小学校の実践事例

教えることで自らの成長につなげる 縦割りクラスを活かしたパソコンの時間
〜1年生の初めてのパソコン授業を6年生が上手にサポート〜
千葉県野田市立福田第二小学校

画面だけでは得られない充実感 作品を手に取る喜びはまた格別

ぼくのが出てきた!

「できたね。印刷してみよう!」「印刷ってなに?」「あそこから紙を出すんだよ」と、6年生はプリンタを指差す。

まずは、コンピュータ室内に設置されているエプソンのインクジェットプリンタ『PM-2200C』でプリントする。「きれいにできたね」「うん!」レインボーカラーのペイントもきれいに印刷されて満足そう。

ここで矢部先生が、「今日は特別に、職員室にあるプリンタでも印刷してみます。レーザープリンタといってね、とってもきれいに印刷ができるんだよ」2階にあるコンピュータ室のパソコンと、1階の職員室にあるエプソンのカラーレーザープリンタ『LP-8300C』はネットワークでつながっている。通常の授業ではパソコン室のプリンタを使っているが、1年生が初めてパソコンでかいた絵を、よりきれいな作品に仕上げるためにとの矢部先生の配慮だ。

職員室のプリンタの周りに子どもたちが集まって来た。次々に印刷される作品を見て、「ワーッ!」と声が上がる。先ほど描いていた迷路もプリントされたようだ。6年生がさっそく挑戦。「これ難しいなあ…。アレ? これ出口がないよ!」「エヘヘ」微笑ましい光景があちこちで見られる。1年生はもちろん、6年生も充実感たっぷりのようす。

「今日は6年生に教えてもらったけど、これからは自分でできるかな?」と矢部先生。「ハーイ!」1年生は、全員元気に手をあげた。

小規模な学校だからこそメリットも大 インターネットの活用を目指す

1年生も6年生も満足げ

今回のパソコンの時間は1年生にとってまだ2時間目。しかも45分間の授業内に、1年生のほば全員がお絵かきしたものを印刷するまでいたった。

授業を担当した矢部先生は、パソコンを使った縦割り授業について、「大人が教えるよりも、子ども同士のほうがうまく伝わるみたいです(笑)。今回の授業は、1年生ひとりひとりに細かい指導ができると同時に、6年生のスキルをアップするのもねらいです。教える側の6年生にとっても勉強になっていて、パソコンが苦手な子どもが1年生に教えてあげることで習得していくんです」と語る。

また、とくに低学年の場合は、操作がうまくできないと集中力を欠いてしまうこともある。分からないことがあればすぐにたずねられる今回の授業形態は、集中力の持続にもつなかったようだ。

児童数の少ない福田第二小学校では、クラス替えはもちろん、班替えができない学年もある。限られた人間関係のなかで学習をしていると、いったん劣等感を持ってしまうと抜け出すのは、なかなか難しい。縦割り授業は、自信を持ってのびのびと学習を進めていくための有効な手段でもあるのだ。「通常のクラスのなかではおとなしい子どもが、縦割りクラスではリーダー性を発揮することもあります」と、矢部先生。

今後の取り組みとしては、「子どもたちはホームページを見ていろんな学校があることを知り、“あの学校は1000人もいるんだって”と興味を持ち始めています。他校の児童とメールをやり取りしたり、テレビ電話を使った交流など、積極的にパソコンを活用したいと考えています」パソコンを通じて子どもたちにいい刺激を与えられるのでは、と矢部先生は期待している。

小規模校としての取り組み

学年に関係なく仲良し

福田第二小学校では、児童数が少ないため、授業をクラス単位(一般の授業)、縦割り(総合的な学習の時間)、低中高別(体育、音楽、図工)の3パターンで行っている。

また、給食は全員で食べ、掃除当番も全校で分担する。学校全体がひとつの大きな家族のような、あたたかい雰囲気が特徴だ。

このほか、朝の時間を利用して、全校生徒合同で“チャレンジタイム”を設けている。これは、1年生から6年生までが同じ漢字と計算の問題に挑戦し、できた人からどんどん先に進むという時間。少人数クラスでは、なかなか喚起しにくい競争意識を持たせようというのがねらいだ。


◆千葉県野田市立福田第二小学校

開校は明治7年、今年度から小規模特認校に指定されている。この制度は、小規模校に、周辺の自然環境を活かしたり校内設備を充実させるなどの特徴を持たせ、学区に関係なく入学・転学を認めるというもの。学校及び過疎地の活性化を図るのが目的である。福田第二小学校では、平成13年9月に1人1台パソコンが導入された(野田市内では2校のみ)。児童数79名。

取材・文/マロニー 撮影/片桐圭
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。