──日本語の地域差──
(1)地域差を見ていくための操作
  今回のアンケートでは、各個人に対して、現在居住している都道府県と(市区町村と)出身の小中学校を尋ねました。

上記3つの情報を活かして、回答者を3グループに分け、
1=生え抜き:市区町村を越える引越の経験がなく、小中学校=現住県の人
2=準生え抜き:引越の経験がありますが、小中学校=現住県の人
3=移動者:1,2以外の人
としました。
それぞれの人数を数えると、生え抜き1708人(12.3%)、準生え抜き6648人(47.8%)、移動者5548人(39.9%)となりました。次に、地域差が大きい項目として、仮に「模造紙」を見てみましょう。
 
[9]あなたは、文房具屋さんで売っていて展示や発表に使う白い大きな紙のことを何といいますか。
以下のことばのうち、あなたが使うことばにいくつでも○を付けてください。

1.模造紙(もぞうし)
2.大洋紙(たいようし)
3.大判紙(おおばんし)
4.B紙(びーし)
5.鳥の子洋紙(とりのこようし)
6.広洋紙(ひろようし)
7.広幅洋紙(ひろはばようし)
8.雁皮(がんぴ)
9.その他
10.わからない
  その中で、地域差がはっきりしているものとして「大洋紙」を取り上げます。新潟県に分布する言い方です。
「小中学校」と「模造紙」のクロス表を作り、都道府県別に使用率を見てみると、新潟県50.31%(162/322)となる。
同様に、「現住県」と「模造紙」とのクロス集計では、新潟県は53.78%(135/251)の使用率になります。
新潟県の生え抜きでは、使用率が63.04%(29/46)と上昇する。準生え抜きで62.50%(90/144)と変わりません。移動者は、小中学校が新潟(現住県が新潟以外)の場合は32.58%(43/132)、現住県が新潟(小中学校が新潟以外)の場合が26.23%(16/61)になり、地域性が薄まることが見て取れます。
以上の結果から、「生え抜き+準生え抜き」で見ていけば(現住県と小中学校が同じなのでどちらとクロス表を作成しても結果は同じだが)地域差がはっきり見られることになります。
もう一つ、「B紙」を見てみましょう。「小中学校」とのクロスでは、岐阜が61.80%(220/356)、愛知が54.06%(552/1021)の使用率で、2県だけが抜群に高い。三重県14.12%(36/255)も気になる数値である。「現住県」とのクロスでは、岐阜61.89%(177/286)、愛知52.24%(512/980)、三重14.71%(35/238)になる。
生え抜きを抜き出すと、岐阜69.09%(38/55)、愛知70.14%(101/144)、三重15.15%(5/33)になります。準生え抜きでは、岐阜67.07%(112/167)、愛知59.53%(331/556)、三重13.64%(18/132)になります。
(2)模造紙の地域差
 

都道府県単位で見ていくと全国的に多いのは「模造紙」であり、ほぼこれが共通語形と考えてよさそうであるが、各県に特徴的な言い方があります。

大洋紙=分布は新潟県にほぼ限定されるが、新潟県の人はほとんどこの言い方を使う。
大判紙=山形県と山口県に多い。他にも全国にわずかずつ見られる。
B紙=岐阜県と愛知県では圧倒的に多く、他に三重県にもある程度見られる。
鳥の子用紙=香川県・愛媛県・沖縄県に多い。
広洋紙=熊本県と佐賀県に多い。
広幅洋紙=鹿児島県にある程度の分布がある。
雁皮=富山県に多い。

というように、県単位で使う語形がかなり偏っているのが現状です。
なお、新潟県の人を年齢別に分けて、年齢ごとに「大洋紙」の使用量が増減するかどうか見てみましたが、そのようなことはなく、各年齢層に渡って安定した分布が見えました。岐阜県と愛知県の「B紙」についても同様です。
(3)補助輪付き自転車
  補助輪付き自転車の地域差



「補助輪付き自転車」は、ホントの意味で1語になっているかどうか、あやしい面もありますが、この種の自転車を呼ぶ適当な言い方がない人にとっては、とりあえず意味がわかる言い方であり、今回の調査でも一番多く回答されているという点では、共通語形とみなしてもいいと判断しました。東日本と九州は、ほぼこの言い方だけしか使われないようです。
近畿に多いのは「コマ付き自転車」で、半数以上を占める大勢力です。岡山県や徳島県などにも見られるが、これらは近畿からの影響と考えられます。
京都府と滋賀県には「タマ付き自転車」という言い方があります。この語形は京都と滋賀に分布が限定されていることから、比較的新しい言い方で、現在、分布範囲を広げているかのようです。(ただし、残念ながら、年齢別に集計しても、コマ付き自転車よりも若い層が使っているという結果にはなっていません)
広島県と山口県(それに鳥取県)には「コロ付き自転車」が分布しています。ずっと離れて静岡県にもある程度分布するのがわかりますが、不思議な現象です。
山梨県には「ゴロ付き自転車」があります。山梨県だけの独自の発達と考えられます。
香川県には「ゴマ付き自転車」という言い方がありますが、徳島県や和歌山県にも若干見られる言い方です。
鹿児島県には「ハマ付き自転車」がありますが、勢力は弱く、他県には進出していません。
(4)通学範囲
 

通学範囲の地域差

東日本では「学区」、西日本では「校区」で、東西に二分。ただし、西日本の中でも岡山県と広島県は「学区」が多く、県の独自性があるようです。また、北海道では「校区」がかなり使われています。(なお、北海道の中を年齢層別に区分しても、年齢差は見られません。)
「校下」という言い方もあります。富山県・石川県に多く、福井県や岐阜県にもかなりの勢力を持っています。「校下」は、ほぼこれらの4県に限定された言い方ということになります。
(5)月決駐車場
 

使用地域については、1098個の回答しかないことに加えて、人口の偏りがあり、地域差がきれいに見えてきませんでした。むしろ、生え抜きを選んで「月決駐車場という表記を見たことがあるか」を県別に集計したほうが望ましいようです。これが図4です。

月決駐車場の地域差

「月決め駐車場」や「月極駐車場」は全国に分布することが知られていますが、「月決駐車場」は分布が偏っているようです。高知県に集中しており、また一方では北東北にも見られます。群馬県や宮崎県など離れた場所で「見たことがある」が30%以上を占める県もあり、不思議な分布です。


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update:2004.12.2