小学校の実践事例

パソコン利用で広がる世界 たくさんの人に思いを伝える 
〜伝えるためのツールを自ら選択する総合的な学習の時間〜
山形県・八幡町立一條小学校

一條小学校

地域を流れる荒瀬川をテーマに学習した、4年生の総合的な学習の時間「かがやきタイム」。地域の人に川の話を聞いたり、川や海に観察に出かけたり、積極的に活動をしてきた。
そのなかで芽生えた、「自然をみんなで守ろう!」という熱い思い…。紙しばい、新聞、ポスター、ホームページの4つの方法で子どもたちは思いを表現する。

地域を流れる荒瀬川の自然を ぼくたちの力で守りたい!

教室にはパソコンとプロジェクターが設置され、スクリーンにパソコンの画面が映し出されている。
「最初に、かがやきタイムの1年間をふり返りましょう」
担任の加藤先生が子どもたちに声をかけると、TTの阿部先生がパソコンを操作。
『はっぴょう名人』を使って、デジカメの写真をスライドショーで紹介する。

まずは1年間を振り返る

一條小学校の4年生19人は、総合的な学習の時間「かがやきタイム」で、地域を流れる荒瀬川について1年を通して、川の歴史を調べたり、どんな魚が棲んでいるのか観察したりといった活動をしてきた。

「荒瀬川の上流に行ったときは、みんなで楽しく遊びました。それから、これは海に行ったときの写真です」
と加藤先生。
「ゴミ拾いは大変だったね。空き缶、ペットボトル……大きな金属もありました。ゴミがとても多くて、このままじゃダメだって思ったんだよね」

活動の一環として、昨年11月の上旬に、荒瀬川が流れ込んでいる海へ足を運んだ。 そこで子どもたちが最も関心を持ったのは、海岸に落ちているゴミの多さだった。
「このままじゃいけない!」

ふるさとの川が流れ込む海に、多くのゴミが捨てられていることを知って大きなショックを受けた子どもたち。自分たちでできることはないか考え、たくさんの人に荒瀬川のことを知ってもらおうと計画した。

次に、子どもたちは伝える手段について話し合い、ビデオや回覧板、劇などさまざまなアイデアが出された。さらに、誰に伝えればいいのかを考え、地域に住んでいる人や八幡町に遊びに来る人、ほかの小学校の子どもたちに知ってもらうために有効な表現方法を選択。ホームページ班、新聞班、ポスター班、紙しばい班の4つの方法に決定した。子どもたちは立候補でグループに分かれ、活動することになった。

「自然を大切に」がテーマの看板

ホームページ班は、より多くの人に伝えるために、学校のWebサイトでホームページを公開。紙しばい班は保育園向け、お年寄り向けに分かれて制作。ポスター班の作品は、公民館や地域の商店にお願いして、貼り出してもらう。

また、手書きで思いをつづった新聞班は、自分たちの手で地域の人たちに作品を配る予定だ。

各班が作品を完成させるなか、新聞班と紙しばい班から、
「たくさんの人に新聞や紙しばいを見てもらいたい。そのために、ホームページを使って、自分たちの作品を宣伝したい」
という要望が出された。そこで、新たに新聞と紙しばいを紹介するためのホームページを作ることに決定。制作には、ホームページ班のメンバーが指導にあたった。

今回のかがやきタイムは、新聞班と紙しばい班が作ったホームページをみんなに披露する発表会。 作品を見て、お互いに意見を出し合い、もっといいものにしようという授業だ。

プロジェクターで作品のプレゼン 付箋を使って全員から意見を引き出す

新聞班のプレゼン

「それでは、発表会に入りましょう」
先生に代わって、紙しばい班の2人がスクリーンの前に立つ。

「たくさんの人に紙しばいを紹介するため、ホームページを作りました。みんなのアドバイスをお願いします」
女の子が声をかけると、スタンバイしている男の子がパソコンを操作して作品を紹介する。

紙しばいの前半をスキャナで取り込んで、
「遠足に行った男の子がお弁当を食べた後、川にゴミをすてました。魚たちは助かるのかな…?」
と書き添えている。発表が終わると、見ていた子どもたちが手を上げた。
「紙しばいを全部見せないで、『助かるのかな』と聞いているのが良かったと思います。一緒に考えてもらえそう」
「ほかの学校に、紙しばいを読みに行きます、って宣伝を入れたらいいと思います」

次の班は《アンパンマンのお仕事》というタイトルの紙しばいを紹介するホームページを作成した。 保育園向けに、かわいらしく、分かりやすい紙しばいに仕上げてある。紹介が終わると、
「読みに行けないような遠くの人にも見てもらえるように、紙しばいをホームページで全部読めるようにしたらいいと思う」
という意見が出され、子どもたちは一様にうなずいた。

付箋に意見を書いていく

次は、新聞班の発表。紙面がスクリーンに登場する。
「私たちは、荒瀬川のいいところやゴミのことを新聞にしました。この新聞が欲しい人は、一條小学校まで連絡してください。電話番号は……」
この発表に対しては、「電話番号を入れるのは、いいアイデアだと思います」などの声が上がった。

子どもたちから出された意見は、いずれも、「もっとたくさんの人に伝えたい」という思いから生まれたアイデアだ。

また、あらかじめ子どもたちには付箋が配られていて、発表に対する意見を付箋に記入するよう指示されている。手をあげて意見を言わなかった子どもたちも、積極的に授業に参加させるための取り組みだ。

ピンクの付箋には“いいところ”を、みどりの付箋には“アドバイス”を記入。発表した班ごとに付箋をまとめて、子どもたちはコンピュータルームへと移動した。