小学校の実践事例

2つの校舎で過ごす1年を「つたわるねっと」がつなぐ  
〜「けいじ板」の活用で交流学習を日常的に〜
山梨県・甲府市立舞鶴小学校

相生校舎と穴切校舎小学校3校の閉校と新設校の創立により、新しい校歌が生み出される瞬間に立ち会うことができた子どもたち。迫る校歌発表会に向けて、懸命に歌詞を覚え練習する日々。しかし、子どもたちは新校舎完成までの間、2つの校舎に分かれて過ごさねばならない。お互いの思いを1つにし、校歌発表会を無事終えることができるのか。切り札は交流学習。今回はそれぞれの校舎にお邪魔して、その交流学習の様子を取材した。

学校間サーバーで
交流学習

相生校舎と穴切校舎の子どもたち

相生校舎の子どもたち(左)と穴切校舎の子どもたち(右)。普段、一緒に授業を受けることはないが、「つたわるねっと」での交流で、文字通りつながっている。

甲府市中心部の空洞化による児童数減少のため、甲府駅至近の相生小・春日小・穴切小の3校が平成16年度末に閉校となり、平成17年度より舞鶴小が新設となった。しかし、新校舎となる旧春日小の増改築工事の必要性から、統合は2段階に分けて行われることになった。

統合の手順は次の通りだ。まず、1年目は相生と春日を相生校舎にて統合、穴切校舎との2校舎体制とし、2年目に準備万端整った新校舎へ統合となる。すなわち、新校舎に児童・教師全員がそろうのは平成18年度からとなるのだ。

そうなると、特に平成17年度末で卒業してしまう6年生は、お互いほとんど顔も合わせぬまま、名前も知らぬまま中学生となり、それでいて同じ舞鶴小出身という、少々変則的な関係を築くことになってしまう。

そこで両校舎の先生方は、2つの校舎に分かれて学校生活を送る子どもたちが互いに積極的に交流を深められるよう、「つたわるねっと3@フレンド」を活用することに。今回取材する授業は、「つたわるねっと」の学校間サーバーを活用したものだという。
取材初日、相生校舎に伺った我々は、校舎間の交流が授業の中で日常的に行われている様子を目にすることとなった。

新しい校歌を
共に歌うために

宮沢和史さんがギターを手に歌った校歌を聞く子どもたち

宮沢さんがギターを手に歌った校歌を聞く。マルチメディアボードに映された校歌の歌詞を見ながら、子どもた ちは宮沢さんの歌に耳を傾け、その歌詞の内容を改めて胸に刻み込む。いつもピアノ伴奏で校歌を練習している子どもたちにとって、ギターでの演奏はまた違っ た魅力を感じるようだ。

授業は総合的な学習の時間。舞鶴小・相生校舎の6年生担任、伊東勝彦先生は、パソコン室に集った子どもたちにこう語りかけた。
「この人、知ってる?」

マルチメディアボードには、大きく「宮沢和史」の文字。子どもたちはうなずきながら口々に「知ってる!」「校歌を作ってくれた人」と発言する。実はこの舞鶴小、新設されたばかりで校歌もまだ用意されていなかったのだが、2005年5月に発足した校歌作成のための委員会が、甲府市出身の宮沢和史さんに作詞・作曲を依頼できないか打診したところ、快諾を得られたという。昨年8月末ごろにはニュースなどでも報じられた。

宮沢さんと言えば、「島唄」「風になりたい」などのヒット曲で知られる「THE BOOM(ザ・ブーム)」のボーカリスト。宮沢さんのご両親がそれぞれ旧穴切小、旧春日小の卒業生という縁もあって、今回の快諾につながったのだという。

取材に訪れたのは11月中旬。12月9日には穴切校舎体育館にて校歌発表会が行われる。子どもたちは目下、その発表会に向けて毎朝校歌を練習中、というタイミングだった。とは言え、別々の校舎での練習であり、舞鶴小の子どもたち全員がそろって練習できる時間は用意されていない。つまり、ぶっつけ本番になってしまうのだ。

だからこそ、交流学習が意味を持つ。

「けいじ板」で
つながる!

子どもたちに書き出しの助言をする伊東先生

どうしても文章が出てこない子どものために、書き出しの助言をする伊東先生。「私は舞鶴小の校歌を初めて聞いたとき……」「5年生以下の人たちは、来年度から相生校舎と穴切校舎が一緒になりますが……」など、子どもたちが自分の気持ちを言葉として表現しやすいように導く。

まずは鉛筆で書いてから入力!

まずは鉛筆で書いてから入力する。キーボードでの入力が苦手な子どもでも、思考を途切れさせることなく言葉を連ねることができる。

伊東先生はワークシートを配りながら、そのシートに書かれた課題を2つ、ボードに映し出した。1つは「舞鶴小の校歌を聞いて、どんな感想を持ったか」、もう1つは「来年度の舞鶴小の後輩にメッセージを残そう!」である。

「感想とメッセージをそれぞれシートに書いたら、それを『つたわるねっと』の『けいじ板』機能を使って掲示して、穴切校舎のみんなに見てもらうことにしましょう」
一度紙に書いてから、キーボードに向かい、入力する。さりげなく推敲(すいこう)の手順を踏むことで、子どもたちの文章はぐっと読みやすくなる。
「歌詞の中に『舞鶴』という言葉が入っていてうれしかったです。ちゃんと舞鶴小のことを考えてくれているんだなぁと思いました」
「宮沢さんは世界的に活躍している人なので、舞鶴小の校歌を作ってくれるなんてびっくりです」
「初めて聞いたときからすごく良い曲だなぁと思いました。この校歌を大事にしていきたいです」
子どもたちが次々に打ち込んでは掲示していく。

掲示にあたっては、「誰が読んでも分かるように工夫しましたか?」「著作権に気をつけましたか?」「誰かが嫌な気持ちになる内容はありませんか?」という「心の認証」を経ることはもちろん、先生が確認した上で掲示される仕組みとなっており、二重のチェック機能が働くよう配慮されている。

そうして掲示されたものを、翌日、穴切校舎の子どもたちが読み、それぞれに返信し、さらに自分たちの感想も掲示するという授業を行うこととなる。