小学校の実践事例

「教科」にこだわったネットワーク活用による共同学習 
〜パンフレット作り・発表を通じた「相手」を意識した表現の実践〜
千葉県・小見川町立中央小学校/船橋市立行田東小学校

エールの交換からはじまった共同学習発表会

行田東小の様子が映る

共同学習発表会のスタートを控えた中央小のコンピュータ室では、すでにテレビ会議の準備が整い、冨松清美先生をはじめ、行田東小のコンピュータ室の様子がスクリーンに映し出されていた。
これまでの取り組みで、すでに親しくなっている子どもたちは、カメラを前に「今日はがんばろうね!」などとエールを送り合っている。

こうした励まし合いが自然に行われていることを見るだけで、これまで積み上げられてきた共同学習の内容の濃さが分かるように思われた。

いよいよ発表会のスタートだ。司会役を務める両クラスの代表が挨拶を交わすと、それぞれのクラス全員の自己紹介がはじまった。手元にある学級紹介シートに時折目を落としながら、自己紹介に聞き入る子どもたち。

「得意なことは、ゲームです」 「あ、ボクと同じこと言ってるよ」

そんな歓声が上がり、和気あいあいとした雰囲気が広がっていく。すでに掲示板を通じて、グループ単位の自己紹介を終えていた両クラスだが、一人ひとりの自己紹介で、「一緒に学ぶ」気持ちが形になったかのようだ。

中央小学校の子どもたち 行田東小学校の子どもたち

全員の自己紹介が終わると、発表会の主題である、パンフレットの発表が始まった。

各グループが、それぞれのテーマに沿って作ったパンフレットは、すでにお互いの手元にプリントアウトされて渡っている。この発表会は、パンフレットの要点の説明と、クイズの出題が中心だ。

学校グループ、学級グループ、先生グループなど、お互いの学校やクラスについてのパンフレットを制作したグループの他に、中央小では城山(じょうやま)グループ、花火グループなど、行田東小では工場グループ、住宅グループなど、それぞれの地域特性を反映したテーマを掲げたグループも作られていた。

これらは子どもたち自身が出したテーマから選ばれたもの。お互いの地域のことを相手の学校の子どもたちに分かってもらいたいという気持ちが子どもたちの意欲を高め、表現の工夫につながっているのだ。

「私たちの小見川中央小は、今年で何歳でしょう?」
「130歳!」
「残念でした! 今年はまだ129歳です」
そんなやり取りに一喜一憂する子どもたち。一方、まだ自分の出番を迎えていない子どもは、ほおを紅潮させて台本のチェックに余念がない。スクリーンの向こうに、自分の発表を聞いてくれる相手がいるということが、子どもたちをこんなにも真剣にさせているのだ。

子どもたちの作品子どもたちの作品

1グループの発表が終わるごとに、相手側はそれに対する評価を返す。
「今の学校グループの発表は、声がハキハキとしていてよかったです。パンフレットも、写真がきれいに使われていて、分かりやすかったです。どうもありがとうございました」

どの評価も、先生の指導よろしく、具体的かつ多岐にわたり、しかも良いところを見つけ出そうという姿勢に満ちたものだった。そして、発表を聞かせてもらったことに対する「ありがとう」と、褒めてもらったことに対する「ありがとう」の交換。この発表の体験が、喜びと共に子どもたちの気持ちに刻み込まれていく瞬間だ。

共同学習が育てる力と心

先生からの講評

すべてのグループの発表が終わると、各校の代表3名ずつによる全体的な感想が述べられた。
「パンフレットを見ただけでは分からなかったことが、今日の発表で分かりました」
単なるパンフレットの読み上げに終わらない、今日の発表会の狙いは、しっかり子どもたちに届いたようだ。

続いて高橋先生、冨松先生によるまとめの講評が行われる。
「今日は、先生も知らなかった色々なことを知ることができました。これからも、この共同学習で学んだことを活かして、お互いに頑張って勉強していきましょう」

そして、元気な返事と拍手で、共同学習発表会は幕を閉じた。

改めてクラスの子どもたちを見渡した高橋先生が言う。

最後はカメラの前に殺到…!


「共同学習は、どうだったかな」
「楽しかった!!!」
「今まで知らなかった、色々なことを知ることもできたし、行田東小のみんなに教えてあげることもできたよね。今日みたいにカメラを使った交流は、いつもやることはできないけれど、みんなには交流掲示板があります。これからも、知りたいことや教えてあげたいこと、どんどん出し合って、交流を続けていきましょう」

2つの学級は、もう知らない遠くの子どもたちではない。

共同学習が生んだきずなと、子どもたちの「表現し、交流する力」は、これからももっと大きく伸びていくことだろう。

◆小見川町立中央小学校

平成16年に創立130周年を迎える伝統校。江戸時代の陣屋跡である敷地内には、往時をしのばせる遺構も残されている。高木貢校長。児童数564名。

取材/西尾琢郎 撮影/齊藤浩
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。