日本語の使い方
 
──読み方のゆれ──
漢字の読み方が複数あるものを「ゆれている」といいます。こういう例をいくつか尋ねることにしました。
一般に「ゆれ」は言語変化と関連するものが多く、一方が普及しているときに他方が普及しはじめると「ゆれている」状態になります。回答を年齢別に集計し、年齢差をみることで、変化の方向性をみることができます。
以下でも、各項目ごとに年齢別集計を基本として見ていくことにします。ただし、地域差が見られるものについては、地域別集計も掲載することにします。
[1] 竹の一種に「孟宗竹」というのがあります。これは何と読みますか。
  1. モウソウチク
  2. モウソウダケ
  3. モウソウタケ
  4. その他

この読みは、モウソウチクが正しいのですが、モウソウダケも認める辞書があります。
年齢別に集計しても、はっきりした年齢差が見られません。10代と70代でモウソウチクが多く、中間年齢層ではモウソウダケが多い不思議な分布です。
日高貢一郎(1979)「ことばの地域差(1)」文研月報54年3月号 によれば、この時点では「モーソーダケ」が全国的にほとんどを占めています。 その後モウソウチクが巻き返したと考えることもできるでしょうが、その場合、今回のような年齢差になることは説明できません。
なお、この項目では地域差もみられ、北海道はモウソウダケが7割にも達し、非常に多くなっています。

「孟宗竹は何と読む」年齢別集計グラフ
「孟宗竹は何と読む」地域別集計グラフ



[2] 物事が調子よく進む「順風満帆」は何と読みますか。
  1. ジュンプウマンポ
  2. ジュンプウマンパン
  3. その他

ジュンプウマンパンが正しい読み。現在は、マンパンが主流です。マンポは、高年齢層の一部に見られるだけで、廃れつつあります。正しい形が復活したようにみられます。

「順風満帆は何と読む」集計グラフ



[3] はでで美しく精密な色どり、濃厚な色彩の「極彩色」は何と読みますか。
  1. ゴクサイショク
  2. ゴクサイシキ
  3. ゴクザイシキ
  4. キョクサイショク
  5. キョクサイシキ
  6. その他

ゴクサイシキが正しいのですが、それが半分以上を占めるのは10代と70代です。孟宗竹と同じく、不思議な分布となっています。

「極彩色は何と読む」集計グラフ



[4] 高緯度地方で一晩中暗くならない「白夜」は何と読みますか。
  1. ハクヤ
  2. ビャクヤ
  3. その他

この項目では、ほぼ完全にビャクヤになってしまいました。ハクヤは昔は使われていた語形ですが、今使っている人はほとんどない状態です。

「白夜は何と読む」集計グラフ



[5] こんにゃくを糸のように細長くこしらえた「糸蒟蒻」は何と読みますか。
  1. イトコンニャク
  2. イトゴンニャク
  3. その他

イトゴンニャクが70代では3割もあったのに、年代が下がるにつれて減少し、10代ではなくなってしまいました。ゆれが解消されたともいえるでしょう。

「糸蒟蒻は何と読む」年代別集計グラフ

なお、地域差もあり、イトゴンニャクは中国・四国・九州に多いことがわかります。

「糸蒟蒻は何と読む」地域別集計グラフ



[6] 大規模な地震の「大地震」は何と読みますか。
  1. オオジシン
  2. ダイジシン
  3. その他

若年層はダイジシンが多く、60代以上ではオオジシンとダイジシンが伯仲しています。これもほかのものと同じように、二つの読みがゆれている状態からダイジシンにしだいに集中していくのでしょうか。

「大地震は何と読む」集計グラフ



[7] 7月を何と読みますか。
  1. ナナガツ
  2. シチガツ
  3. ヒチガツ
  4. その他

高年層には、ナナガツやヒチガツがみられますが、若年層ではシチガツ一辺倒になってしいます。これもゆれが解消する変化です。

「7月は何と読む」年代別集計グラフ

地域差も見られ、ナナガツは東北地方に多く、ヒチガツが中部以西に多くみられます。

「7月は何と読む」地域別集計グラフ



<<前へ 1 2 3 4 次へ>>
▲このページのトップへ

update:2005.10.17