦労も経験しています。デジタルならオンラインで学習結果を保護者に知らせることができる。そういった経験もスマイルゼミには反映されています。」

ユーザーの声の中には、思いがけないものもあった。

「『授業に集中できない子がスマイルゼミなら集中できる』『これまで家で勉強する気になれなかった子も、スマイルゼミなら持続できている』といった声が寄せられました。紙の教材のように、視覚的にノルマの量が見えないので、勉強しているという意識が薄れるようでした。回答に対してすぐ、○×が付けられて結果が見えることも良かったみたいです。」

また、不登校の子がスマイルゼミを使ったら勉強ができるようになり、それが自信につながり登校できるようになった。そんな声も寄せられた。

「携わって本当に良かったって思う瞬間でした。でも、子供は飽きるのも早いので、同じものが何年も続くとは思えません。今後もユーザーの声を反映して、進化し続けなければと思っています。」

開発から見た「スマイルゼミ」

ILS事業部 開発部
2004年入社

大島 教雄

通信教育をタブレットで表現する。

現在、スマイルゼミの開発責任者を務める大島は、商品企画担当の寺尾が一人で企画をしていたところに、開発担当として加わった。しばらくは二人でプロジェクトを進めていた。

「タブレットでの通信教育という大きな枠だけ決まっていました。そこで“通信教育の課題って何だろう?”って、スタートはそんなところです。スマイルゼミはサービスを開始するタイミングが重要だったので、世に出す時期も早い段階で決定していました。他社に先を越されないように早く出さなければと。

また、子供たちが手に取ったら、すぐにどこでも学習を始められるようにしなければならない。そのため、設計段階から“クラウド上にデータを置いて、それを端末に持ってきて使うサービスにする”と決めていました。さらにベースとなる機能がまずあり、そこにコンテンツをどんどん追加していくスタイルということも決定していました。これはジャストシステムのほかの商品とは異なるサービス展開でした。」

徐々に開発メンバーが増えていき、タブレット上で動くアプリの方針をはじめ、基本の設計や考え方・作り方、教材を決め、タブレットの機種が決定してすぐ記者発表。猛スピードで進んでいった。

開発の裏にはリリースに至らなかった様々な企画案もあった。

子供を飽きさせない工夫。

これまでの通信教育における紙の教材は、印刷工程が入るため、年度の途中で改訂することはほとんどない。大島の言う、随時更新できるサービスとは?

「子供が実際に使い始めても、途中で辞めてしまったケースなど、学習結果や利用状況データを踏まえて、見直す作業を繰り返します。例えば低学年だったら、楽しい要素を盛り込まないと続かないなど。クラウド上で管理しているからこそ、利用状況を見てアップデートできるので、結果的に子供が飽きない工夫につながっています。」

途中で辞めさせない、という課題については「ネットワークがうまくつながらないとか、漢字の書き取りで×が続くとか、些細なことでも子供は辞めてしまいます。漢字の書き取りについては、書き順を間違うと正解になりませんが、字が上手じゃなくても認識します。少しのはみ出しは気にしないような、微妙な許容範囲を設けています。」

子供と一緒に
成長できるようなサービス。

タブレット端末上でアンケートを行い、ユーザーの声を聞きながら常に更新を行うため、サービスの向上に終わりはない。続ける上でのモチベーションとは?

「私には二人子供がいて、上の子が小学1年生の時にスマイルゼミのサービスが始まり、今は4年生。下の子は、今小学1年生です。二人ともユーザーですが、自分の子供も利用できるサービスに携われるという喜びは大きいです。中学生になると学習内容が変わるので、うまくつながるように工夫していかなければと思っています。

誰だって自分の子供には勉強ができて欲しいですよね。自宅での学習習慣が身につくから、スマイルゼミを続けているから、勉強ができた。成績アップにつながったって言われるような存在に育てていきたいです。」

UXデザイナーから見た「スマイルゼミ」

バリューデザイングループ
UXデザイナー
2001年入社

原田 洋佑

世の中にない、
新しい体験をデザインする

「企画を立ち上げた当時、大人向けの脳トレや英会話学習をゲーム機で行うものはありましたが、タブレットで子供の自宅学習が完結できるものはありませんでした。」

デザインを担当する原田は、まったく新しいサービスを生み出すことは試行錯誤の連続でしたが、とても楽しいことだったと言う。

「学習が紙からタブレットに置き換わると、今のユーザーの体験がどう変わるのか、そこでは何を価値と感じるのか、どうしたら飽きずに続けられるのか、とにかく様々なアイデアを出し合いました。」

原田の担当は、いわゆるUXデザイン。ユーザーにとって体験、価値をデザインすることが仕事である。サービスを形にする際、コンセプトや機能全体を考え、教材なども含めてトータルでディレクションをしている。スマイルゼミのユーザー体験においては「画面にただ機能を羅列させるのではなくて、子供が実際に触ってみて、直感的に迷わず学習を進めていけるかどうか、その流れを形にするのに一番苦労しました。」

「学習ミッション」や「漢字コレクション」など、
楽しみながら続く仕組みが満載

スマイルゼミを語る上で忘れてはならない特徴が“ごほうび“だ。勉強した分だけ「スター」が貯まり、貯まった分だけアプリやアバターのカスタムなど様々なもので楽しめる。実際の家庭では“勉強をしたら遊んで良い“というルールを設けているかも知れない。しかし、スマイルゼミではルールが明確だ。

「勉強した分だけアプリで遊べるようになるという流れは、デザイナーから提案し、検討を進めました。タブレットですべてできる利点を活かして、勉強したらスターが貯まり、アプリで遊ぶためには親に学習の報告をするボタンをタッチをする。すると秘密の扉が開いて、そこにはいろいろ楽しめるアプリがある。アプリで遊び終わった頃に、外で働いている母親からタブレットにコメントが返ってくる、みたいな体験の流れを具体化しました。」

言い過ぎないからコミュニケーションがうまくいく

子供の漠然とした「勉強した」を、保護者に対して「本当に勉強した」という形にしてタブレットが知らせる。子供には、ここまで勉強したから「ゲームをして良いよ」と一連の動作の中で知らせてくれる。保護者の許可ではなくて、スマイルゼミがゲームを許可してくれるのだ。一見、コミュニケーション不足になりそうな気もするが、そうではない。

「いちいち勉強したかを聞かれることは子供にとってストレスですが、それは保護者だって同じです。スマイルゼミに任せておけば必要以上に聞く必要がなくなる。言い過ぎないから、逆にコミュニケーションがうまくいくんです。」

今後は「一人ひとりに合った学習内容にスマイルゼミが変わっていくようにしていきたいです。時代が変われば、求められるものも変わっていく。タブレット学習という市場ができた以上、他社も似たような商品を出してきます。ジャストシステムが新しい価値を創り、常に一歩先を行く。それでもすぐに追いつかれてしまうから、仕事に終わりはありません。」

寺尾一人ではじめ、そこへ大島が加わり、少しずつ人員が増えていったスマイルゼミチームも、現在は事業部という大所帯だ。社員が力を合わせて世に出した商品の成長と共に、お客様もどんどん増えていった。

開発に携わったメンバーの親としての経験を踏まえ、子供の生活に組み入れることができたからこそ、新しいスタンダードが生まれたのだ。