IT活用講座

達人に聞く プレゼンの極意

「穴」のあるプレゼンで、勝つ!
三菱商事株式会社 ICT事業本部
ICT第一ユニット シニア・マネージャー/ 吉岡廣太郎さん

勝つためのプレゼン

吉岡さんのプレゼンとは…?

吉岡さんは、商社の最前線で活躍するベテラン営業マン。そのプレゼンは、常に顧客との商談を勝ち取るための「戦うプレゼン」だ。

そんな吉岡さんのプレゼンの極意とはどのようなものなのだろうか。

相手を知ることから始めよう

吉岡さんの仕事は、顧客からあらかじめ示された条件について答えを出すというスタイルではなく、自ら顧客企業の課題や問題点を見つけ出し、それを解決するための手段を見出して、顧客に売り込んでいく「提案型プレゼン」が中心だ。

そのためにまず必要なのは、プレゼンの相手である顧客について、徹底的に調査し、理解すること。
「現在では、インターネット上にもたくさんの情報がありますが、これはいわば『公開された』情報で、私の仕事に役立つことは少ないですね」

そう話す吉岡さんの調査の狙いは「顧客自身も気づいていない問題点」を探すこと。
そのために重視するのは、社内の他の営業マンなど、その顧客と直接接触している人の情報だ。

勝つためのプレゼンとは、差をつけるプレゼンであり、そのためには、独自の情報源を持つことが重要なのだ。

「穴」のあるプレゼン作り

ふと柔和な表情を見せる吉岡さん

調査を終えたところで、いよいよプレゼン作りが始まるわけだが、このときに吉岡さんが意識しているのが「穴」のあるプレゼンを作ること。

プレゼンの「穴」とは、聞き手に質問されるようなポイントを、あえて作っておくことだ。

「本当に主張したいポイントを、相手に理解させるには、それを押しつけるのではなく、相手に「気づかせる」ことが重要」、と吉岡さん。そのために、聞き手が指摘せずにはいられなくなるようなポイントをわざと説明せずに「穴」を開けておくのだ。

いいプレゼンとは「刺さる」プレゼン

そうした「穴」に、聞き手からの質問が入れば、それはプレゼンが伝えたい「課題」が、聞き手の胸に「刺さった」ことになるのだ、と吉岡さん。ただ説明されただけの事柄より、自分が気づいて、指摘した上で解説を受けたポイントの方が印象に残るというわけだ。

もちろん、せっかく開けた「穴」が、相手に「刺さる」かどうかは、先の事前調査がしっかり行われているかどうかにかかっているし、ましてやその質問に即答できなければ逆効果になってしまうことはいうまでもないだろう。

シートは渡さない

「“相手に気づかせる”プレゼンを」

プレゼンの際に、そのプレゼンシートをプリントアウトして配布するかどうかは、企業の現場でもさまざまなケースがある。状況にもよるが、吉岡さんは配布しない派。その理由は2つある。

1つ目は、資料を配付することで、聞き手の集中力がそがれること。パラパラとシートに目を通しただけで分かった気になられてしまっては、せっかく開けた「穴」も無意味になってしまうからだ。

理由の2つ目は、吉岡さんのプレゼンが、聞き手の反応によって変化するものだから。常に聞き手の反応に気を配り、プレゼン内容をダイナミックに変えていくため、プレゼンは必ずしもシートの順番に進むとは限らないし、場合によっては、内容を省略したり、はたまたシート以外の内容に踏み込むこともある。そうなると、シートはむしろ理解の妨げになる、というのが吉岡さんの考えなのだ。

プレゼンは聞き手との「対話」

吉岡さんのプレゼンのポイントは、「聞き手の反応がすべて」ということ。説得型のプレゼンとは言え、目的は相手を言い負かすことではなく、提案を受け入れてもらうことだからだ。相手の反応や言い分を十分に受け止めながらプレゼンを進めていくことの大切さを、吉岡さんは教えてくれた。

吉岡流プレゼン秘伝
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。