メディアとのつきあい方講座

「情報モラル」についての特別座談会

特別座談会「情報モラル教育の実践と課題」
〜情報モラル教育が実現すべき究極のテーマとは?〜

情報への接し方をきっかけに 「いかに生きるか」を伝える

●久保田

私が注意してほしいと思うのは、「モラル」と「ルール」をしっかり使い分ける必要があるという点です。教育現場ではモラルやルール、マナーが混同されているように思えます。ルール違反は大人になれば完全なペナルティがある。しかし、学校の中では実質的に暴行傷害や恐喝といった犯罪行為も、心の問題やいじめという言葉で、モラルに還元して処理されてしまうところがあります。

情報モラルでも同様で、完全な著作権侵害で、大人ならば最高懲役3年、または罰金300万円以下という重たい罰則がある行為でも、モラルやマナーの問題だと置き換えることが多いのではないでしょうか。こうした概念が未分化の状態では、明らかな違法行為についても、子どもたちは「道徳みたいなものだから、見つからなければ多少はいいか」と考えてしまう可能性がある。

モラルとルールをしっかりと分けて理解させた上で、今度はより根本的なテーマを伝えていかなければなりません。私たちが子どもの頃は「人の机や日記は勝手に覗いてはいけない」と教わりました。誰も見ていなかったとしても、自分が見ているという意識。これは著作権に限らず、すべての教育のベースです。最終的にはルールの有無に関わらず、人が嫌がることはしないという考えを教えていくことが大切ではないでしょうか。

●伊藤

家庭も学校も含めて、そうした基本となる教育が、おざなりになっていると思います。実際に人から物を借りるのと、ネットから情報を取り込むのはまったく同じ状況です。そのことをしっかりと子どもたちに理解させる必要がある。

人に頼むときは「よろしくお願いします」、何かをしてもらったら「ありがとう」と言う。そんな人間として当然のコミュニケーションを伝えることが、特に小学校の現場では、これまで以上に必要になっています。我々教師はその点を強く認識し、家庭と連携して教育を進めていかなければならないと考えています。

●宗我部

確かに中学生になると、ルールについて理解する一方で、「見つからなければいいのではないか」と考えている姿も見えてきます。これを防ぐためには、相手の顔を想像する力が必要ですし、また自ら名乗ることの意味を教えることも大切だと思います。

また、ハードウェアやソフトウェアに、人間の良心に働きかけるようなシステムを組み込む必要もある。例えばインターネット上の絵や文をドラッグ&ドロップで取り込めるジャストシステムの『なるほどねっと』は、素材を取ってきたときに、その事実が表示される機能が搭載されています。自分の行動をモニターさせることは、無意識の著作権侵害を防止する意味で、有効な機能だと思います。メーカーには、こうした細やかな工夫を期待したいですね。

●野崎

発信した人の意図を感じることができる大人に育つためには、自分で意図をもって何かを作り上げる経験が大切だと思います。私は子どもたちに創作の大変さや苦労を実感させるために、文章やレイアウトについて吟味する時間を設けたり、専門家による授業などを実施しています。モラルを伝える前段階として、子どもたちに創作活動や表現活動の苦労を実体験させることで、他者の情報を安易に利用したり、覗き見することが恐ろしいことだという理解が深まるのではないでしょうか。

●村岡

情報モラル教育における大切なポイントは、他の授業と同様に「人間として、いかに生きるべきか」を教えていくことにあると、あらためて感じることができました。そして、情報モラル教育は、子どもたちに著作権や個人情報保護、公文書について考えさせることで、そうした深いテーマを伝えることができる有効なツールでもあるのですね。

 

本日はありがとうございました。