小学校の実践事例

空に向かって生長するケナフのように 学習する力を身につける子どもたち
〜調べるテーマを自分で考えて意欲的に取り組んだ総合的な学習の時間〜
宮城県仙台市立幸町南小学校

先生自作の見本を見せながら 色の組み合わせを具体的にイメージさせる

2時間目の授業が終わり、3時間目になると、今度は4年1組がコンピュータ室に入ってきた。 同じく、発表会用の作品づくりに取り組んでいる。授業のはじめに、佐藤先生は先ほどと同じように、これまでの活動を思い出すことからスタートした。

2時間目には、ホワイトボードに貼った掲示物を使ったが、今度はエプソンのプロジェクター『ELP-730』で投影し、画面を変えながらふり返る。ボードに画像が映し出されると、子どもたちはいっせいに注目した。

プロジェクターの画像に注目

佐藤先生が異なる方法をとったのは、
「子どもたちの反応の違いをみるために試しました。プロジェクターを使って画面を切り替えながら説明をすると、次が見えないので興味がわくようですね。紙を使う場合は、紙芝居のような形式をとるといいかもしれません」
という考えから。常に研究を重ねながら授業に取り組む姿勢がうかがえる。

続いて、担任の三品広明先生が子どもたちの前に立って呼びかけた。 「前回までに、下書きに沿って文字を入力しました。今日は、文字に色をつけて、飾り付けをしていきます」 文字をすべて入力したあとにデザインするのは、作業効率をあげるため。子どもたちは、デザインに懲り過ぎて、作業が滞ってしまうことがある。

ここで三品先生は、パソコンで作ったカードを取り出した。 黄色の背景に黒で文字を書きプリントアウトしたものだ。
「これは見やすいかな?」
「見やすい!」 子どもたちから声があがる。次に、青に紫の文字のカードを見せる。「見にくい!」
「じゃあ、これは?」
と、黒に赤い文字のカード。
「見えるけど…、なんだか恐い感じがする…」と、子どもたちの素直な感想。先生は、
「このように、色の組み合わせが大切です。見る人の立場になって、見やすい作品をつくってください」
「ハーイ!」
元気よく返事をすると、パソコンに向かって作業開始。発表会までもう少し。 子どもたちはグループで話し合いながら、真剣な表情で作品づくりに熱中していた。

道具として活用してほしいコンピュータ “本当なの?”を常に考えさせる

基本操作はばっちりマスター済

ケナフについて調べ学習を進めていくなかで、子どもたちは、主にホームページや書籍に掲載されている情報を参考にしている。

「インターネットや本に書いてあることがすべてだと、思ってしまうのは危険です。常に“本当なの?”と投げかけて、バーチャルな世界だけでなく、実際はどうなのかを考えさせるようにしています」 と、佐藤先生。

“本当なの?”と問われた子どもたちは、答えを求めて地域の専門家に話を聞きに出かけたり、メールで質問をしたりと、さらに能動的に課題に取り組む。
「コンピュータはあくまで道具。調べる道具だったり、自分を表現する道具だったり。決して頼ることなく、上手に使いこなすようになってほしい」
と先生たちは口を揃えた。

また、仙台市立幸町南小学校は、休み時間や放課後にコンピュータ室を開放している。 授業に関する調べものをしたり、情報委員会が低学年に教えたりと、子どもたちは積極的にパソコンに触れている。

道具として使いこなすようになるためには、好きな時にパソコンと接することができる環境が大切だ。しかし、さまざまなトラブルの可能性もある。

そこで、“もしパソコンがおかしくなったら隠さずに報告すること”“画面上に〈ダウンロードをしてもいいですか〉と出たら必ずキャンセルをすること”という決まりをつくった。 これをきちんと守らせることで、大きなトラブルは起きていないという。

できあがった作品と記念撮影

「コンピュータを教育に取り入れるためには、ある程度予算もかかります。現場の先生の努力だけでなく、教育委員会や校長先生の理解があり、うちの学校は恵まれていると思いますよ」
と、佐藤先生。

情報教育を推進していくためには、学校全体が一丸となっての取り組みが必要だと強調する。

授業が終わった休み時間、コンピュータ室でパソコンの前に座る子どもたちの、いきいきとした表情が印象的だ。

佐藤誠校長 ◆仙台市立幸町南小学校

佐藤誠校長の元、情報教育に力を入れている推進校。1年生から6年生まで一貫したカリキュラムを組み、積極的に指導にあたっている。朝の読書や野菜・花の栽培活動、ゲストティーチャーの導入も盛ん。昭和62年開校。児童数459名。
(写真:佐藤誠校長)

取材・文/マロニー 撮影/新井孝明
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。