小学校の実践事例

プレゼンソフトを算数に活用 学習の楽しさを引き出して理解を深める 
『はっぴょう名人』で「垂直と平行」を探すレポートを作成〜
長崎県・長崎市立土井首小学校

土井首小学校

長崎市の南部に位置する土井首(どいのくび)小学校の情報教育は、総合的な学習の時間でコンピュータリテラシーを高めたうえで、一般教科でのコンピュータ利用を推進しているのが特長だ。
今回は5年生の算数の授業におじゃました。

事前に撮影した画像データから 身のまわりの垂直と平行を探そう!

コンピュータ室に入ってきた子どもたちは、すでに興奮ぎみ。
今日は少人数学級の算数の授業が、普段とは違い、パソコンを使って行われるとあって、これからの学習が楽しみでならないようだ。“土井首小の土の子パワー”と言われるほど元気な子どもたちだと聞いていたが、全員が笑顔満面、大きな声ではしゃいでいる。
「今日はどこに座ればいいのかな?」「あっ、机の上にわたしの写真がある!」

熱心な子どもたち

実はこの写真、今日の授業を担当する上村智先生が前もって用意していたもの。事前にデジカメで撮影しておいた子どもたちの画像データをプリントアウトし、自分の席が一目でわかるようにしておいた。先生から子どもたちへの、ちょっとしたプレゼントだ。

子どもたちはそれぞれの写真を見ながら、楽しそうにおしゃべりをしていた。
しかし5分前の予鈴がなると、ひとりの男の子が「おい、みんな。静かにしようよ!」と呼びかけ、全員が私語をやめる。子どもたちの明るさや元気さにも驚いたが、この“けじめの良さ”にはもっと驚かされた。

さて、いよいよ授業がスタート。上村先生は
「いつもは31人のクラスなので2人1台だけど、今日は15人だから1人1台使えるね。でも、まずは先生の説明を聞いてください」
と注目を促す。

「今日は算数の教科書にある『身のまわりの垂直や平行を探そう』という部分を勉強します。それでは、みんなのまわりで、どんなところに垂直や平行があるかな?」
上村先生が問いかけると、子どもたちの手がいっせいに挙がる。

今日は一人一台!

「黒板には垂直と平行があります」
「机もそうだと思う」
「キーボードは平行に並んでいます」
ある程度、子どもたちに意見を出させたところで、上村先生は今日の課題を発表した。

「はい、よく気がついたね。でも、まだまだたくさんあると思うよ。実は先生はあなたたちの教室に潜入して、垂直や平行を探してきました。その写真がサーバのなかに入っているので、今日はそれを使って、一人一人にレポートを作ってもらいます。じゃあ、作業に入る前に出席をとります。みんなコンピュータに向かってください」

上村先生はグループウェアを使って、児童機の画面に「出席確認」のダイアログを出す。
「自分の名前を漢字で打ち込んでください。誰が速いかな?」
子どもたちの打ち込みスピードは驚くほど速い。

全員の名前が登録された上で、上村先生はプレゼンテーションソフト『はっぴょう名人』の起動の仕方と、画像データが収納されているサーバへのアクセス方法を駆け足で説明した。
子どもたちからは「難しそう」と声が上がったが、「後で詳しく教えるから、とにかく進めてください」 と、授業をスピーディに展開させた。

操作法の説明は最小限に
自分で機能を見つけていく子どもたち

子どもたちがサーバにアクセスして作業をするのは今日が初めて。しかし、ほとんどの子どもたちが自分の力で画像データにたどり着いた。首をかしげている子もいるが、それに気づいた周囲の子どもがやさしく教えてあげている。

《5年1組》と名前が付けられたサーバ内のフォルダには、床、天井、窓、ドア、教壇、机など、平行や垂直が使われた多数の画像データが収められている。子どもたちは好きな写真をドラッグ&ドロップして、台紙に貼り付けていく。簡単な説明だけだったが、子どもたちはそれぞれが工夫しながら、機能を発見しているようだ。

すぐに子どもたちどうしで教えあう

画像のなかで垂直や平行を見つけた箇所には、矢印のアイコンを貼り付けて、「ここが垂直です(平行です)」と文字を入力する。子どもたちは先生にヒントをもらいながら、文字やアイコンの大きさと色を変更。なかには壁紙を変更して、背景に凝っている子もいる。

すると突然、「ポーン」という電子音とともに、児童機にダイアログが出現。
『たくさんの垂直・平行を見つけてね。上村より愛を込めて!』

先生がグループウェアの機能を使ってメッセージを送ったのだ。この楽しいジョークに、子どもたちは
「もう、先生やめてよ」
「愛を込めて、なんて恥ずかしいよ」
と笑いながら、[OK]ボタンを押す。子どもたちの注目が集まったところで、
「写真だと遠くのものが小さく写るから、垂直に見えない部分も出てきます。そこはちょっと注意してね。それから、1枚できた人は、どんどん新しいページづくりにチャレンジしてください」 と説明を加える。

さらに[枠飾り]から[吹き出し]が選べることや、[タイトル文字]で、文字が加工できる機能なども簡単に解説。色々な表現をしてみたい子どもたちの興味をさらに引き出す工夫も忘れない。

ひとしきり作業が進んだところで、上村先生は 「あと5分で発表の時間に突入します!」 と宣言。
子どもたちから「マジ〜?」と声が上がると、またもや先生機から『マジですよ』というダイアログが送られる。適度にユーモアを交えることで、子どもたちの注目を集めるのも、上村先生のテクニックだ。

発表は子どもたちの作品を、先生機から児童機に送る方法を採った。
子どもたちは自分のパソコンの画面で、ほかの子の作品を見ることができる。全員がスライドショーで映し出される作品に興味深く見入っていた。

作品をプリントアウト

発表が終わった段階で上村先生は

「最後にみなさんに質問です。今日はみんなたくさんの垂直と平行を見つけてくれたけど、なぜ世の中にはたくさんの垂直や平行が使われているのでしょうか。今日は残念ながら時間がなくなったけど、次回はその答も含めたレポートづくりに取り組んでもらいます」

と、ワープロソフト『一太郎スマイル』を起動して、レポートの作成方法を簡単に解説。

「このソフトでも画像が貼り付けられるから、楽しいレポートを作ろうね。そして、それまでの間、みんなはもう一度、身のまわりの垂直と平行を探して、理由を考えておいてくださいね」
と締めくくった。

最後にそれぞれの作品をプリンタで印刷。授業の成果を実際に手にとった子どもたちは、一様に満足げな表情を浮かべていた。