中学・高校の実践事例
生徒・学校・家庭が一体となった 創造性のある情報教育を目指して
〜“家族”をテーマに、ポスター作りに取り組んだ「インターネット研修」〜
愛知県・名古屋市立若宮商業高校
情報教育に力を入れている名古屋市立若宮商業高校は、インターネットや海外研修などを通じて、アジアやヨーロッパなど海外の学校との交流も深めている。その中心となっているのが、影戸誠先生。サラリーマンから教育者へ転身したという、ユニークな経歴を持つ名物先生だ。今回は、影戸先生が実際の授業の中で、情報教育をどう生かしているかを追ってみた。
情報教育の達人先生が目指す“歓声のあがる授業”
「教室の中に、充実感や達成感、生徒たちの『やった!』という歓声が少なくなっています。さまざまな教育論がありますが、子どもたちが思わず声をあげてしまうような幸福なシーンを演出できる指導をしたいですね」と語る影戸誠先生は、1991年からインターネットの教育利用の研究を続けている、情報教育の先駆者的存在だ。
大学卒業後、金融機関に勤めたが、いつの頃からか 「学校の先生になって、『いろんなことをやっていいんだよ』と子どもたちを励ましながら、笑顔や汗や歓声に囲まれて一日を過ごしたい」と考えるようになったという。その思いが募り、ついに退職を決意。道路舗装のアルバイトをしながら、通信制大学で小学校・高校の教員免許を取得した。11年にわたる小学校での教員生活を経て、現在は名古屋市立若宮商業高校で 「インターネット研修」を担当している。
特に国際交流分野においては、海外で開かれる国際学会で日本におけるインターネットの教育利用の現況を発表するなど、世界の教育者と連携した研究にも精力的に取り組んでいる。1999年からは、 「ワールドユースミーティング」という高校生のための、インターネットを利用した国際交流プロジェクトにも参加。さらに、文部省初等中等局の教育情報室でインターネットコンテンツ委員も務めるなど、エネルギッシュに活動中だ。
今回は、そんな情報教育のプロである影戸先生が実際に手がけている 「インターネット研修」の授業を追ってみた。
●“家族”をテーマにした 「インターネット研修」授業プラン●
「インターネット研修」の授業は、2001年5月から2002年1月まで、次のようなプランで行われた。
5月 生徒と保護者に企画説明
6月 イタリアとのテレビ会議
7月 「ワールドユースミーティング」に参加
8月 ポスター作りのデータ収集
9〜12月 ポスター制作・プレゼンテーション
1月 保護者へのアンケート
“家族”は、世界共通のテーマでもある。 「インターネット研修」が始まってすぐのちょうどいいタイミングで、イタリアの教育省からテレビ会議の要請があり、インターネットを通じて、海外の子どもたちから家族について話を聞くことができた。
会議はもちろん英語だったが、生徒たちは質問をあらかじめ用意しておき、相手からの回答は、後日録画しておいたビデオを観て理解する。
イタリアの高校生から、 「夕食時には家族が全員揃うのはもちろん、昼食もなるべく家族と一緒に食べる」と聞いた生徒たちは、自分たちとの違いにかなり驚いたという。
また、インターネットを利用した国際交流プロジェクト 「ワールドユースミーティング」への参加は恒例のイベント。国内・海外の学校から、教師や生徒など約300人が参加した。このイベントの中でも“家族”についての意見交換が行われた。
生徒たちは、これらの交流の中で、家族中心ではなく、友達中心である日本での自分たちの生活が特殊であることを知り、ポスター作りに対してもさらに意欲的になったという。
身近なテーマを素材にして創作意欲をかき立てる
3年生が取り組んだのは、“家族”をテーマにしたポスター作り。授業に入る前に、影戸先生は生徒に見本を見せる。自分の息子が小さかった頃の写真を使ったポスターだ。
「最初に、こんなものが作れるんだよって、見せてあげることが大切です。具体的にイメージさせることによって、創作に対する意欲がぐっと増します。コンピュータとは、操作するものではなく、何かを作り出すためにあるものだということを示すんです」
素材は、小さい頃の自分や家族の写真。おばあちゃんに抱かれた幼い自分、盆踊りの夜に集まった近所の友達、二段ベッドで遊ぶ姉妹…。これらの写真をエプソンのネットワークスキャナ『ES-6000H』でスキャンすると、昔の写真が、パソコンの画面に、デジタルの映像として驚くほど鮮明に再現される。
次に、影戸先生は、“アナログとデジタルの違いは何か?”を説明。 「昔の写真はそのまま、つまりアナログのままでは、百年経ったらダメになる。しかし、デジタルのデータとして保存しておけば、何百年経っても大丈夫。例えば、自分がおばあちゃんになっても、自分の一番かわいかった頃の写真を、孫に見せてあげることができるんだよ」と、デジタルの持つ利点のひとつを、身近な例をあげて分かりやすく伝える。
今回のポスター作りのテーマを“家族”にしたことには2つの大きな理由がある。ひとつは、自分のことをテーマにすることで、生徒たちが意欲的に取り組むことができること。自分の写真だから、きれいに仕上げたいという気持ちが生まれるのだ。画像の貼り付けや、写真の拡大、画素数の計算といった作業は、難しく感じると飽きてしまう可能性もある。“単なるパソコンの操作”になりがちな授業が、生徒にとって魅力のある目標を設定することで、一生懸命にチャレンジし、集中して取り組める授業となるのだ。
「生徒たちは、勉強という感じがしないと言います。パソコン室に走ってやって来るし、授業のギリギリまで黙々と作業をしている。脳が活発に動いているわけです」
もうひとつのねらいは、家族との連携プレイを促すことだ。高校生ともなると、家族との会話が少なくなってくる。そこで一役買ったのが、このポスター作り。素材となる写真やエピソードを集める際に、家族とのコミュニケーションが生まれる。なかには、 「小さい頃の写真は、見たことがない」という生徒もいたが、 「段ボールにいっぱい入ってた!」と顔を紅潮させて、うれしそうに写真を手にする姿もあった。
さらに、作品としてできあがったポスターは、自宅に持ち帰って家族に披露することになる。ここでも家族の会話が生まれ、保護者からも 「家でパソコンといえばゲーム機として使っていただけでしたが、こんなに立派な作品ができてパソコンの素晴らしさを知ることができました」 「ホントに素敵な作品で…娘の成長を感じました」といった喜びの反響が多く寄せられた。

